重度認知症の方への対応
「だれかー!だれかー!」
「たすけてください、たすけてください。」
とお話されるご利用者さん。
思い出(長期記憶)も断片的。かすかに覚えていることは、故郷の町の名前。むすこや、むすめの名前も思い出せない。
さっき行ったことも聞いたこともわからないし、おぼえていることができない(即時・短期記憶障害)
ここがどこかもわからない、見知った人もおらず、なぜそこにいるのかもわからない。
恐怖だと思います。
自分のことも周りのことも何も把握ができないって想像を絶する不安が襲ってくるでしょうね。
その方にとっては、現在、今その瞬間を感じることがほぼすべてかもしれません。
助けてくれる人が目の前にいる、落ち着いた音楽が流れている、おいしそうな匂いがする、安心できるスキンシップや声掛けがある…。そんなことを求めていらっしゃるかも。
ある日、その方の前でピアノを弾きました。
するとリズムをとったり口ずさんだり、わたしとハイタッチしたり。
気分に合わせてテンポを変えながら知っている曲を演奏し、一緒に歌っているよ、とこちらも示します。
「そうそう、わたしこどもがいたわ。」
「子育ては大変やった。」
と発言。
え?こんなに落ち着いて話されるの、はじめでては?
「こどもの名前は…、わからん。」
そこでわたしは、「〇〇さんと△△さんですよ。」
「あ!そう!〇〇と△△!!」と涙を流さました。
「そう、どこに住んでるのかな。」
「□□市ですよ。」
「わー、そうか!嬉しいな。やっとわかった!嬉しいな!」
こんなやり取りがありました。
一緒にそのやりとりに参加していた職員も涙が出てきました。
わたしもウルッと。
自分も状況もわからない。
でも知ってる曲が流れてきた、なんか嬉しいな
一緒に歌う人がいる、なんか嬉しいな
あれ?歌っていたら何か思い出してきた、なんか嬉しいな
目の前の人がこどもの名前を教えてくたれた、そうか、わたしは思い出したかった
そんな気持ちがみてとれました。
安心できる環境
できることをする(歌う)
誰かと共有する
思い出が増えることで少し自分のことがわかる
今いるところは悪くない場所
とにかく環境と自分自身を把握できることがこの方が落ち着ける要因だったのでしょう。