カチカチ
共通テストが終わって、早くも1週間。
しばらくは燃え尽き症候群のごとく、やる気が出なかったムスメ。
集中力を無くし、「気持ちを切り替えるため」と言って友達と遊びに出かけたりしていたが、その後、通常モードに戻ったので効果はあったらしい。
なにはともあれ、何のトラブルもなく無事に共通テストが終了してホッとしている。
遅刻、悪天候、交通機関の乱れ、急な体調不良、勘違い、記入ミス…などなど。
受験生に襲いかかるトラブルは、数限りなく。
それらを、なんとか回避できたのだから。
インフルエンザ大流行で、他学年が次々に学級閉鎖になる中、ムスメは友達と「勉強会」という名目で外出し、1日中カフェなどで過ごす日もあった。
テスト直前なのに…と心配しつつも、久しぶりに一人でのんびり過ごせる自由が嬉しくて、つい喜んで送り出してしまった私も悪い母である。
結果オーライなので、良しとしよう。
でも、受験だからといって息をひそめて過ごすよりも、いつも通り、普段と変わらない日々を過ごしていた方が、最終的にはうまくいくような気がする。
本人も家族も、お互いに気が楽だ。
特別扱いは、時にプレッシャーにもなる。
だからというわけではないが、私は受験勉強している横で平気でマンガを読んだりしてしまう。
自分なら、嫌味の一つも言ってしまいそうだが。
そんな母を見ても、もはや気にならないとムスメは言っている。
悟りを開いた僧のごとく。
彼女は己の欲に打ち勝ち、誘惑から目を逸らし、勉学の道を邁進するのである。
でも、さすがに隣でイビキをかきながら居眠りする父には、イラッとするらしいけど(笑)
元々、ムスメは本番に強い得なタイプだ。
例えば、ピアノの発表会。
練習中はつっかえてばかりだったのに、なぜか本番ではスラスラと弾いてみせるようなミラクルを起こしたりする。
おかげで共通テストの時も、アドレナリン効果も加わって模試のときよりも高得点を叩き出した。
もちろん、元々ある実力以上を引き出せるわけではないので、いつも足を引っ張る苦手科目は、しっかり想定内の低得点(笑)
他2教科の助けを借りて、なんとか誤魔化せるかどうかは、運次第である。
本人いわく、本番当日になると、もう今さら騒いでもどうしようもない…と一種の開き直りが起きて、逆に落ち着くらしい。
普段は、かなり心配性で自己肯定感も低いので、ネガティブなことをよくボヤいているのだが。
いざ本番を迎えると、案外、良い意味で図々しくなる。
高校受験の時も、待ち時間に皆が問題集を開いて勉強している中、ムスメは文庫本を読んで時間をつぶしていたと後から聞いて、ちょっとビックリした。
自称「豆腐メンタル」などと言ってるが、そういう人は、受験日に小説を持っていこうとは考えない気がするのだが…。
自分で思っているより、だいぶ硬い豆腐だと思う。
そんな調子だから、共通テストの時もあまり緊張することなく、「試験官のお姉さん、綺麗だなぁ…」などと考え、可愛いネイルをガン見していたらしい。
ちなみに、今回は文庫本を2冊持っていった。
結局、読まなかったそうだけど。
運も良かった。
たまたま試験会場が、ムスメの第一志望の大学で何度も来ていたこと。
同じ教室内に友達がいて、休憩時間にもお喋りできたこと。
隣の席も同じ高校の知り合いで、安心感があったこと。
なにしろ1日がかりのテストなので、終始孤独と緊張の中で無言で過ごすのと、仲の良い友達と笑って気分がほぐせるのとでは、全然違うと思う。
当日、ムスメが家を出たのが朝の8時頃。
10時過ぎに着席して、テストが全て終わったのは夕方の6時半。
(たった3科目でこんなに時間がかかるのは、やたらと休憩や待ち時間か長いせいらしい。)
混雑を避けるため、7時過ぎまで待機させられたが、結局駅も電車も大混雑。
帰宅した時には、もう夜の8時半であった。
つくづく、体力勝負のテストだと思う。
理系の方は2日がかりでさらに大変なので、ますます頭が下がる。
受験した皆さんには「本当にお疲れ様でした」と言いたいし、なんならリッチな入浴剤でも贈りたい気分である。
2月には、学校別のテストが控えていて、受験生はラストスパートの時だ。
ムスメも何校か受けるが、その最終のテスト日にに、ようやく共通テスト利用の最初の合格発表がある。
つまりは、願書を出した全てのテストを受けざるを得ないわけで、このスケジュールの立て方に大人の嫌らしさを感じてしまうのだ。
もっと早く発表してくれれば、不必要なテストを受ける労力も省けるのに。
合格発表や入学手続きの締め切りのタイミングによっては、権利をキープするために入学金を払い込んだものの、結局別の大学に決めた場合はお金が戻ってこず取られ損、という事態にもなる。
少子化で、大学側も生徒や資金の奪い合いとなっているのだろうけど。
なんだかなぁ…、と思ってしまう。
ムスメの場合も、志望校を決めるのにだいぶ頭を悩ませ、スケジュールとにらめっこしながら調整しまくった。
実際、日程がうまく合わないために受験を諦めた大学もあった。
もっと純粋に志望した大学に行けるように、公平に自由に選択できるようにならないものか…と思ってしまう。
余計な大金を払わされるのも、悔しいし(笑)
これを書いている今も、受験生たちは机に向かっていることだろう。
頑張って頑張って、疲れもストレスもピークのはずだ。
ムスメは最近、就寝中に歯をカチカチ鳴らす謎の行動が続いている。
歯ぎしりや食いしばりは聞くけど。
カチカチも、ストレスによるものなんだろうか。
暗闇から聞こえてくるカチカチは、なかなかシュールで怖い。
ムスメの歯がすり減る前に、早く受験生活が終わって欲しい…
と思う今日この頃である。