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感情で言葉を作らない。

職場や家庭、SNSなどで”怒り”を相手にぶつけてしまい、冷静になった頃に後悔したことはありませんか。

電話相談を受けていると、驚くような感情的攻撃を受けることがあります。とても荒々しい言葉で、人格否定や身体的な脅しとも取れる言葉の数々を浴びせられることもあります。

この行動背景を断定することはできませんが、”怒り”を使ってマウンティングしている状態も少なからず含まれていると捉えています。
過去に”怒り”を使って相手をひるませて、自身に従わせた成功体験があるのでしょう。要するに、自分の方が強い存在であると思い知らせたいわけです。
これを繰り返すうちに、周りから人は居なくなり孤立するのは明らか。

感情で言葉を作るのはとても危険なことです。
そうではなくて、言葉で感情を伝えることができれば、感情を使って攻撃する必要はなくなります。

以前、感情と自分を切り離すことを記事にしました。

今回はもう一歩踏み込んで、ネガティブな感情とうまく付き合うための感情ラベリングについて整理します。

▶この記事を書いた人

01)感情で言葉を作らない。感情に言葉をあてはめる。


 感情で言葉をつくること。
 感情に言葉をあてはまること。

この2つの違いを事例的に示すとしたら、前者は冒頭に引用した電話相談の彼の状態。
”怒り”を使って、相手を脅すための言葉を作りだすことです。
これは怒りという感情を伝えることを意図した言葉ではありません。
怒りを動機として、自身の目的(自己優位性の確立)を達成するために、言葉を武器にしている状態です。

では、「感情に言葉をあてはまる」とは。
自身が感じたココロの動きや、それによって身体に現れる現象を言語に変換することです。これを、感情ラベリングと呼びます。

『ラベリング』とは
1ラベルを貼ること
2レッテルを貼って決めつけること

コトバンク

感情ラベリングとは言葉の定義のとおり、自身の感情に対して「この感情はこれの事」と自己理解をすること。

02)感情ラベリングの意義


感情ラベリングによってどんな効果があるのか、実行する意義とは。

法政大学の渡辺教授は、著書「感情の正体」にて「湧き上がってくる気持ちを意識するためにも、感情を言葉へ置き換えることが必要」だと説明しています。

うまく気持ちを言葉に置き換えることができるようになると、他人はその気持ちに共感しやすくなります。
本人も、その言葉を知る前よりもカタルシス(解放感)を得ることができるようになるわけです。

「感情の正体」より抜粋

冒頭の自己紹介画像に記したとおり、私は自分自身を「言語化人間」だと自覚しています。

再掲しまする。

なぜ言語化にこだわるのか。

言語化とは、不明確であいまいな事柄に対して、言葉によって名づけすることだと理解しています。名づけすることによって、その不明確な事柄を特定して呼ぶこと、伝えることができるようになります。
これは、自身で扱えるよう操作性を上げた状態です。

感情ラベリングによって名づけされた感情は、自分の中で呼び起こすことができるようになる=再現性もあがることになります。
また、的確な言葉を当てはめるまでのトライアンドエラーによって、感情認知の正確性もあがることになるでしょう。

最後に感情ラベリングの効果を簡単に。
感情ラベリングによって、脳や身体に反応があることが分かっています。
 扁桃体の活動低下 → 感情が抑えられる
 前頭前皮質の活動上昇 → 感情のコントロールがうまくいく
 交感神経系の活動低下 → 心拍数などを下げる

これにより、感情の高ぶりを抑制してコントロールできるようになると言われています。

03)感情ラベリングの方法。


感情ラベリングを行うには、ステップが必要だと認識しています。
感情心理学を参考に、個人的な解釈・経験も踏まえて、私自身が行っている方法を整理します。

【感情ラベリングのステップ】
(ステップ1)感情の認知
(ステップ2)感情の言語化
(ステップ3)感情の受容

(ステップ1)感情の認知

『感情の核心は、快 ー 不快である』
心理学者のラッセルは、感情は『快ー不快』次元と『覚醒度合い』の二次元座標で認知できると主張しています。

感情を知覚したとき、ココロの感じ方としての「快 ー 不快」身体の感じ方としての「覚醒の高低」に視点を合わせて観察すると、感情の状態を認知できるようになります。

(ココロの感じ方の内観例)モヤモヤする不快感あり。
(身体の感じ方の内観例)気を張って注意を向けている。

(ステップ2)感情の言語化

感情を認知したら、その感情に見合う言葉を選択します。
個人的には、2つのやり方でトライしています。

①プルチックの感情の輪

感情は、単色的なシンプルなものではなく、複数の感情が混ぜ合わさったグラデーションだと言われています。
その混合感情に言葉をあてはめるときに有効なのが、プルチックの感情の輪。

例えば、基本感情である「怒り」に着目すると、以下のとおり読み取れます。
【感情の大きさ】
激怒 > 怒り > 苛立ち
【怒りの混合感情】
軽蔑(嫌悪+怒り)攻撃(怒り+期待)自尊心(怒り+喜び)悲憤(怒り+悲しみ)優越(怒り+信頼)憎悪(怒り+驚き)

その時感じていた「怒り」に対して、大きさやグラデーションを考察し、あてはまる言葉を見つけだします。

②オノマトペ(擬態語)と体感の分析
日本語には、感覚や感情を表現するオノマトペがたくさんあります。
「怒り」を例とすると、以下のとおり

  • 頭に血がのぼる

  • 目くじらをたてる

  • 腹に据えかねる、はらわたが煮えくり返る

これらから、しっくりくる表現を見つけたり、感情の体感を言葉にしてみたりしています。
(怒りの例)一気に頭が熱くなって、どくどく脈打つ感覚 など

(ステップ3)感情の受容

感情の受容とは、ステップ1・2で認知・言語化できた感情を受け入れることですが、これが相当に難しいと感じています。

個人的に、とくに受容が難しい苦手な感情が「嫉妬」です。
嫉妬している自分を醜く感じてしまい、嫉妬を感じた自分を恥じてしまうところがあります。

ただ、「嫉妬」を持たないことを目指しているのではなく、嫉妬の感情もニュートラルに受容することを目的としています。
これが出来れば、次に自分がどう行動するかを選択することができるからです。

例えば、自分が何に嫉妬しているのか思考を深めてみたり、嫉妬している対象を分析してみたり、自分自身を感情の支配から脱して一歩前進させることができます。

人を作るのが”理性”であるならば、人を導くのは‘感情”である。

ジャン=ジャック・ルソー

感情ラベリングとは、単なる言語化ではなく、言語化の先である「受容」まで含まれると個人的に解釈しています。
受容できてこそ、ネガティブな感情をもコントロールし、ポジティブな行動へ変換できるのではないでしょうか。

■あとがき


今回は、自分のココロの動きである感情を”情報”として捉えて、”言葉”に変換する『感情の言語化』の意義とプロセスを考えました。
これは、感情を知覚した瞬間的に実行するのは非常に難しいことだと思っています。

ネガティブな感情に瞬間的にハイジャックされるのを阻止した上で、心理的に安全な場所でリラックスして感情ラベリングを行うことをオススメします。

感情ラベリングの次は、必要であれば相手に”感情を伝える”という段階に移ります。
感情は自分だけのものですが、感情を伝えることでコミュニケーションが劇的に変化します。それは良くも悪くも。
効果的に「感情を伝える」には、率直に対等に冷静に伝えることが求められるでしょう。

長くなりましたので、「感情の他者への伝え方」は次回整理することにします。よろしければ、またお付き合いくださいませ。

最後までお目通しいただき、ありがとうございました。

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