大学入試における「女子枠」
みなさんの大学では男子学生の方が多いですか?女子学生の方が多いですか?
令和3年度の学校基本調査によると、大学全体では、男性54%、女性46%と少し男子学生の方が多いそうです。
しかし、分野によってはかなり違いがあります。
家政系は90%とほぼほぼ女子学生ですが、理学28%、工学16%、社会科学36%と女子学生が非常に少ない分野があります。
昨今、ジェンダーバランスの観点から、従来、男性の多い分野に女性を増やそうという動きがあり、その流れも大学入試にも起きています。
そのような流れで、私立、国公立問わず、いくつかの大学で、理工系の学部で「女子枠」が導入されはじめました。
私はジェンダーバランスの是正はとても良いことだと思います。
たとえば、自動車の設計は男性が運転することを前提として作られています。
安全性評価の衝撃実験では、男性の体格に合わせたダミー人形を使います。
つまり、この実験では女性の運転手に対する安全性が正確に分からないわけです。
自動車の開発に携わる人が男性ばかりであるため、ダミー人形に女性サイズも用意しようとはならなかったのでしょう。
加えて、自動車は男性が運転することを想定したような設計です。
女性が運転席に座るとき、シートを前方にスライドして調節しています。しかもMAX前方に寄せていたりします。
シートを前に寄せると、運転手から見た視界はかなり変わってきます。
ルームミラーとサイドミラーが運転手の視界の端に移動します。
ミラーが視界の端になれば認知しにくくなりますので、安全度が低下します。
一般的に女性は車の運転が下手と言われていますが、これには自動車の設計上の問題も関係しているのかもしれません。
自動車開発に女性が多く携わるようになれば、もう少し女性の運転が向上するかもしれません。
逆に、男性が少数派になることもあります。
たとえば、キッチンの台の高さは「主婦」が作業することを想定して設計されています。
ちょっと背の高い男性が作業すると、ものすごく前屈み姿勢にならないと作業が出来ません。
もう苦行かというくらいに…
料理をするのは女性だけではありませんよね。
男性にも女性にも使いやすいキッチンの設計が求められると思います。
ちょっと前置きが長くなりましたが、あらゆる分野で男女どちらかに偏っていると、いろいろと不都合が起きやすいので、ジェンダーバランスを是正することは重要です。
そのために、大学が理工系分野の女性人材を増やすべく、入試に「女子枠」が作られたわけです。
そして、やはりというか、この女子枠に対しては賛否両論です。
元々、女子の志願者が少ないわけですので、女子枠の倍率は一般枠より低くなり、入りやすいことが予想されます。
この点が入試の公平性を欠くということで批判の的となっているようです。
ここらへんの判断は本当に難しいと思います。
入試が公平であることは大事です。
しかし、「女子枠」以外にも、すでにおなじみになっている「地域枠」、指定校推薦、内部進学でも、一部の受験生が優遇されるので、「女子枠」だけを批判するのも微妙に感じます。
女性が少ない分野に女性人材を増やすことは良いことですが、そのために入試の制度を変えるのはどうなのだろうかと考えてしまいます。
そもそもどうして女子が理工系を目指さないのか、真剣に考えないといけないのではないでしょうか。
進路選択で「男子は理系、女子は文系」のようなイメージで指導している高校教員が多いかもしれません。
親が子どもに「男子は理系、女子は文系」の刷り込みをしているのかもしれません。
そして、圧倒的女子率の家政系分野でなぜ「男子枠」がないのか、このことはほとんど議論されません。
女子ばかりの家政系分野に男性が増えれば、前述のキッチンのような女性設計の家事全般に変化が起き、男性の家事分担率も向上し、まわりまわって女性の社会進出も進むと思います。
あらゆる分野でジェンダーバランスの是正は必要だと思います。
しかし、大学入試の「女子枠」は本当に理工系分野の女性人材の増加にどれだけ貢献するのか不明で、なんとも言い難いところです。
うまく文章をまとめられませんが、男性も女性も価値観を押しつけられず、自分が興味を持って楽しめる分野で活躍できる世の中が実現できればと願っています。