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元食品メーカー従業員が思う、日本の製造業で不正が起こる理由
それは「不正ギリギリ」「ちょっとぐらいの不正」の方が評価されやすいシステムが存在するから、だと思います。
はじめに
日本の製造業で、不正のニュースが続いています。
特に、日本の製造業を代表するトヨタグループの、しかもグループの原点である豊田自動織機で発生した不正は、さすがに「正直終わっとる…」と思わざるを得ないところがあります。
かくいう私は、食品メーカー、しかもジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー(JTC、伝統的な日本企業)で働いてきました。
それだけにトヨタグループの不正はよその会社のこととは思えず、こういう不正はどこの日本企業でも起こるだろうなあ、と思ってしまいます。
不正ギリギリ編
機能しないダブルチェック
不正をしないようにチェックを念入りにすればいいのではないか。
しかも、二人以上でやればミスはより防げるのではないか。
というわけで、食品メーカーはダブルチェックが大好きです。
入退場管理から、製品の品質管理まで、さまざまなチェック表が「二人以上で行うように」設定されています。
ところが、昨今は人手不足。食品メーカーの現場には「そもそもチェックする人を二人も工面できない」という状態があります。
それでは、どうやってチェック表を二人で記入するのか。
まず現場作業者が一人でチェックをします。事務所へ帰った後から、責任者の人が現場を何も見ずにチェックマークだけを入れます。
こうして「機能しないダブルチェック」が横行してしまうんです。
ガチャガチャに回すジョブローテーション
「ガチャ」状態になっているジョブローテーションも、企業不正が起こる原因だと思っています。
定期的なジョブローテーションを実施する理由として、「多くの業務を経験することで、人材成長を促す」みたいなものが挙げらます。
私は「計画的に行われるジョブローテーション」ならいいと思うのですが、
能力が抜群の社員を幹部候補として育てるため、いろいろな部署を上べだけ経験する
能力がイマイチな社員を、部署をたらい回しにして、たまたま能力を発揮する部署があったらラッキー
大概どちらかのパターンに思えています。
かつての終身雇用時代には「部署を移動するたびに、給料が上がっていく」状態だったので、従業員も転勤や転居になんとか耐えられていました。
しかし、給料の上昇が望めない食品会社で、優秀な社員が転勤を言い渡されたら「転居しても待遇が変わらないなら辞める」というパターンが増えていたように感じます。
共働きが多い現代、やっとこさ子どもを保育園に入れられたと思ったら転勤。やってられませんわ!という家族はいまだに多い印象です。
また、能力がイマイチな社員は、部署をたらい回しにされる過程で、経験を蓄積することができず、「ルールや法律をよく知らないまま仕事をして、知らないうちに不正」というパターンに陥ってしまうのです。
ちょっとぐらいの不正編
ローテーションの一方で、謎の「聖域」
ジョブローテーションする社員がいる一方で、「聖域」のように異動しない社員がいるのも、また問題に思います。
ノウハウが「聖域」の社員にしか蓄積されないので、「聖域」の社員が悪いことをしていても、ジョブローテーションでパッときただけの社員には、何が行われているかわからないからです。
転勤するような、期待される人材は転勤を機に辞めていく。
「聖域」のような社員の仕事がブラックボックス化して、誰も知らないうちに不正を働いてしまう、そんな構造も見られます。
下々のせいにしがちの不正対策研修
企業内で不正が起こると、決まって「社内研修」が行われます。
が、その場合の研修って「君ら下々が不正を働くから、我々上の人間が困っているんだよ」というスタンスの研修なんですよね。
上の人間が現場で働いていた時は、常にクリーンで清廉潔白だったということなのでしょう。
複雑すぎる社内ルート
社内に「承認フロー」や「通報フロー」があるものの、ルートが複雑すぎる・過剰に多い人が関わることで、不正が発覚しにくいこともあるようです。
ルートを通るうちに不正がもみ消される
通報フローに過剰に多くの人が関わると、フローの下流の方、つまりは責任や権限が多い責任者ほど、さまざまな通報が集まってくることになります。
具体的には、
一般社員 → 係長 → 課長 → 部長 → 本部長 → 担当役員 → 代表
みたいなルートになるでしょうか。
すると責任者(特に課長や部長)は多数の通報に忙殺されてしまい、「こんなこと一々対応していられない」「現場でなんとかしろ」という風土になってしまいがちです。
私も現場に近い係長は取り合ってくれたものの、課長や部長に「よくあることだ」といってうやむやにされた事例はよくありました。
これ本部長くらいになると、うやむやにされたことを知らないので「オレは聞いてない」ってことになるんですよね。
そう「現場がやったことです」というフレーズはこうして生まれるのです。
ちょっと不正・不正ギリギリの方が手っ取り早い
思い返してみれば、食品開発の現場も、不正が生まれやすい状況だったように思えます。
食品開発の現場では、品質事故防止のため、開発プロセスというのはキッチリルール化されています。
いくつかの会議を経て、採算性・生産性・安全性さまざまな観点から問題ないことを確認しながら、開発を進めていきます。
が、一方で今の世の中とにかく「スピード」が求められます。
お客さんから話を取り付けてくる営業担当から見れば、そんな開発プロセス待っていられないわけです。
そこで営業担当は、定められた開発プロセスなど知らず(いや、知らないふりをして)、お客さんと納期の約束を割と無茶目でとりつけます。
次に営業担当がやることは、社内交渉…、ではなく、役員を味方につけることです。
昨今の厳しい経営環境下にあっては、会社役員は少しでも売り上げの数字が欲しい。
すると、営業担当と役員の利害が一致して、「トップダウン式」に開発スピードを上げるよう指示されるわけです。
私はよく社内会議で「開発スピードを上げろ!」と発破をかけているシーンをよく見かけました。が、この場合開発スピードを上げるために人や設備が追加投資されることもなく、また、他の仕事の納期が変わることもありません。単に「鞭を打つ」だけなのです。
それじゃあ、正規の開発プロセスに定められた会議は…、というととにかくドタバタと「やった感」だけ出して、終わらせてしまいます。だから、採算性だったり安全性だったりに、ついつい見落としが出てきてしまうのです。
最終的に、製品がリリースされて、売り上げが上がれば…、評価されるのは営業担当です。すると「ちょっと不正・不正ギリギリの方が、評価されるんだ」という社内ムードの完成です。
企業不正はちょっとやそっとじゃ無くならないと思う
企業不正は、社会に深刻な影響を与える問題であり、その根絶は長年の課題となっています。
JTCに限らず、多くの企業で「不正ギリギリ」「ちょっとぐらいの不正」の方が評価されやすいシステムが存在し、それが不正行為を助長している側面も否定できません。
じゃあ不正がなくなるようなシステムはないのか?と言われるとううむ…、となってしまいますね。
企業不正がなくせるのか、AI (Gemini)に聞いてみました。
「一人ひとりの意識改革」「社会全体の取り組み」で、より倫理的で健全な社会を実現することは可能、とAI (Gemini)は言っています。
果たしてそうなんでしょうかと、私人間サイドは思うわけです。
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