結婚式ごっこ、息子は新婦
4歳の息子が保育園でスカートを作ってきた。大きな画用紙をたてに切って、ぐるっと丸めたもの。スカートって言うより腰ミノって感じだけど。
えらく気にいっているらしく、保育園から帰ってくるなり、さっそく穿いて見せてくれた。歩くとひらひらと揺れる。なかなか可愛い。
女の子たちが作っているのを見て、羨ましがった男の子たち。「ぼくも!」と言って、作ったそうだ。
*
その週の土曜日のこと。
「結婚式ごっこやろう!」息子が唐突に叫んだ。
「え?どういうこと?」
「ケンがスカート穿いて、女になるんや。」
「え?ケンが新婦やったら、新郎は誰なん?」
「お父さん!」
夫と息子で結婚式か・・・。まぁ、いいけど。でも結婚式って、何をするか知っているのだろうか。出席したこともないのに。
「花束も作らんなんね!」
そう言って、いそいそと白い紙を持ってきて、花を描き始めた。
「それから、ネックレスも。」
次は水色の”あやとり紐”を持ってきた。なぜか新郎の首にかけるらしい。
「さぁ、みんな集まって!お父さんもきて!」
そう言って、新婦みずから、掃除機をかけていた新郎を呼びにいった。
息子の結婚式イメージは「スカート、花束、ネックレス」 のようだ。間違ってはいない。
息子と夫が二人で並んで立っている。
「それで?」息子はどうしていいのかわからない様子。やっぱりね。
仕方がないので私が神父になり、「誓いのことば」を問いかけた。最後の「誓いのキス」はさすがにマズいので、「誓いのハグ」にしておいた。
「誓いのハグ」が終わった後も、「次はなにするん?」となった。やっぱりよくわかっていない。でも、私もわからない。どうすればいいのだろう?
「ダンスを踊ってよ。」おばあちゃんが言った。「お姫さまと王子さまはダンス踊るやろ。」
「えー、ダンスなんて踊れん!」
そそくさとスカートを脱ぎだした息子。そうして「結婚式ごっこ」は終わったのだった。
*
その晩のこと。布団に入ってから息子が
「ケンが大人になったら誰がおる?」と聞いてきた。
「ミイちゃん(妹)がおるよ。20年後はおじいちゃん、おばあちゃんはおらんかもね。50年後はお父さん、お母さんもおるかわからん。」
「ぐすん」と鼻をすする息子。「寂しい。もっと家族がたくさんおってほしい。」
「じゃあ、早く結婚して、早くこども作ればいいよ。」とアドバイスしてみた。すると、少し考えたあとにこう言った。
「もう、してしまったもん、結婚。」
お父さんとの”結婚式”を本気にしているようだ。そんなに効力があったとは。
「お父さんとの?離婚しちゃえば問題ないよ。」
と言ってから、”離婚”はちょっとまずかったか、と思い
「あんなの遊びやから大丈夫やよ!」と訂正した。とはいえ、これはこれでまずかったか。息子は真剣だったのだし。
「うーん。」
「18歳から結婚できるから。」
「18歳って小学生?」
「ううん。小学生は12歳で卒業、次は中学生になって15歳で卒業、その次は高校生になる。高校は18歳で卒業するから、それから結婚できるよ。」
「ふーん・・・そっか」
保育園児の息子にとって次のステージは小学校だから、そこまでしかイメージできないのだなぁ。今の息子にとって「大きくなる」って、「小学生になる」と同意語なのかも。
でも、その先にもっと長い人生が待っている。本当の結婚式だって待っているかもしれない。
お父さんとの結婚式、いつまで覚えていてくれるかな。
「今日の話、noteに書いておいてね」
夫に言われた。息子が本当に大きくなったときに、話せるように。
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