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【連載恋愛小説】これを愛というのか、忘れたいと思うのか

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間も無く50歳になる、桜井貴哉。1人の女性の出会いから、心を無くしていた自分に気がつき、心を取り戻していく。愛するほど、憎悪も味わうことを初めて知る。切なく優しい愛のカタチ。
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#愛

【恋愛小説】これを愛と言うのか、忘れたいと思うのか(3)

【恋愛小説】これを愛と言うのか、忘れたいと思うのか(3)

 日曜日、朝早く目が覚めていつものようにコーヒーを飲みながら、落ち着かない数時間を過ごしていた。こんな時は、妙に時間がゆっくりと進む。

 待ち合わせ場所に、だいぶ早く到着してしまい、近くのコンビニでタバコを吸っていると、雨宮が歩いている。

 水色シャツをゆるく着こなして、黒のパンツとスニーカーというラフな格好。

 初めて見る私服姿を目で追ってしまう。

 急いで車に乗り込んで、雨宮とピッタリ

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【恋愛小説】これを愛と言うのか、忘れたいと思うのか(2)

【恋愛小説】これを愛と言うのか、忘れたいと思うのか(2)

 俺との接点は、同じ空間に居ることだけ。方針は、課長へ伝え、直接指導も課長の役目だ。

 俺にとっても雨宮は、大勢いる部下の1人に過ぎないし、雨宮にとっても俺は話しかけずらい相手でしかないだろう。

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【恋愛小説】これを愛と言うのか、忘れたいと思うのか(1)

【恋愛小説】これを愛と言うのか、忘れたいと思うのか(1)

 ただ愛しただけ。

 彼女に俺の気持ちを伝えた訳でもない。
 彼女の好きなものも知らない。

 それでも、俺は15年の結婚生活を手放した。

 そこそこ大きい商社の営業部長。大学を卒業してかれこれ勤続30年以上だろうか。

 男が離婚しても誰も気が付かないもんだな。
 手続き上、人事の一部の人だけにしかわからない。

 周りに隠しているつもりも全くない。
 紙切れ一枚でいつもの日常に変わりはなか

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