偉大なる言葉の発明家:シェイクスピアの魅力を語る
こんにちは♫
今回いよいよ私の専門分野、シェイクスピアの魅力を語りたいと思います‼︎
文学に苦手意識がある方、シェイクスピア全く知らないと言う方も楽しめるような記事になっています(hopefully🌱)
実は大好きだからこそ、どう書いたら専門的に研究していない方にも魅力がそのまま伝わるだろうか…などと考えてしまってなかなか筆が進みませんでした。
シェイクスピアは「文豪」だとしばしば称されますが、具体的にどう文才があるのか知らない方が多いと思います。
この「魅力を語るシリーズ」では、彼の言葉の美しさ、洗練された文体、効果的に駆使された修辞技巧をお伝えしていけたらと思います。
多くの方が理解できるように、あまりにも専門的な用語を多用したり学術的な批評をしたりなどはこの記事ではしませんので安心してくださいね。
Welcome to the Shakespearean world!
シェイクスピアって誰?
ルネサンスって??
「古典古代」とは、古代ギリシア・ローマを指しており、その文化や哲学・医学・修辞学などの諸学問、神話などがルネサンス期になって再び注目され、研究なされます。
ルネサンス期前の中世までは、ヨーロッパ世界は思想・芸術・文化などにおいてキリスト教、つまり神が中心でした。
“神様中心”の例としてとてもわかりやすい例が次の The Wheel of Fortuneです。
右に立っている女性が古代ローマの運命の女神フォーチュナです。彼女が車輪を無作為に回し、人間の運命を翻弄しています。
つまり、人の運命は自らの意思ではなく神様によって決定づけられているという考え方が中世では一般的であったということがわかります。
(シェイクスピア劇には運命の女神への言及が多くなされるが、時代設定が古代、あるいはルネサンス以前の時代であることや、ルネサンス期でもモティーフや寓意として広く用いられていたことが理由として挙げられる。そもそも、ヒューマニズムは古代の教養(歴史・文学・哲学・修辞学、文法など)の研究を指すため、その意味ではシェイクスピア劇もヒューマニズム的であると言える。)
そしてそれが次第に「人間」中心になってくるのです。
下のタイタンによる『聖愛と俗愛』という絵画でみると非常にわかりやすいと思います。
左右の女性、どちらが聖愛でどちらが俗愛だと思いますか?
このように思いませんでしたか??
実は真逆なんです。
左の衣服を身に纏った女性が俗愛を表しており、右のほとんど裸に近い女性が聖愛を表象していると考えられています。(この絵画の解釈は批評者によっって諸説ある部分もあります)
創世記のアダムとイヴのお話をご存知の方は想像できたかもしれません。
イヴはエデンの園にいたときは裸でしたが、禁断の果実を口にしエデンの園を追放されて地球へ放り出される時、無垢さを失い羞恥を感じるようになります。
つまり、人間の本来の姿(裸)=神聖なるものであるという考えがヒューマニズム運動で注目されるのです。
どうでしょうか、ルネサンス期の文化や思想の中核を感じ取っていただけたでしょうか。
シェイクスピアのレトリック(修辞技巧)
みなさんシェイクスピア作品の中でも『ロミオとジュリエット』ならなんとなくお話を知っている方が多いのではないでしょうか。
というのがざっくりとしたあらすじです。
ロミオとジュリエットが出会って初めて愛を伝え合い、キスをするシーンはとてもロマンティックで素敵です。
が、素敵なのはストーリーだけじゃないんです!!
原文を読むとその甘美さがより伝わるんです。
▼まずは原文をご覧ください。
▼日本語訳
(こちらの訳本を参考にしています。)
①まずは1行ごとに見ていきましょう。
なんとこのキスシーンはソネット形式(14行からなる抒情詩の形式)で書かれているんです!
シェイクスピア風ソネットは、1行のなかで「弱強5歩格」と呼ばれる形式になっています。音節が弱強交互になっていて、その組み合わせが5回繰り返されています。
例:And palm to palm is holy palmers' kiss.
(強く読む部分を太字で表しています)
※厳密に数えるとズレる文もあるが、当時の発音と異なる可能性があるため誤りであるとは断定できない。
②次に文末の太字部分に注目!!
韻は上から abab cdcd efef gg のように踏まれているんです。
(a: hand b:this a: stand b: kiss のようにハンドとスタンド、ディスとキスが押韻しています)
最後は2連続同じ音で韻を踏んで(カプレット(二行連句)って言います♫)14行でソネットが完成したタイミングで2人が初めてのキスを交わすのです!!!
しかもこのカプレット、ジュリエットとロミオそれぞれのセリフになっているんです!
まずジュリエットが sake (セイク)と言い、次にロミオが take (テイク)と言って同じ韻を踏み二人が一体化し、ここで14行のソネットが完成し、キス。
なんて美しいのでしょう・・・・
この詩形の美しい効果に加え、セリフの内容も比喩を巧みに用いて表現されているため非常に秀麗なんです。
ロミオを巡礼者に喩えていますが、なんで巡礼者のことを英語で "palmer" というかご存知ですか?
最大の巡礼地イェルサレムは温暖なところで、巡礼しに行った記念にヤシの葉 (palm) を持ち帰ったことから巡礼者のことを "palmer" と呼ぶようになったとか。
そしてここでは巡礼者の掌 (palm) を唇に喩えています。同じ "palm"でも何重にも意味を重ねるのがシェイクスピアの得意技です。
お祈りをする際、手と手を合わせますが、それを口づけと重ね合わせています。
・・・とこれ以上話すとかなりマニアックな領域に達してしまって読者の方々を置いてきぼりにしてしまいそうなので一旦STOPしておきます。
制限された詩形の中に、美しい言葉遊びを入れてさらに効果を強める…そしてその詩形を利用してロミオとジュリエット2人の一体感を生み出すセリフの当て方…感服ですね。
******************
シェイクスピアの魅力を語る第1弾は以上にしたいと思います♫
「シェイクスピアの英語って難しい、今の英語と違いすぎてわからない」
って思っていた方も多いと思います。
(実際アメリカ人やイギリス人の友達にもそのように言われたことがあります…笑)
ちょっとでも多くの方にシェイクスピアの言葉の美しさが伝わってくれればと思います✨
Thank you for taking a trip to the Shakespearean world with me!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?