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つらつら と。

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テキスト機能にそのまま書いた詩を集めたマガジンです。長めの詩を読みたいときに開いてみてください。
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#詩

手を振るよ

ラジオから流れてた
ヒットソング
今はストリーミングで
配信されてる

深夜にね
目が冴えて眠れないと
たまに聴くんだ
あの頃へ 少し戻った
ような気になる
全然 明日の朝も早いんだけど

今が不満なんじゃない
もう立派に大人だし
いろんなことのコントロール
ちゃんと出来てる

でも、なんでだろ
あの頃のヒットチャートは
胸をくすぐって
まばゆいくらいに
泣いて泣いて 笑った日々を
少し苦笑いして

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春への手紙

春への手紙

あなたと手を繋いだこと

あなたと泣き、そして笑いあったこと

ずっとつづくものなど
ないとは知りながら

ずっとつづいてほしいと
願うのは

かなしく空っぽなことなのでしょうか

春の風が思い出をさらっていきます

あの日、あの時が

どんどん どんどん

遠くなっていきます

いさぎよく さよならと手をふるには

まだ 心があたたかすぎるのです

あなたと繋いだ手

あなたの笑顔

あなたの涙

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名づけた日

失ったものはなにもないのに
ぽろぽろ 毎日
なにかをこぼしている

「終わり」を浮かべて
遊戯している僕らだ
本当はなにも、知らないのに。

愛しいだとか
苦しいだとかが
まざった感情がうきあがる

ここは真夜中 水の中

誰か 誰か いませんか

ロッカールームの鍵を返して
100円を取り戻す

切符を入れて入場し
残り58分の待合室

かわるがわる
入れ替わる 人 人 人

なにか

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春のこと

とりあえず段ボールに放り込んだ  

2年続けた日記帳
期限切れのクーポン券
何に使うかわからなくなったネジ
君からの手紙

これから僕の行く先は
少し遠い場所

電車を乗り継いで9時間
新幹線なら5時間半
飛行機は、出ていない

手紙は2日くらいかかるだろう
メールならすぐだけど、

君がメール嫌いなこと
忘れてない。

「いつでも帰ってきてな。」
家族も、友達も、口をそろえて言う

「身体に気

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記号化された一日のはじまりに

気温20℃
湿度78%
曇/雨

それが今日をあらわすすべてだと思った

脈拍は高く空を打って
目の下が 黒っぽい

烏が今日の運勢を告げようと
ひっきりなしに電話を鳴らす

わたしはのどに痛みを覚えた

気温20℃
湿度78%
曇/雨

鞄に入れた 折りたたみ傘が
壊れていることを知りながら
知りながら 僕は、

地球の底を叩くような 雨を待っている

サーカスが行ってしまう

サーカスが行ってしまう

車輪のように
くるくる回るから

ティーカップのなかは
サーカスのテント小屋

笑いたいのに

泣きたくなった

サーカスが行ってしまう

夢だけがおいてけぼり

くるくる回る
あなたが見つけた

車輪のようなドライレモン

うた

うた

その音
空高く響く 口笛に似て。

誰かのために歌う 歌がある
はげましや 別離の

自分のために歌う 歌がある
さびしさや 孤独の

その音
胸に広がる 口笛に似て。

わたしのこころが
夕暮れを 染めはじめた
#詩

北極星

北極星

旅人は 星をたよりに歩むという

空にはたったひとつだけ 動かぬ星があるという

雨や雲が夜空をおおい

風が心まで揺らすような夜に

その星の名前しか知らぬ僕は

何をたよりに  進めばいいのか

鳥籠のような部屋のなか

塔の上でもないくせに

やたらと遠くに世界を感じる

ここでの暮らしは

平和だし 穏やかだ

大空へと跳ぶことを

求めさえしなければ。

午後六時を知らせる

にごったチ

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夜がこっちに やって来る

午後7時を知らせる
時計の針

夕暮れの薄い空を透かす
レースのカーテン

たよりない私の足音を聞く
リビングの床

そういうものに
おおいかぶさるようにして

夜がこっちに やって来る

さがしもの

磨硝子(すりがらす)の向こう側
焦点を合わせず みつめる
なんだか とても たいせつなものが
そこにはあるように思えて

像を結ばせずに みつめたほうが
その ほんとう に
近づける気がして。

僕はぼんやりと暮らしているけれど、
なにもかにもを 諦めたわけじゃないよ

風の音に おびえる 朝も
雨の色に そまる 夜も

その奥のほう ずっとずっと奥にある
やさしい 飴色の

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もう少し

もう少し 甘くてもいいな
ミルクコーヒー

もう少し 明るくてもいいな
雨降り日曜日

もう少し もう少し

もう少し やさしくて いいな
肩に力入れて歩く わたしの歩幅
#詩

机の真ん中の引き出しの中の

あいまいな記憶に
イメージだけを重ねて
ピンボケしたスナップ写真のような
そんなものがはいっている

机の
真ん中の
引き出しの
中の

誰かがごっそり捨てたとしても
たいして困らず、もしかしたら
気づくこともないかもしれない

机の
真ん中の
引き出しの
中の

必須かと言われれば必須でなく
ないならないですっきり片付く
だけど、なんだかそれも惜しくて

机の
真ん中の
引き

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重力

重力

重力
手すりのない階段
引き寄せられる
突き放される
怖さ、あるいは そこにあるもの。

「窓は少し開けておいて」
君の声、聞こえた気がした
秋の庭 木漏れ日のなかで

何か温かい飲み物を
喉をとおる液体に
何か温かい食べ物を
頬を膨らます個体に

それらに頼らないと
立ち直れない 今という時間が

重力に引っ張られ、突き放されて

顔をあげられず
#詩

泣く空、なでて

あわせた両腕が
お互いの体温の間で
小さくふるえる

うずくまって
肩をよせあって

床に映る自分の影と

終わりのない競争をしている

窓の外では

泣く空が

雨の音をたてて

5時を知らせるチャイムを

わたしの微熱をおびた体温を

そっとなでて

響かせている