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春のような温かさがいつもある学校に… かすかな気配に 迷わず廊下に飛び出して 〜心の宝物343

🌷彼はどこでも はつらつと

山に囲まれた小さな学校
この年、2年生は最大人数の学級でした。中堅の担任の先生と、個性豊かな十数名が、ドラマに満ちた元気いっぱいの日々を実現していました。

彼は、その中でもとりわけ、はつらつとしたムードメーカーでした。

グラウンドの遊びのときも、運動会への取組でも、授業中の挙手発言も、明るい声を出しながら、自分から進んで動きます。その場を心から楽しんでいるような笑顔で、周囲の子どもたちを自然に、前向きな空気に巻き込んでいくような、そんな力がありました。

🌷かすかな気配に 迷わず廊下に飛び出して

彼には、思っていることをはっきりと言い切る率直さもありました。
遊びのルールの解釈の違いか何かで、ある子が、彼に、かなり強い調子で、異論を伝えた場面がありました。売り言葉に買い言葉で、いさかいになってもおかしくない調子でしたが、彼は「わかったよ」とだけ答えて、相手の子の異論を受け止めました。
それでも、何かがよほど収まらなかったのか、相手の子はなお執拗に、彼に苛立ちの言葉をぶつけました。彼は、しばらく聞いていましたが、ある瞬間、真っ直ぐにその子の目を見て、
「わかったって言ってるよ」とはっきり言いきりました。おかげで、お互いがそれ以上傷つけあうことがありませんでした。

ある日の朝の会が始まる前の時間、校内を歩いて、2年生の教室の前にさしかかったときでした、彼が教室の後部ドアからいきなり飛び出してきて、
「おはようございます!」と、元気に思いを届けてくれました。
朝の会前とはいえ、大方の子は席に着いて、開始を待ちながらおしゃべりなどしている時間でした。コロナウイルス蔓延はまだ遠い先のことです。厳冬のことで、教室のドアも窓も閉じられていました。
「おはよう。さわやかな挨拶をくれてありがとう。でも、私が通りかかったことがよくわかりましたね」
驚いて挨拶を返しながら尋ねると、
「足音が聞こえたよ。誰か来たから、挨拶しなきゃと思って」とはつらつとした答えが返ってきました。

廊下を通る誰かの足音が聞こえた。
それだけの事実から、あの行動を選択する君の生き方に強く心を打たれた。朝の会前の、あの時間は、一日のスタートに向けて、慌ただしい中で、束の間息を整える、少し大げさに言えば、君たちにとって、大切な安息の時間でもあるだろう。

廊下を通る足音が聞こえたとしても、それはそれ、窓の外で鳴く鳥の声と同じ意識でとらえて受け流しても何の不思議もない。いや、その方がよほど自然だろう。

小鳥と同じほどの気配の、誰かわからぬ誰かがそこにいる。だから席を立ち、廊下へ出てその人に挨拶をしよう、そうしてお互いの一日のスタートを、少しでも温かなものにしよう。そう決意し、行動できる人は、大人も含めて決して多くない。

君の優しさのアンテナの細やかさ、心優しさと強靭さを尊敬する。

かけがえのないあなたへ
素敵なきらめきをありがとう
出会ってくれてありがとう
生まれてきてくれてありがとう
どうか、ありのままで
どうか、幸せで

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