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スイスで1年「ベジタリアン」になってみた。
留学に行く前からなんとなく興味があったベジタリアン。
きっかけは、日本で初めて仲良くなった留学生の友だちがベジタリアンだったこと。日本では、どこに行っても彼女が心配無く食べられる店を探すのが難しかった。
大人数で他に選択肢が無く、焼き鳥屋さんに行くことになってしまった時は、枝豆とポテトと芋もちだけを食べていたのを強烈に覚えている。
その時は、「ベジタリアンって今日だけは許す!とか無いんかな…」とか心の中で思ってた。
でも、自分がベジタリアンでない限り、どれだけネットで調べても「ベジタリアンの人は〜らしい」と、受け入れるしかなくて、結局よくわからんくてもどかしかった。
じゃあ自分が1年ベジタリアンになってみよう!
日本であんなにも苦労してた彼女だけど、留学までの20年間はオーストリアで問題なくベジタリアンとして暮らしてきたのだ🇦🇹(両親がベジタリアンだから子供の時からずっとベジタイプ)
じゃあスイスでも、できるはず。いやむしろ、ベジタリアンの方が食費抑えられそうちゃう!?
そんな軽いノリで始めてみたけど、気がついたらもうベジタリアン歴12ヶ月目に突入する。
日本では、極端なヴィーガニズムと極端なアンチ・ヴィーガニズム、ベジタリアンとヴィーガンの混同など、かなり偏った情報が多いように感じる。
そこで、この記事では、自分が実際にベジタリアンとしてスイスで1年間生活してみた経験を元に執筆する。
また、いろんな国(思いつく限りでスイス・ドイツ・オーストリア・イタリア・イングランド・スウェーデン・フランス…などなど)のベジタリアン・ヴィーガンの友だちに聞き取り調査をしてきた。
自分自身がベジタリアンだったからこそ、聞ける話もあったと思う。
イメージと違う?vegetarianの定義
日本語でベジタリアンは「菜食主義」。
私は、留学するまでベジタリアンと聞くと「野菜しか食べない」というイメージがあった。
しかし、スイスで出会った”vegetarian”の友だちは乳製品🥛🧈🧀と卵🥚を食べる人がほとんど。
これは、正確に定義するとベジタリアンの中でも「ラクト・オボ」という分類になるらしい。(ちなみにこの言葉を日本の外で聞いたことがない)
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私が日本語で「ベジタリアン」と聞いた時に間違って想起していた、卵や乳製品、蜂蜜などの動物製品を一切食べない人は、”ヴィーガン”。
逆に、”ベジタリアン”の方にはチーズとかが含まれてるものが多く、ヨーロッパではヴィーガンと違ってベジタリアンって言葉に「卵や乳製品は食べる」ってニュアンスが含まれてるのが、私には意外だった。
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スーパーでは、色んなものにこのロゴが付いてる。
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このv-labelは、1996年にスイスで設立されたらしい。他の国はわからんけど、普段買い物をするスイスとドイツでは、このマークをよく見かける。
あと、服にもヴィーガンタグがよく付いている。
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シャンプーとか化粧品とかにもヴィーガンって書かれた製品が本当に多い。日本にいた時は意識してなかったけど、実はあったのかな?
帰ったら確認しよう。
留学中の食生活
毎日自炊!
まず前提として、私は交換留学で1年間スイスに住んでいる🇨🇭
物価が高いから、外食は2ヶ月に1回くらい。
基本的に毎日自炊している。
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スーパーも高いから、日本みたいに「お腹空いたからコンビニでおにぎり!」とかも気軽にできない。(そもそも🍙じゃなくて🥐かな)
授業がある日のお昼ご飯は、前日の残り弁当かサンドイッチを作って持ってったり。時間があったら一回帰って料理したり。
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友だちも、前日のパスタとかサンドイッチをお弁当箱に入れて持ってきてる子がほとんど。大学の校舎内や図書館など、いたるところに電子レンジがあるから、パスタでも温めて食べれるよ🍝
そして、たま〜に食堂!
前回の記事でも書いたけど、大学の食堂はビュッフェ形式でベースがベジタリアンとヴィーガンメニュー。そこに1品だけ肉or魚メニューがあり、オプションで2フラン払えば食べられる。
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友だちと夜ご飯を食べるってなったら、誰かの家で一緒に料理して食べるのが普通。
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蓮根とさつま芋の甘辛炒め😍
そもそも、外食文化が日本(アジア?わからん)特有っぽい。
日本では、安くて美味しい外食が簡単にでき、学生でもしょっちゅう外で食べてるってことにビックリされる!
たしかに、スイスのレストランにもバーにも学生は少なく、(見るからに裕福な)おじさまおばさまが多い。
日本ほどお酒を飲む人は少ない!?
外食繋がりでお酒について。
スイスの学生は、夏なら川沿いで瓶ビール🍻、冬はクリスマスマーケットでグリューワイン🍷が定番。
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焼いてる人が大量発生してビビった
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しかし、先ほど述べたように外食するのが当たり前じゃないし、「飲み放題」なんて存在しないから酔うまで飲むことがまずない。
友だちの家でも、日本みたいに缶ビール積んでレモンサワーと梅酒買って…みたいな飲みがメインの集まりはあんまなかった。人によるとは思うけど。
あと外でも家でも、お酒を一切飲まない人は結構いるし、「とりあえず1杯目は皆んなに合わせてお酒頼んどく」とかのプレッシャーがない。
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潰れるまで飲む人はいない
(というかいくら飲んでも潰れない)
特に「日本ほど"頻繁に"、”日常的に”お酒を飲む人は少ない」と感じる。し、実際に日本に留学してた友だちが「日本のお酒の安さと居酒屋で潰れてる人たちを見て驚いた」と言っていた。
近年は、インフルエンサーの影響で(二重言葉?)健康志向が流行っており、お酒を飲まない若者が増えているらしい。それと共に、ここ数年でランニングクラブの数が爆発的に増えたり、ジムに行く女子も急激に増えているそう🏃♀️🏋️
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旅先でも、ランシュ持ち歩いてインスタで見つけたコミュニティに参加したり🏃♀️💨
「ベジタリアン」は十人十色
話が少し逸れましたが…
いろいろ話を聞く中で「ベジタリアン」と一言に言っても、本当に色んな理由があることを知った。ここでは、私なりに人がベジタリアンになる理由を分析してみた。
※宗教やアレルギーによるベジタリアンの人には個人的に出会った事がないから、そこは書いていない。ネットで調べたところ、例えばインドは、宗教上の理由がほとんどを占めるそう。
1. 動物愛護タイプ
私の友だちの”ベジタリアン”の中で、ここに強い思い入れがある人は、案外そこまで多くない印象。
動物愛護が理由の人は”ヴィーガン”になることが多い。乳・卵・ハチミツとかの動物性食品は一切食べないし、動物性の石鹸とか皮の衣服も絶対に使わない。
もちろん、ベジタリアンになる理由の一つに動物愛護があるけど「栄養不足になるから」とか、「完全にヴィーガンになるのは難しいから」とかの理由でベジタリアンに留まる人も多い。
数年前に話題になった工業型畜産のショッキングな動画を見て肉を食べるのを辞めた/食べられなくなった、という人も結構いた。
この動画を見ている人が多かった。
ミリオン再生されてる。
2. 環境保護タイプ
特にスイス人に友だちはこのタイプが圧倒的に多い。
工業型畜産や過剰漁獲が地球の環境に悪影響を及ぼすからって理由。
なぜ、ベジタリアンになることが環境保護に繋がるのかを簡単にまとめると👇
・温室効果ガス削減
畜産業は、世界の人為的温室効果ガス排出の約14.5%を占めている。植物ベースの食生活に切り替えると、動物性食品の生産に関連する排出量(牛の腸内発酵や糞尿からのメタンガス、肥料などからの亜酸化窒素、二酸化炭素)を大幅に削減できる。
・土地利用の効率化
畜産業では、飼料を生産するために広大な農地が必要だが、これは森林伐採や生態系の破壊に繋がる。直接植物を食べる事で土地面積が少なく効率化できる。
他にも水資源の節約やエネルギー効率化など。
面白いと思った論文↓
https://academic.oup.com/af/article/9/1/69/5173494?login=false
大学であった「サステナビリティとヴィーガン」って授業では、このトピックについて詳しく学んで非常に興味深かった。
3. 単に肉が好きじゃないタイプ
これも実はめっちゃ多い。
肉や魚を食べるとなると、日本に比べてドーンって肉の塊ステーキ、魚丸ごとグリル、みたいな料理が多い気がする。
また、スーパーでも鶏の頭だけ取られて丸ごとそんままとか、血がどべーってなった牛肉とかが骨見えた状態で並んでたりするから、ちょっとグロいって正直感じた。
動物愛護とはちょっと違うんやけど、「動物を食べること自体に抵抗がある」って人がまあまあいる。
4. とりあえず試してみるタイプ
友だちで「2025年の目標は完全ベジタリアンで1年過ごすこと」と言っている子がいた。
去年までは、基本ベジタリアンだけど実家に帰ると親が肉を食べるから自分も食べていたそう。「今年から働き始めるから実家に帰ることも少なくなって完全に達成できそう」って言ってた。
「そもそも、なんで?」って聞いてみたら「んー、New Year’s Resolution(新年の抱負)他に思いつかんかったから」って言ってて😦やった。
ほんまにそんくらい、気軽にできる。
また、ベジタリアンでなくヴィーガンですら「彼氏とヴィーガンのレシピ試してるうちに2人とも気づいたら完全にヴィーガンになってた!」みたいな子もいた。2年間全く乳製品・卵も何も摂ってないらしい。
「理由は?」と聞いてみても、「別に理由とかないよ、2人ともそれで落ち着いただけ」みたいな。
このタイプが私的に1番衝撃やった。
日本のメディアでは、「ヴィーガン(と混同されがちベジタリアン含む)というものは非常に強い信念があってやっている極左の人々」みたいな印象操作がされていると思った。
日本語で「ヴィーガン」とYouTubeで調べると、明らかに過激なヴィーガニズムを馬鹿にした否定的な動画ばかり出てきて、コメント欄はヴィーガンを否定するコメントで溢れてる。
それに対して英語で「vegan」と調べると、ヴィーガンレシピがまず出てくる。
日本での「ヤバい宗教」みたいな認識に対して、こっちでは一つの「食生活」の選択肢として存在してると感じた。
5. 肉食を見下すタイプ
日本のメディア(ネット?)では、こうしたタイプのヴィーガン(ベジタリアンにはおらんと思う)を人に強要する狂気的な人ばかり取り上げられている気がする。
実際に、こういった態度の人にも出会ったことがあるにはあるが、超少数派だと思った方がいい。
例えば、ベジタリアンじゃない人のことをnon-vegetarianって言えばいいところを”meety”や“meet eaters“とか、こういった言葉を使う人は「未だに肉食である野蛮な人間」みたいな差別的な態度の人が多い気がする。言い方にもよるけど。
でも、ほんまに、超超少数派!!
ベジタリアンを推奨しないし、抑止もしない
1年間ベジタリアンになってみたけど、究極これに尽きる。人の食生活に口出しするのは変だし、議論することでもない。
ベジタリアン自体がどうってよりも、「ベジタリアンになった方がいいよ」って言うのは最近の西洋の流行の価値観の押し付けのように感じるし、はたまた「ベジタリアンにならない方がいいよ」って言うのは、新しいものを受け入れられない人々による同調圧力のように感じる。
強要するムーブが変なのであって、どちらの食生活でも好きなようにすればいい。
また、動物と人間と”その間”の線引きは、人にも国にも宗教にも文化にもよる。
それを知って、「へぇそんな考え方もあるんだ」と理解することは重要だが、「どちらの方が優れている」という比較をすることはできない。
自分にとっての当たり前は、皆んなの当たり前ではない。
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法律で決められているらしい
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隣人は現役の狩人らしい
実際に、1年ベジタリアンとして生活してみたけど、21年間日本で釣り好きの父の元で生きてきた私としては、ベジタリアンが自分のアイデンティティにはハマり切らなかった。
あと80年、スイスで肉や魚を一切食べずに生きていけるかって聞かれたらYESだと思う。
だけど、この先80年、日本でも家族と別の食事をしたり、友だちに店選び気を使わせたりするのは違うなって思った。
私という個人は、動物や環境保護のために日本での人間関係を複雑にしたくはないと感じた。
正直なところスイスでは、ベジタリアンになることが「安くて美味しくて簡単」な選択肢だった。
仲良くなった友だちの9割くらいがベジタリアン・ヴィーガンだったから、ベジタリアンでいる方が都合が良かった。(ベジタリアンだから仲良くなったとかではなく、授業やランニングコミュニティで出会った人たち)
これはスイスの中でも、私の住んでるエリアがいわゆる極左エリアで(ヴィーガニズムが左だと言いたいわけではないが、傾向として新しいものって意味で)大学としてもベジタリアン・ヴィーガンを推奨していることが関わっているらしい。
また、そもそもベジタリアンかノン-ベジタリアンかを選択をできる時点で、いかに恵まれているかを忘れてはならないとも思った。
食べたい食材が手に入るのだから。
ある日のこと。友だちが、環境保護のためと言いヴィーガンメニューにしつつ、半分くらい食べ残して捨ててるのを見て違和感しかなかった。
そして私には、「もったいない」精神が強く根付いているってことに気がついた。
絶対に食べ残さないし食べきれない量は作らない。これが私のアイデンティティ。
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日本に帰ったら、留学前みたいな今まで通りの食生活に戻ると思う。
ばあばの筑前煮と天ぷらが何よりも楽しみ。
結論!
1年ベジタリアンになってみることで、物事を多角的に考える姿勢が身についた。人に自分の信念を強要したがる人には、その人なりの正義がある。しかし、案外何も考えずに流れで生きている人も多い。
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