ハツゐの怪談奇談

作家・郷土史家。学芸員(人文系)資格保持。 平日都内で勤務する傍ら、休日は地方の民俗伝承について調査・研究していますが、偶々採集した不思議な話をここでは書いています。 「土着怪談シリーズ」創作大賞応募中。 掲載中の作品は基本一話完結の短編ですので、お気軽にお立ち寄りください。

ハツゐの怪談奇談

作家・郷土史家。学芸員(人文系)資格保持。 平日都内で勤務する傍ら、休日は地方の民俗伝承について調査・研究していますが、偶々採集した不思議な話をここでは書いています。 「土着怪談シリーズ」創作大賞応募中。 掲載中の作品は基本一話完結の短編ですので、お気軽にお立ち寄りください。

最近の記事

「渓流の王様 イワナ」の記事を公開しました。 https://note.com/natty_sorrel3593/n/n62b3b5e9c770

    • 都内ハゼ釣行vol1 「佃堀」の記事を公開しました。 https://note.com/natty_sorrel3593/n/nb9a50667b749

      • 「大阪くらしの今昔館 レポ」の記事を公開しました。 https://note.com/natty_sorrel3593/n/n033aa51d6162

        • 土着怪談 第二十三話「ブリキの金魚」

          はじめに 皆さんはブリキの金魚をご存知だろうか。 最近ではめっきり見なくなったが、少し前までは昔ながらの駄菓子屋や縁日の露天に並んでいるのを見かけることも少なくなかった。 調べてみると、このブリキの金魚は明治末期に発祥し、今現在もネットで購入することができる。 たい焼きのような丸っこいフォルムと、色鮮やかな赤い魚体。大きい黒目とまるで顰めっ面のような「への口」が愛らしい。 ブリキ特有の艶も相まって水に入れると、まるで生きている魚ような光沢が浮かび上がる。 筆者が高校生

          「掛川百鬼紀行」小説部門 応募作品 「掛川奇談」(上) ヤマメ編

          はじめに 「いいとこだよ、掛川は。」 そう言って、友人の米田は手酌で冷酒をおちょこに注いだ。 初夏の東京新橋、路地裏にある古民家風の居酒屋は多くのサラリーマンでにぎわいを見せていた。 友人の米田は、掛川の隣である静岡市の出身で、筆者とは会社の剣道部で知り合った仲である。 互いに飲兵衛という共通点もあり、月に一度はこうして勤務地の近くで酒を酌み交わしている。 18時半から飲み始めて2件目、時計の針は21時を回り、ほろ酔い加減の中で筆者が話を切り出した。 「あれ、掛川っ

          「掛川百鬼紀行」小説部門 応募作品 「掛川奇談」(上) ヤマメ編

          やらかしました…泣 静岡県掛川市で行われる「掛川百鬼夜行 第三幕」小説部門に応募しようとコツコツ準備していたのに、締切日時1日ずれていたようで、提出叶わず…。 かなりショッキングです( ; ; ) せっかく書いたので、noteに投稿させていただきます…。

          やらかしました…泣 静岡県掛川市で行われる「掛川百鬼夜行 第三幕」小説部門に応募しようとコツコツ準備していたのに、締切日時1日ずれていたようで、提出叶わず…。 かなりショッキングです( ; ; ) せっかく書いたので、noteに投稿させていただきます…。

          都市怪談 第三話「タクシー」其壱(上)

          はじめに 車社会であった私の地元ではほとんど使ったことがなかったが、都内で働き始めてからは「なるほど便利で、使い勝手が良い」と深く納得した覚えがある。 都内では都心をはじめ各方面に緻密な公共交通機関が配置されており、比較的安価な値段であちこちへ足を伸ばすことができる。 平日の出勤・通学や休日のレジャーまでそのほとんどをそれら電車・バスなどで生活することも不可能ではない。 一方で、ついつい酒が進んだり話が弾んだりして終電を逃してしまったりすると、筆者はよくタクシーを利用

          都市怪談 第三話「タクシー」其壱(上)

          都市怪談 第二話「居酒屋」(下)

          前回の続き 汐留の大手企業に勤める竹内啓太(仮名)さんが入社して2年目に体験した不思議な話。 名古屋から上京した竹内さんは、仲の良い同期4人と毎週のように新橋を飲み歩いていた。 2年目のある初夏の火曜日、いつものようにエントランスで集合し19時前から新橋で飲んでいた。 23時を回る頃には3軒目を巡り、そろそろ最後の一軒にしようかと千鳥足でフラフラ彷徨っていると、見知らぬ路地裏に古い暖簾を掲げた割烹やを見つける。 恐る恐る入ってみると、カウンターを構える小綺麗な席と、

          都市怪談 第二話「居酒屋」(下)

          都市怪談 第二話「居酒屋」(上)

          はじめに 都市部で働く人々にとって、オフィスの次、いや同じぐらい、もしかしたらそれ以上に欠かせない場所といえば、「居酒屋」であろう。 ある時はそこで仕事について語りあい、ある時はそこで仕事のノウハウを学び、またある時は熱が入るあまり口論になってしまったり…。 働く人々にとって「居酒屋」とはオアシスのような場所であり、第二の職場のような場所でもある。 かくいう筆者も、お酒には目がなくついつい仕事終わりには友人や会社の同僚と居酒屋を訪れてしまう。 決まったお店に行くのもい

          都市怪談 第二話「居酒屋」(上)

          都市怪談 第一話「暗闇のオフィス」

          あらすじ はじめに 読者の方々は、残業などで暗いオフィスに一人残されたことはあるだろうか。 オフィス規模の大小に関わらず、夜のオフィスというのは、昼間は人が絶え間なく往来するオフィスとの違いに少し怖さを感じる方もいるのではないだろうか。 特に、日比谷・丸の内・霞が関など、一般的に都心のオフィス街と呼ばれるエリアは、オフィスだけでなく街全体も夜になると人気を失い、さながらゴーストタウンのように静けさに包まれる。 新宿・池袋・渋谷などの繁華街に位置するオフィスとは違い、静

          都市怪談 第一話「暗闇のオフィス」

          土着怪談 第二十二話「夢かうつつか」(下)

          はじめに 筆者が、土着怪談を執筆してから1か月。 今から一週間前より、不思議な夢を見るようになってしまった。 最初の夢では、自宅のマンション前にある駐車場で、夜中2時に雨の中真っ赤な唐笠をもって佇む何か。 次の夢では、玄関から入ってきて、部屋の仕切り壁にぶつかって消えた化物。 まるで筆者の執筆を阻止するかのように、次々と襲い掛かる不気味な夢に、とうとう疲れ果ててしまった。 夢かうつつか(下) それからというもの、食事がめっきりと喉を通らなくなった。 私は人一倍食欲があ

          土着怪談 第二十二話「夢かうつつか」(下)

          土着怪談 第二十二話「夢かうつつか」(中)

          はじめに 筆者が経験した、夢の不思議な話。 今から一週間前、夢を見ていた。 夢の中では、夜中2時を回るころ、ふいにインターホンが鳴り、目を覚ます。(夢の中で) インターホンを覗いてみるものの、画面越しの玄関には誰も映っていなかった。 再び夢の中で眠り始めると、視点が切り替わり、エントランスを出た目の前にある駐車場に浮いていた。 3mぐらいの上空にフワフワと浮かんでいた私は、雨が降りしきる駐車場で時代にそぐわぬ不気味な赤い唐笠をさした謎の人影を目撃する。 ただ夢の中の出来事で

          土着怪談 第二十二話「夢かうつつか」(中)

          土着怪談 第二十二話「夢かうつつか」(上)

          はじめに 「夢」というものは不思議なもので、実は今もそのメカニズムが完全に解明されているわけではない。 土着怪談 第十八話「下の歯抜けたら、屋根さ投げろ」でも触れた、日常に潜む俗信だが、この「夢」についても例外ではない。 例えば、筆者の故郷である南東北の山間集落では、夢に関するいくつかの俗信が未だに信じられている。 ①魚を取る夢は良くない。 ②いい夢は人に話すな、夢見が悪いときは人に話せ。 ③知人が夢で事故やケガをしたら、本人に伝えて注意を促す。 この3つは筆者も

          土着怪談 第二十二話「夢かうつつか」(上)

          土着怪談 第六話「白猿」(下)

          はじめに 筆者の大叔父、喜太郎爺さんとその息子、克人(カツヒト)さんが30年以上前に体験した不思議な話である。 喜太郎爺さんは無類の釣り好きで、息子のカツヒトさんを連れてはよく魚釣りに出かけていた。 カツヒトさんが小学5年生の夏休み、地元の川でマス釣り大会があり、漁協の組合員であった父喜太郎爺さんと2人で参加する。 釣り竿に閑古鳥が鳴くカツヒトさんと対照的に、喜太郎爺さんはものの5分で魚籠をいっぱいにしてしまった。 家に帰り風呂に入っていると、窓の外から山から下りてき

          土着怪談 第六話「白猿」(下)

          土着怪談第十九話「K沼の大蛇伝説」其弐(下)

          はじめに 筆者の地元、南東北のとある山間の集落では、山奥深くに佇む秘境の沼に奇妙な伝説があった。 大蛇と猟師が登場する、沼にまつわる伝説である。 筆者は十数年前、ひょんな事からこの伝説に関する民俗調査を行うこととなった。2か月に及ぶ調査研究を経て論文を執筆した後、ようやく現地調査ができる季節の秋が到来し、満を持して池へ向かうこととなる。 現地調査に同行するのは、土着怪談シリーズで御馴染みの平吉爺さんと、研究にあたり助力いただいた郷土史家の政義さんだった。 当時で既に7

          土着怪談第十九話「K沼の大蛇伝説」其弐(下)

          土着怪談 第二十一話「鬼火」

          はじめに 読者の方々は、「人魂」を見たことがあるだろうか。 別名鬼火とも呼ばれ、夜の墓場に行くと火の玉が浮いていて、死人の霊魂が浮き彷徨っていると語られる代物である。 昨今では、「ゲゲゲの鬼太郎」のアニメ第6期や「妖怪ウォッチ」など、妖怪をモチーフにしたメディア作品も多く見られ、作品を通して知った人も多いと聞く。 また鬼火に類似する事例としては、「狐火」があげられる。 こちらも夜分に怪火を見かけたという事例であるが、この狐火は一列に火が消えたりついたりすると言われ、

          土着怪談 第二十一話「鬼火」