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多様性の中を生きる 「僕はイエローホワイトちょっとブルー」 書評・感想

おはようございます。本日はブレイディみかこさん著書の小説「僕はイエローホワイトちょっとブルー」を取り上げます。この本は実際にイギリスで生活をされる作者が、中学生の子を育てる実生活を元に書かれたリアルストーリーが魅力です。日本とイギリスの文化そして教育の違いを理解する上で非常に興味深い内容でした。本書を読んで得られた気付き感想等をまとめていければと思います。


1. 共感力に秀でる息子さん

イギリス人の父親と日本人の母親の間で生まれ、いわゆるハーフとして育つ息子さんはとても精神的に大人びています。幼き頃から自分のルーツを自覚して考えを深掘りさせている、そう感じさせるエピソードがたくさん登場します。

イギリスの人種も貧富の差もごちゃまぜの中学校に通うことになり、差別丸出しの様々な問題に直面します。そこには彼と同じような境遇の友人がたくさんいますが、友人の幼稚な言動も冷静にそして俯瞰して捉え行動していきます。

イギリスの公立学校教育ではシティズンシップ・エデュケーション(市民教育)の導入が義務づけられており、社会において充実した積極的な役割を果たすための教育としています。

その授業の期末テストで『エンパシーとは何か?』という問題へ彼は「自分で誰かの靴を履いてみること」と答えました。単純に日本語訳すれば共感とか感情移入と訳される言葉ですが、彼のこの表現には感嘆しました。

世界の縮図のような複雑なスクール環境の中でも彼はうまくやっていきます。それは相手に本当の共感をしているのだろう、だから周りからも好かれているのだろうという様に感じました。


2. イギリスと日本の教育の違い

本書を読むとイギリスと日本の教育の違いが随所に垣間見る事ができます。よく言われる日本の学生と外国の学生の精神年齢の違いというのは、教育の違いなのかもしれません。

イギリスの教育は先に挙げた様に社会教育が充実しています。学校教育と社会が地続きでつながっており、よりリアルを子供たちに咀嚼しやすい形で提供している、そういう意味で子供たちに寄り添った教育といえます。

こうやって他国の教育を見てみると日本の教育はどこか子供と社会を分断している様にも感じます。学校教育も管理のしやすさ重視しており、どこか子供は子供として扱う、ある意味差別しているとも言えます。

大人が子供に対して大人の様に振舞うことを期待していると、子供は期待に添うように育ちます。これを教育心理学でピグマリオン効果と言います。こういった考えの教育は欧米で進んでいます。中学年代の子たちをいつまでも子供あつかいしない、これは子供の社会的自立に向けた親の責任とも言えますね。

3. イギリスと日本の移民文化の違い

同じ島国であるのにもかかわらず日本とイギリスの移民文化という大きな違いがあります。イギリスは階級社会が定着しており貴族階級、中流階級、労働者階級この区分けが日本よりもはっきりしているとされます。

貧富の差がある国にどうしての移り住んで行こうとするのでしょうか。それはやはり母国語である英語の圧倒的なパワーだと思います。世界には英語人口が15億人もいると言われますが、その多くが母国語ではなく第2言語だとされます。

この様な言語という利点に加え、すでに長く移民を受け入れてきた歴史があります。イギリス社会には文化的多様性が当たり前の様に存在しており、そのおかげで新しく移ってくる人にもハードルが低く感じられるでしょう。

日本はどうでしょうか。母国語の日本語は1.2億人こそいるがこの国でしか通じません。言語的障壁は他国からの人の波を打ち返す日本屈強な防波堤となってしまっています(日本から他国へ出るのにも壁となる)。

また、「自己主張を控えて和を乱さない、同じ価値観を持ち言葉にしなくてもわかってもらえる、相手も同じ様に考えることを望む」といった様な日本独自の性質も要因でしょう。長年他国からの侵略も許さず同じ文化を共有してきたからこそではあるが、新しく移ってこられる人にとっては高いハードルとなるでしょう。


日本が抱える少子高齢化、人口減少、経済的衰退といった社会問題の解決には移民を積極的に受け入れるべきという意見があります。移民がもたらす人種、文化の多様性は新しいイノベーションを起こすのには欠かせません。

日本の伝統が廃れる、差別社会を産む、格差が拡大するといった否定的意見もありますが、個人的にはこの移民促進には賛同しています。日本が誇る治安の良さ、インフラの安定性、社会保障の充実といった点では移ってこられる方にとっても利点と言えます。個人としては、その様な社会となったときに柔軟に対応できる素養を身につけておきたいと感じました。


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