誰かの”困った”にどう寄り添うか。トイレの設備をきっかけに、1日の大半を過ごす場所で、どんなモノやコトが大事なのかを考える
みなさん、こんにちは!わたしの暮らし研究所のさわみーです。
先日渋谷QWSにて行われたイベントレポをシェアします!
LAQDAプロジェクトは、いろんな企業の方を巻き込んだプロボノプロジェクト。今回は、わたしたちにお問い合わせをいただいたNEWPEACE DEIBチームのワイン エリカさんが記事を書いてくださいました!
わたしたちの活動について
わたしの暮らし研究所では、2019年から企業さまにご協力いただき、トイレへの生理用品設置の実証実験を行ってきました。
2019-2020年の弊社調べの調査では、99.5%の女性が「会社のトイレに無償で使える生理用品があったら、便利だと思う」と回答をしています。しかし、企業における生理用品の設置設備はというと、決して十分とは言えないのが現状です。
生理用品設置の導入希望者の声をひろい、実現するには、さまざまな立場の協力者の方が手を取り合い、共にビジョンを描いていくことが必要不可欠です。
従業員の声を実現したいと考えるダイバーシティへの強い意思を持つ企業
衛生的に生理用品を補充・保管可能で使用者が1枚づつ取り出すことのできる容器の開発者
導入の承認をするビルのディベロッパー、オーナー、管理事業者
生理用品メーカー
イベント開催レポート
今回、ダイバーシティ&インクルージョンにご興味をお持ちの方、みんなが働きやすい職場環境でお悩みの方などをお招きして、どうしたら”困った”に寄り添えるのか?ということをお手洗いを起点に話し合うパネルディスカッション、全員参加型のディスカッションを開催しました。
司会・ファシリテーター
🎤 メインセッションのご紹介
セッションの様子
参加者を巻き込んだクイズから始まったメインセッションでは、生理用品の起源や、日本で初めて販売された使い捨てナプキン海外から40年間もの遅れをとっていたこと、世界で初めての生理用品ディスペンサー(自動販売機)は100年前には存在していたことなど、多くの参加者にとっては初めて知ることが多く、驚く声が聞こえてきました。
自分自身が行動を起こさなければ、トイレットペーパーと同じく、当たり前にお手洗いに生理用品が設置されている未来は決して訪れないと問題意識をもち、わたしの暮らし研究所をスタートした沢田のライフストーリーを紹介しました。
活動を進める中で企業と共に行った実証実験では、生理管理アプリでの予測や体調管理に気を配っていても、生理の開始を100%予測することは本人にも不可能。実証実験を通して、突然訪れる生理や不正出血、消退出血を周囲に隠しながら、どう対処すればいいのか一人で悩み、業務に集中できないことを自己責任として責めている現実が見えてきました。
その調査結果をもって、生理用品の設置に踏み切る企業は、男性(ここでは解剖学的男性*1)が、設置までの意思決定に積極的に関与していたことが大きな発見でした。
🎤パネルディスカッション①のご紹介
パネラー
パネルディスカッションの様子
生理用品導入までの社内決裁フローでの障壁、生理用品設置時の社内での反応や使用率について共有してくださいました。また、設置後に現地に視察したところ業務特性上、業務時間内に複数回お手洗いに行くことができないため、夜用ナプキンの必要性に気づき昼用から切り替えたところ使用率に変化があったことなど、業種や役職という垣根を超えて、様々な気づきや示唆の意見交換がなされました。
参加者にとっても生理用品の設置には、1人でも多くの方の協力者が必要であることや、設置後にも自社の業務特性にあった運用や生理用品の選定も忘れてはならないエッセンスであるという気づきがあったのではないでしょうか。
🎤パネルディスカッション②のご紹介
パネラー
パネルディスカッションの様子
積極的に生理用品の導入を求めてアクションされるお2人に質問を投げかけました。
質問:自分から生理の話をしにくいと感じたか?
社員が生理に困っている話を耳にして、初めはそんなに大変なのかとひとつの意見として聞いていたが、親族とも話したところ、生理用品の設置やディスペンサーがあると便利だとわかり、必要性のニーズを確信した。
ビジネス視点でこの課題に取り組み始めたが、これまで生活や就労する中で、生理用品の問題に気づいていなかった自分自身に衝撃を受けた。親族とも生理について話したことがなかったことに気づき実際に話してみると、問題の根深さを知り、無視できないと感じた。
質問:生理用品の設置についてどのように社内に説得したのか?
辛いのに平常を装って働いていることが衝撃的だったので、困っている人がいるのであれば助け合おうというマインドで説得した。
福利厚生という観点では、全員が平等に享受できる内容ではないという意見もあったが、一部の人が困っているからこそ、無視できない課題であり、取り組まねばならないと粘り強く説得した。
生理用品の問題に取り組もうとする時、男性(ここでは解剖学的男性*1)にとっては自分自身が体験したことがない未知の事柄であることがハードルではありながらも、定量的データもしくは定性的な生の声を聞くことが、アライシップを発揮する契機になり得るという示唆のあるパネルディスカッションとなりました。
🎤グループディスカッションのご紹介
登壇者、参加者全員で生理用品の課題について、どの立場の方がどのようなアクションを起こせるか議論しました。
ディスカッション・ファシリテーター
ディスカッションの様子
2軸のマトリクスを使ったディスカッションではさまざまな意見が交わされました。
当事者/非当事者といっても、周期が一定の方やそうではない方、低用量ピルを服用している方や、更年期による症状がある方などグラデーションがあり、困りごとがまだまだあるのではないか?
生理用品の中には、使い捨てナプキン(羽付き・羽なし)やアプリケーター付きタンポン、月経カップ、吸水ショーツなど種類と吸水量の異なり、月経量にも個人差があるため、ヒアリングが重要。
ご自身を生理における非当事者だと認識しているとしても、アンケートがあれば回答する、周りの方にも声をかけるといった形でアライシップを表明することが可能。
社内にある生理における困りごとや潜在ニーズをヒアリングする場合は、場の設定や参加者の絞り込み、ラポール形成、秘密保持といった細かな配慮が必要。
盛りだくさんのイベントで開催時間は2時間超えでした。イベント終了後も熱気は冷めることなく、多くの方が活発に意見交換をされている姿が印象的でした。
ご参加くださった皆さま、登壇やファシリテーションでご協力くださった皆さまに御礼を申し上げます。
わたしの暮らし研究所では、令和4年度経済産業省フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金における補助事業者に採択され、2023年3月までに、各社と連携し、生理用品設置による実証実験・研究調査をまとめ、経産省への調査結果の提出のほか、データから確認できる結果から従業員規模が一定数以上の企業についてはトイレへの生理用品設置を推奨する提言書を作成する予定です。(実証実験企業も募集しておりますので、以下ご覧ください!)
長期的なビジョンとしては、1社ごとに孤軍奮闘するのではなく、意思決定に至るスキームや生理用品の理想のディスペンサーを研究論文や記事として公開し、オープンソース化。世界中の人や企業が活用できるエコシステムの創出を目指しています。
最後に…
生理の問題の解決には誰もが参加できます。 昔駅のトイレにトイレットペーパーがなかったことを、今の若い世代が「えー!そんな時代があったの!?」と驚くように、2030年に初経を迎える人たちが「えー!昔って生理用品がトイレになかったの?」と言える社会をつくることを目指しましょう。 実証実験へのご参加・提言するメッセージへの参加にお持ちくださる方はぜひご連絡ください。
わたしの暮らし研究所LAQDAプロジェクトへのご連絡は、こちらまで
info★wk-k.com(★を@にしてご連絡ください!)
注釈
*1 解剖学的男性(性別):生殖器、染色体などから区別され、役所に届け出ることで法律上「女性」か「男性」に割り当てられる性別。「生物学的性別」という表現をよく目にしますが、生物学的という言葉が「科学的に証明されている”真の”あるいは”本来の”性別」というような印象を与えてしまい、結果的にトランスジェンダーに対する差別に加担する恐れがあると考え、記事内では「解剖学的」という言葉を選択しています。
サポート
今回の記事は、わたしの暮らし研究所のビジョンに共鳴し、NEWPEACE DEIBチームにてライティング(ワイン エリカ)と、表現チェックを行いました(Ai Tomita)。 イベント当日の運営サポートをするべく有志メンバーとして、NEWPEACEで生理用品の設置に邁進するyukaが参加してくれました。当日は来場者受付やアテンド、イベント終了後もきめ細かなフォローアップで現場を盛り上げてくれました。
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