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土着怪談 第二十二話「夢かうつつか」(中)

はじめに

筆者が経験した、夢の不思議な話。
今から一週間前、夢を見ていた。
夢の中では、夜中2時を回るころ、ふいにインターホンが鳴り、目を覚ます。(夢の中で)
インターホンを覗いてみるものの、画面越しの玄関には誰も映っていなかった。
再び夢の中で眠り始めると、視点が切り替わり、エントランスを出た目の前にある駐車場に浮いていた。
3mぐらいの上空にフワフワと浮かんでいた私は、雨が降りしきる駐車場で時代にそぐわぬ不気味な赤い唐笠をさした謎の人影を目撃する。
ただ夢の中の出来事であるため、この唐笠をさした人影がどんな特徴をしていて、誰だったかを少しも覚えていない。
やがてこの映像が続いた後、ぷつりと暗転し、私は目を覚ました。
時計を見ると、夜中3時をちょうど回ったころだった。

起きるのにはまだ早い。

そう思った私は再び布団に潜り込んだ。


夢かうつつか(中)

不思議な夢を見てから、2日後。
再び私は不思議な夢を見る事となる。

夢の中ではこの間と同じようにまた、ベッドの上でスヤスヤと寝ていた。
それを俯瞰するような視点でずっと宙に彷徨っている。

慣れない感覚に、嫌気がさした私はなんとか起きようと手足をジタバタするが、一向に目は覚めず、宙にフワフワと浮いたままだった。

バダンッ。

いきなり玄関の扉が勢いよく閉まる音がした。

不用心な話だが、私はオートロックのエントランスにかまけて、しばしば玄関の鍵を開けっ放しにしたまま寝ることが多かった。

夢の中でも玄関の鍵は開けっぱなしだったようで、扉が勢いよく閉まった。

おかしい。鍵は開けているが、玄関のドアは開けているはずがない。

私の部屋は一般的な1Kの間取りで、玄関からまっすぐ廊下が伸び、扉で仕切って8畳の居室となる。
宙に浮いたまま、じっと廊下と部屋を仕切る扉に視点を集中する。

やがてドタっ、ドタっと一定の拍での足音が廊下から聞こえてきた。
まるで片足を引きずっているような音だった。

仕切り扉の曇りガラスの向こうに意識を集中する。
曇りガラスには、徐々に人影がぼんやりと映し出されていく。

短い廊下もおそらく半分まで差し掛かった。
身動きが取れない私はどうすることもできないまま、ただその人影に身構えていた。

ドタドタドタッ!!

途端、とけたたましい足音が廊下に鳴り響き、その人影がバァァァンとものすごい音を立てて扉に衝突した。

思わず飛び起きると、夢から覚めていた。

ハッハッと息が荒い。
まだ心臓がバクバクと耳の奥で鳴り響いていた。

時計を見やると夜中の3時。
妙な視線を感じ、布団の上からおそるおそる廊下につながる仕切り扉の曇りガラスに目を向ける。

そこには誰もいなかった。

しかし、あの仕切り扉は中途半端なところで開かれ、まるでさっきまで誰かが開け閉めしていたようにゆらゆらと揺れている。

何かが扉にぶつかった途端、夢から醒めた私だったが、ぶつかった一瞬、その何かが目に焼き付いてしまった。

曇りガラス越しではっきりしなかったが、四方八方触手のように伸びる黒髪、不気味なまでに真っ白な顔、玉石のようにらんらんと輝く赤い目、耳まで裂けた口に不揃いな歯を持つ女だった。

否、女のような何かだった。

寝汗でぐっしょりと濡れた布団にくるまりながら、必死に目を瞑った。
どうか、早く朝になってくれ。そう願いながら私はまた深い眠りについた。

続く。

(1,365文字)

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