見出し画像

【市役所の仕事】危機管理としてのメディア対応

人生、50年近く生きていると、
いろんな経験があるもので、
いくつになっても新しい、
初めての経験があります。

あまり好ましくない記事

市役所にとって、あまり好ましくない内部調査の結果について、
刺激的なタイトルの記事として新聞記事にされました。

こういうときの対応を考えたことがなかったので、
どうすればいいのかわからない、というのが、
初動時の正直な気持ちです。

好ましくない調査結果が出たことは事実。
メディアの記者さんは、
『あばく』記事を、『スクープ』的に書きたいと思っていることも事実。

事前に記事になることの予告

記事になる直前に、取材を受け、
その取材はいつもとは違う、とても厳しい口調で、挑発的でした。
本気で『あばく』記事を書こうとしていました。

週刊誌で有名人の不倫スクープ記事が出る時もそうだと、何かで読んだことがありますが、
新聞記事になる前日の20時に、携帯電話にかかってきた電話で予告を受けました。

この予告がされてる理由はわかりませんが、
「え~記事にしないで~」と言っても記事になります。
とにかく、記事になると。
心の準備しとけよ、だと思います。

実際のところ、心の準備というよりも、
何も対策は思いつかず、眠れなかったのが事実です

心の準備・・・というか、覚悟

結局眠れて(眠れたんかいw)目が覚めた朝には、
こうなったら、隠すことなく、わかっていることは正直に、誠心誠意、オープンに対応するしかないと覚悟を決めました。
これを切り抜けて、信頼を勝ち取ろうと思いました。

そう、生きるしかないからね。

記事を見て

新聞記事を見て、驚きました。
こう書くんだ・・・あおるよねー😅

私の頭と心臓のエンジンフル回転です。
ここは対応を間違えてはいけないと。

ひとつはっきりさせておきたいのは、
記者さん個人には何の怒りの感情もありません。
これがメディアなのか…と怖さを知った、それだけです。

危機管理対応としての初動

朝、まず、何をしたのか。
私もこんな体験は初めてでしたが、
思いついて準備したのは、次のことです。

①QAシート

簡単な経緯、事実を一枚の紙に記録しました。
そして、想定質問とコメントを用意しました。
今後の対応を書き出しました。

上司に「このように対応していきます」と報告しました。

上司も、その対応方針を了とし、
私で対応できないことがあればすぐに連絡するようにと、安心する一言をいただきました。

②対応担当は、私がやります宣言

取材を受けた日と新聞記事が出た日には、市長以下全部長含む幹部職員を集め、状況と対処方針を報告。
朝一、電話交換、総合窓口など、関係しそうなところに連絡しました。

私が一切の苦情対応と報道対応をするので、つないでくださいね~」と、
特に、まず第一声を浴びそうな電話交換さんには、明るく笑顔でお願いしました。

影響する可能性のある部長と簡単に打ち合わせ、
「個別の状況説明が求められれば部長がお願いします、全体的なコメントは、私が対応するので、つないでください」
と、役割分担を。
そして、最後にがんばりましょうと、
目を合わせて真面目に笑顔を。

部下には、
「今回の案件は、申し訳ないけどこの部署で対応することになった。
すべて私が対応するから、何かあれば、落ち着いて私につないでください。」
と伝えました。

直属の上司と課長には、
「私は外部との対応に専念します。ここを離れず待機します。
ピークは午前中だとは思いますが、今日一日は待機しますので、内部の調整に走り回れません。
その役割は課長にお願いします。
なにかあればすぐに部長に報告します。
何もなければ何もおきてないと思ってください。
区切りのいいところで状況報告します。」
と役割分担と連絡方法を伝えました。

苦情殺到で業務に影響が出ないようにすることが命題

今回の件は、好ましくない調査結果であったことは確か。
でも実害はなにもありません。
開き直りととられては不本意ですが、ヒヤリハットで言えばヒヤリです。

なので、窓口に苦情が殺到して業務に支障があってはいけない。
これしか考えませんでした。

さあこい!と構えましたが、
市民からの苦情、ご意見は一件もありませんでした。
電話でも、直接でも、メールでも、
問い合わせフォームでも、SNSでも。


追加で他のメディアの取材があって、
その翌日に同じ内容で記事になりましたが、
それでも市民からの苦情、ご意見はありませんでした。

電話が鳴るたびに心臓がどきっとしました。
次こそ苦情じゃないか?みたいに。
でも、なくて本当によかった…本当に。

「これを乗り越えて信頼をゲットしよう!」
と言って自分を含む周りを鼓舞した3日間でした。

状況をみんなに話し報告し、
ときに冗談を言いながら、
不安な気持ちをまぎらわしました。

次は、来週、再来週と、
新聞記事を見て、何か言ってやるぞと準備運動ができてる議員への説明が残っています。


経験を活かすしかない

この対応をするとき、
みんなと笑顔で真面目に話せたこと。
頑張ろうと励まし合い、冗談を言い、
誰も後ろ向きにならずに役割分担できたこと。
もし誰か一人でも、「私(ボク)違うで」と逃げる態度をとられたら、私の気持ちは弱っていたかもしれません。
上司から、「ありがとう、頼りにしている」と言われたこと。
一種の仲間感、高揚感。
よくがんばりました。よく生きることができました。

これからも、生きている限り、
まだ経験したことのないことを
経験していくのでしょう…

新しい経験ができるとはありがたいものです。


今日、突然生きることを奪われた方々に合掌です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?