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unknowntheworldstory
ゴォゴォと響け嵐の旋律よ
君に届けと願った。
僕はピコ、友達のナノと土星の輪っかで追いかけっこして遊ぶのが常でここは時間の概念がなくて疲れたら水蒸気のベットで眠ったり、星を眺めたり、宇宙チリのお菓子を食べたり氷を砕いて飴細工にしたりアクセサリーにしたり、自由気ままのふたりだけの世界だ。
おおよそ君たちの世界にも同じものが見えているみたいに思ってる。何故かって時々僕らは僕ら以外の気持ちを感じることがあって嬉しいだとか楽しいだとか悲しいだとかそれから怒りだとか寂しいだとか。
君たちとの間には硬い透明の膜があるから。触れ合うことのない世界同士なのだ。
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だけど君たちの感情はここに影響する。時々ね。例えば多いのが君たちにとっての特別な日、誕生日だとか、クリスマスだとか。記念日だとか。
重力なんてものは僕らには関係ないんだけどその時だけはこの世界はぐらぐらと揺れ天地が逆転したり上下左右ぐるぐる回りだして、沢山星屑が舞って、僕らは離れ離れにならないよう水素でシャボン玉を作りふたりで宇宙を旋回したりしてたんだ。
それはとても綺麗で楽しいんだよ!だけど君たちが悲しい時は僕らだって楽しんでばかりじゃなくてどうにか笑ってくれないかなんて思ったりしてる。
どれくらいそう過ごしていたろう。土星の裏側に向かって追いかけっこしてた頃ナノが空洞に落ちていなくなってついに離れ離れになった。
ナノが消えてしまって僕ははじめて君たちの感情の寂しいが理解出来たよ。ナノも同じように思ってるはず。いつかの特別な日に宇宙に放り出されたナノが舞い戻らないかと願ってる。じゃなきゃ僕は死ぬほどつまらない。
その日僕は土星のタイタン環でナノとよく一緒に弾いた木弦楽器を弾いてそのまま眠りこけてしまった。ガンガンと地響が聞こえて飛び起きた。特別な日が来たんだ。
だけどいつもと違う‥身を守る水素のシャボンはパンとはじけて破れた。激しい唸りと揺れが世界を歪める。このままじゃ世界丸ごと潰れて消えてしまう。そうこれは君の怒りだ。
僕はまだナノに会えてない。
どうにか諦めたくない。
僕はタイタン環の上に立ち木弦楽器を掻き鳴らし歌った。願うはこの世界が消えないように、そしてナノに届けと。君の怒りが消えてくれますようにと…
タイタン環の空洞に落ちてからピコと離ればなれになり宇宙を漂う毎日だった。つまらないピコが居ないと寂しい。適当に宇宙チリをつまみ食いしたり、彗星を眺めたりいつか土星に戻れるかなぁ。そのとき突如として天地が逆転して世界がぐらぐらと回りだした。僕にも解った。この感情は僕らの世界を壊す。粉々に。
どうしよう。どうしたらいい?
僕はいつもピコに頼ってばかりだったから…天体や宇宙が歪み亀裂が入るもう終わりだ。その時僕はこのうねりのなかで胸がキラリと高鳴るのを感じた。ピコが歌ってる。この瞬間ピコが歌ってるんだ!とそう確信した。
ぐるぐる回る体。回りながら僕にも出来ることはないかって咄嗟に星屑をふたつ手にとって即席カスタネットを作って必死に鳴らしてみた。ピコの音に合わせて。
そうしたらあたりの星に色が点いた。ピコと音と僕が鳴らした星屑が合わさって星がいろんな色になった。奇跡みたいに綺麗だ。まわりながら僕はピコと見れたら良かったのにと思った。
そうしたら地響がピタリと止んで僕は回りながらなんと土星に帰還していた。
ピコは必死の形相で木弦楽器を弾いていたが世界の回転が止んだので歌うのをやめて、それから笑っちゃうくらい素っ頓狂な幽霊でも見たような顔で僕を見た。
僕は星屑を振りまわしてピコに駆け寄った。僕たちはふたりして泣きながらまた会えた事か嬉しくて色とりどりの星をふたりで見れた事に喜んだ。
あれ?この猫たちなんかよく見たら面白い。楽器なんか持って猫なのにめちゃくちゃ威勢いいし2人並んでたっけ?あはははは。なんだか笑えてきた。小さい時に両親に買って貰ったスタードームこんな綺麗だった…?懐かしさが込み上げ怒りが小さくなっていく気がする。
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あはははは。ピコとナノもふたりで笑いあっている。
君とピコとナノの小さな世界は互いに関連し浸透しあい連鎖していく。
あははって歯をみせて笑う日々に
世界に祈りを。
いい歯のために。は平和な世界のために😸