金平糖みたいな短編集【ヴィオレッタの尖骨】
図書館にて。黒地に儚げで美しいタッチの絵にゴールドの文字。「ヴィオレッタの尖骨」というなんともミステリアスなタイトル。下調べなしに本を借りることがなかなかない私ですが(図書館が家から遠くはずれを引きたくないので)ページを捲らずに借りてしまいました。
一枚、ページを捲ると、ゴールドで印字されたタイトルの向こう側に四つの短編小説のタイトルが透けています。私はこれを見た瞬間に、この小説絶対好きだ…と確信しました。というか、買ってしまいたい、と思いました。
結論から言うと、その期待は裏切られませんでした。私のどタイプ小説でした。この表紙が好みの人にとってはお気に入り小説の仲間入りをすること間違いなしだと思います。
全体的に、閉塞感があって儚くて薄暗くてとても甘い雰囲気が漂っています。どこかファンタジーなエキスも感じられ(四つ目は少々生々しさがあり驚いてしまいましたが)少女同士の物語がとても繊細に描写されていて、好きな表現や気に入った一文を書き出していたらノートがいっぱいになってしまいました。
例えるなら、金平糖みたいです。甘い、と言っても、チョコレートまみれのドーナツみたいなしつこくて力強い甘さではなくて、金平糖みたいな、そこまで甘すぎるわけじゃないのに、一つ口に入れれば、下の上で溶かし切った後も甘ったるさが残っているみたいな。金平糖って口に入れた瞬間は、まず初めに硬い突起が下に触れますよね。その僅かな棘のようなものが金平糖を美味しくしていると思いませんか?そんな棘的要素もこの短編集には感じられました。それから、金平糖ってあんなに色とりどりのかわいらしいものが瓶にぎゅうぎゅうになって詰まっているじゃないですか。そこも、この物語の閉塞感と重なる気がしました。
四つの物語はどれも素敵で私の好みでしたが、個人的にはヴィオレッタの尖骨が最も好きです。光のような声で歌う少女と、人を癒す冷たい水のような音色のヴァイオリンを弾く少女と、「危うくて脆くて自分の綺麗さに気づいてない」少年が登場します。(私はこういう少年の出てくる話が大好物です)程よいダークさと、夢の中にいるような気分にさせてくれるストーリーにうっとりしました。
ぜひ皆さんに読んでもらいたいので、物語の中身についてはあえて触れないようにしておきます。
雨上がりの夕日をこんなに美しく描くだなんて…宮木さん恐るべし、他の作品も読みたくなってしまいました。