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幸福論......と呼ぶにはおおげさですが。

このところ、SNS上では、ブックカバーチャレンジが流行っていますね。
そのお陰で、読みたい本とザクザク出会っています。

そこで私も読書にちなんだ文章を載せたいと思います。
2014~2016年まで、転勤で横浜にて暮らしていました。
これはその頃書いたものです。前置き部分は省略して掲載します。

水村美苗氏は、ご家族の転勤で長いことアメリカで過ごされたそうですが、実は、フランスにも留学されていて、フランス語も大変流暢だと聞いています。また辻邦生氏は、高名なフランス文学者。
そんなお二人について書いた文章です。
お時間あるときにでも!
(写真は、横浜時代へのオマージュを込めて、氷川丸!)

先日は、パリに居る時から気になっていた水村美苗氏の、『日本語で書くということ』 と、『日本語で読むということ』、さらに、辻邦生氏との書簡集、『手紙、栞を添えて』の三冊を入手したので、どっぷりと水村美苗さんの世界にはまっています。
水村美苗さん、やっぱりいい!

水村氏は、とにかく漱石などの日本文学がお好きとのことで、エッセイにはそれらの分析や思い入れが描かれている。それを読んでいると、日本文学に余り反応したことない私でも、読んでみたくなります。

水村氏、そして辻邦生氏の話を読んでいると、その知性も素晴らしいのですが、「こんなに好きなものがあって良かった、そしてその喜びを分かち合える人がいて良かった、さらには、それを創りだすこともできて良かった」、という、彼らの幸せを感じます。

「ベッドに寝転がって、おせんべいかじりながら漱石を開くと、実際にはそこがアメリカであろうと、自分のマンションの一室であろうと、頭の中は、大好きな時代……七輪があって、着物姿のお延が佇む、といった世界に浸れる」、と、水村氏は漱石を読む喜びを語ります。
その幸福感は、読書が好きな人なら大なり小なり似た体験をしたことがあるでしょう。

辻邦生氏は、学者だった奥様と、寝枕で芭蕉の歌の連想ゲーム(だっけ?)を楽しんだり、と、凡人とは違うレベルで文化に親しんでらして、なんと贅沢なことだろう、と思いました。

幸福、贅沢、とは、こういうことを指すんだ、と今、あらためて実感を持って確認した思いです。

というのも、いつの間にか、「幸福、贅沢 ≒ お金持ち」、という風に捉えるようになっていたようです。
また、金持ちになる=人生の勝者、という概念に呑みこまれかかっていたよう。

金持ちになれなかった自分は敗者とは思わなんでも、「ちっ、この程度の人生かい」と、心のどこかで自分を嘲笑う気持ちが潜んでいないとも言えない。

でも、水村美苗さんのエッセイや辻邦生さんの話を読んでいると、彼らにとっては、お金なんて、ほどほどあれば御の字で、自分の知性をストレッチさせてくれるような本やそれにまつわる人々と、どれだけたくさん出会ったか、という想い出が人生の宝物のようです。
そして、『手紙、栞を添えて』では、お互いの「想い出カード」を競うかのように交換しているのが微笑ましく、羨ましく。

幸せとか贅沢とかって、きっと、好きなものを知ってって、それに没頭することができて、そうすることによって自分が高められることを感じている状態なのかな。

私の、「没頭できるほど好きなもの」はなんだろう……。
今は子供かな。子猿たちが元気に成長している様子を見ると、何とも言えない喜びを感じます。そして見返りを求めない愛情を幾らでも注げる自分がいることに「すごいじゃん」と思う。
親だから当たり前のことですが、ちょっと前まで自分のことしか考えない若人だったことを思うと、私も進歩してるのかな、なんて思うのですよ。

あとは、読書、書くこと。
でも好きなのにマジメに没頭していない!
もっと読もう、もっと書こう。

皆様も、素敵な初夏を過ごされますよう……。

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