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映画「サンセットサンライズ」を観て思い出す風景
僕のnoteでは、過去の芸人時代の体験をもとに感じたことを物語として綴っています。本日のテーマは、「ふるさと」です。
震災で失われた故郷・志津川。毎年夏休み、新幹線に飛び乗り向かったあの楽園は、今や記憶の中にしかない。
映画 「サンセットサンライズ」 を観て、心の奥に眠っていた夏がよみがえった。懐かしさと切なさが交差する思い出の記録。あなたにも“忘れられない夏”はありますか?
南三陸が舞台の映画
映画 「サンセットサンライズ」 を観てきた。
観ようと思ったきっかけは、南三陸が舞台だったからだ。僕は宮城県の生まれ。劇中では聞き慣れた方言が飛び交い、とても心地よかった。
主人公が言った「南三陸、はんぱねぇ」。僕もまさにそう思った。
魚介が苦手な僕でも
僕は漁師の祖父を持ちながら、魚介がほとんど食べられない。大人になって少しずつ克服しつつあるものの、まだ苦手なものは多い。
それでも、この映画に登場する海鮮は、どれも息をのむほど美しく、思わず「美味そう」と口にしそうになった。きらめく刺身、滴る磯の香り。スクリーン越しに、海の恵みが惜しげもなく映し出されていた。
そしてふと、僕は思った。
いつか僕も牡蠣を食べられるようになりたい。
それは、漁師の孫としての小さな誇りなのかもしれない。いつか、あの殻を開き、自分の手で口に運ぶ日が来るだろうか。
そんな気持ちが、静かに、けれど確かに胸の奥から湧き上がってきた。
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「けー」という言葉の記憶
劇中で、近所のおばあちゃんが「けー」と言いながら食べ物を差し出すシーンがあった。ほとんどの人には何のことやら分からないかもしれない。でも、それは「食え」という意味だ。
祖母が生きていた頃、僕にもよく言っていた。「けー(僕の名前)、けー」と。その声が耳の奥でよみがえり、懐かしさが胸にこみ上げた。
震災で失われたふるさと
僕の生まれた志津川(現・南三陸町)は、震災で街が壊滅した。祖父母の家は跡形もなく流され、子供の頃に遊んだ公園や近所のお店も、すべて失われた。
今の南三陸町は観光地化し、多くの人が訪れるようになった。でも、それはもう、かつての志津川とは違う。まるで別の街のように生まれ変わってしまった。
僕にとっての天国だった夏
僕は志津川で生まれ、栃木県で育った。毎年夏休みになると志津川へ飛んでいき、夏の大半を宮城で過ごした。そこは、僕にとっての天国だった。
花火大会、お祭り、焼き鳥、わたあめ、海水浴、クワガタ、かき氷、おもちゃ、テレビ、漫画。楽しいことがすべて詰まった日々。祖父母に怒られることもなく、大好きなものに囲まれて過ごす最高の夏だった。
ワクワクが詰まった新幹線の旅
夏休みが始まると、僕は親に新幹線の駅まで送ってもらい、一人で宮城へ向かった。くりこま高原駅に着くと、祖父母がいつものように迎えに来てくれていた。そこから車に乗り込み、志津川へと向かう。それが恒例だった。
新幹線の中では、虫かごに入れたクワガタを眺めながら昆虫図鑑をめくった。ページをめくるたびに胸が高鳴り、到着を待ちきれなくなる。
車内に流れる東北新幹線のチャイムが、その興奮をさらにかき立てた。あのメロディが、たまらなく好きだった。
そして今でも、東北新幹線に乗るたびに、あのチャイムが耳に届くと、心の奥にしまい込んでいた記憶の扉がそっと開く。
すると、一瞬にして、あの夏の景色が胸の中へとあふれ出す。
ワクワクするような、それでいて切なくなるような。あの日の感情が、鮮やかによみがえる。
もう二度と見ることのできない、記憶の中の志津川の風景とともに。
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帰り道の悲しみ
しかし、楽しい時間は、いつだってあっという間に過ぎてしまう。
帰りの新幹線では、胸が悲しみでいっぱいだった。帰りたくない。ずっとここにいたい。そう願っても、現実は無情にも僕を引き戻していく。
あんなに心躍らせた新幹線のチャイムも、今は悲しみのメロディにしか聞こえなかった。夢のような時間を乗せて走った車両は、今や僕を現実へと押し戻すただの鉄の箱だった。
目的地まであっという間に届けてしまう新幹線の速さが、ただただ憎かった。
涙は止まらず、感情の整理もつかないまま、それでも列車は容赦なく走り続ける。そして気づけば、もう到着のアナウンスが流れていた。心が追いつかなかった。
新幹線を降りると、夏はすでに終わりかけていた。
夕暮れに染まるホーム。どこからか、ひぐらしの カナカナカナ… という鳴き声だけが、静かに残った。
映像化への想い
いつかこのnoteを書籍化、映像化してほしいと、本気で願っています。
僕は芸人を辞めてからの10年間、言葉にし難いほど苦しい日々を過ごしました。
その闇の中でどうにか息をし続け、そして少しずつ光を見つけて解放されていった体験。
それを、自分と同じように苦しんでいる人たちに届けたいと思っています。
誰かが寄り添ってくれることで、人は必ず救われる。
そんな確信があります。
時には冗談めかして、「吉本さん、お願いします!」なんて言ってます。
けれど、心の中では真剣なんです。
僕のnoteがもっと多くの人に届き、広がることで、苦しむ誰かの心が少しでも軽くなる手助けになれば。
そんな期待と願いを込めて、これからも書き続けていきます。
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