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用法・用量をお守りください

薬は適量の範囲でのみ薬であって、過剰摂取すると猛毒になる。論破だのなんだの、相手の瑕疵をあげつらうことが、社会を糺す薬のように取り扱われるけれど、本気を出せば人を殺す毒になる。面白がられている毒は、適量に調整された薬でしかない。

「なんでも言っていいよ」は、用法・用量を守ったうえで、「なんでも言っていい」だけで、本当になんでも言っていいわけじゃない。本当になんでも言ってみると、本気で嫌われるし本気で引かれる。

「痛いの平気」も「肌をつねられても我慢できる」という意味であって、「ナイフで刺されても大丈夫」ということではない。

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人にはそれぞれ信じていたいこと、信じることで救われているものがある。それが合理的であれ非合理であれ、救われているという事実自体に価値がある。それを否定することは残酷な暴力に近い。

でも、そうした信念を疑うという破壊衝動に駆られることがある。なぜそんなに盲目に信じられるの?素朴な疑問から自分の意見をぶつけてみたくなる。

ただ、自分にとってはたわいも無い遊びでも、自分自身を疑うやり方で人に接すると、思ってもみない程度に相手が傷つくことは少なくない。

「自分は正論を言える」と無垢に自称する人は、その正論が大した攻撃力を持たない薬の程度のものなのだと思う。言いたいこと言って感謝されて崇められて、幸せすね。本当の正論は、目を背けたくなるようなグロくてエグいものですよ、多分。

正しくないと思う事に正しくないと言いたくなるけど、それは暴力になりうる。自分にとっては薬でも、誰かにとっては猛毒になる。

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