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夏の目標と成果と小話

 近所のひまわりがうなだれている。コスメコーナーは青色から黄色に変わり、袖の短い服の並んでいた洋服屋さんにはすでにダウンがあるのを見つけてしまった。今年も夏が終わった。

 今年の夏は実に忙しなかったように思う。アルバイトは合計で14日間、80時間の扶養内の大学生ができる一月の限界をやり切った。労働以外にも、旅行に行ったし浴衣を着てラムネを飲んで花火を見た。何本か映画も見て、本も片手で数えられる数だけ読んだ。友人や高校の後輩とも会った。就職のためにインターンシップにもいくつか参加してみた。八月の下旬に返ってくる成績は、今までで一番自信がなかったのに今までで一番よいものを修めていた。

 とにかく暇な日をなくそう。新しいことをしてみよう。その一心で夏休みを過ごした。20歳の時にひととおり手に入れられるものは手に入れた(免許とかクレカとか)。形あるものばかりだったが、21歳になってこの夏手に入れたのは形のない感動が多かったように思う。映画では他人の人生から、私では体験できないような戦いや喜びを享受できた。インターンは自分の将来設計の理想をこれまでよりは具体化してくれたと思う。どれもこれも形のないものばかりだけれど、明らかに私を豊かにしてくれたと思う。

 今年の夏の目標は、毎日に目標を持ち達成し、終わるころにはより豊かな人間になっていることだった。私はそれなりに達成できたのではないかと思っている。反省点があるとすれば、やっぱり本が読めなかったことだ。ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』を数ページで閉じてしまった。読んだことがある人ならわかると思うのだが、この話の肝であろうひらがな表記がしんどくて頭が痛くなってしまった。漫画でも読みすぎると微熱が出るくらい、本が得意でない私。カフカの『変身』が読めたのは、その短さと内容を大学の講義で知っていたからなのだなと再認識する結果となってしまった。自分の中にあるものをこうして文字にするのは簡単にできるのに、なぜ読むのはこんなに苦手なのか自分でもわからない。

 あとは、絵も描かなかったなと振り返ってみて思った。一年に一冊、無印良品で購入した無地のノートを落書きで埋めるというのを続けていて、今年で四冊目に入っているのだが、八月は3ページしか書かなかった。スマホアプリで描く厚塗りのイラストのほうも、6月に描きだしたものを何とか完成させたくらいだった。しかし、これは自分の創作よりも他の創作物に触れることにフォーカスしたのが原因だろう。残暑がきつくとも、私の中で九月は秋なので、芸術の秋にはそちらを頑張れれば良いのではないかと思っている。

 ここからは体験したことへの少しの小言を吐き出そうと思う。一つ目は例によって愚痴のため、不快な方は次の◇へ行ってください。

バイトの話

 まずアルバイト。私は今年の四月から役職をもらって働かせてもらえるようになった。が、あまりそれらしい働きはできていないなと憂鬱になることがこの夏は多々あった。久々に社員に怒られたりして、しょんぼりすることがあった。普段は五時間しか働いていないのに、夏休みハイでフルタイムシフトを希望で出してしまい、七時間三連勤も実現した。普段働かない時間は慣れていないし、勝手も異なってくる。それに柔軟に対応できない自分に腹が立った。しかし、そんな自己嫌悪を大きく上回る怒りがあった。
 もらった役職の仕事を、私は教えてもらってもいないのに「なんでできないの?」的なことを言われたり、やり方も知らない仕事を突然やれと言われて、知るわけもないのにこうしたほうがいいああしたほうがいいと注意を受けたのだ。「いや、やったことないんですけど」と訴えてもお構いなし。このとある社員、一時間しかシフトがかぶっていないのにこいつはここまで人を怒らせることができるのかと感心した。だからいい年こいて平社員で年下の上司に怒られたりするんだなあ。上司に向けられないストレスをこちらで発散しようとしやがって!と、基本穏やかな私もバチギレしてしまった。退勤後は疲れてしばらく怒りは忘れていたのだが、後から思い出して怒りがピークに達し、連絡先を着信拒否した。二度と私に話しかけるな。あれからなぜかシフトがかぶっていない。今週から忙しくなるのでどうせ顔を見る羽目になるだろうが、すごく今は気が楽だ。九月からはもう五時間しか働かない。ここに決意する。

映画と漫画の話

 映画の話はnoteで書かなかったものを少し。『トイ・ストーリー』と『トイ・ストーリー2』を見た。1のほうは、正直な話、ウッディしか悪くないやないか!なんで嘘つくの?!といった感じにまったく感情移入ができなかった。しかし、この作品を踏まえてみる2は最高に面白かった。1の頃とは違う成長したウッディとバズとほかのおもちゃたち。その協力と大冒険を垣間見ている感覚がとても面白かった。どちらもCG技術が古くおもちゃはかわいいがアンディとか人間のCGが怖かった。ディズニーとピクサーの技術の進化も図らずして感じられて面白かった。
 漫画の話も少しすると、後悔を承知で『HUNTER×HUNTER』の一巻を購入した。中古は嫌だったので新品を買った。物語を全く知らないのに、ゴン、クラピカ、キルア、ヒソカ、アルカの名前や、幻影旅団とか兵器ブリオンとか用語ばっかり知っていた。好きなゲーム実況者のキヨさんや世代の若手芸人さんがよく例えや大喜利の解答に出すからだ。しっかり一巻を読んで初めてハンター試験受けに行く話なのかと。友達に読み始めたと言うとみんなネタバレばっかしてくるのはなぜなのか。私のハンハンはまだ走ってるだけなんだよやめてくれよ。ゴンが主人公すぎるところも知っているクラピカがすぐ出てくるところもとても面白かった。一月に一巻ずつ読んでいこうと思う。きっと集めるのに3年かかってもそこまで進んでいないと思うから。富樫先生!

 ◇

音楽の話

 夏になると無性に聴きたくなる、Orangestarさんの曲。私は小学生の頃に彼の曲『アスノヨゾラ哨戒班』に出会った。中学生のときにアルバムの『未完成エイトビーツ』を買ったくらい好きだ。だがその一枚しかもっていなかったし、帰ってきてからの曲はあまり聴いていなかった。なぜか突然この夏で再熱し、2016年のアルバム『未収録OSC』を購入した。夏がそうさせたとしかこれは言えない。
 Orangestarさんから離れてしまったのは、復帰後に過去の作品の多くを非公開にされたショックがでかすぎたからだと思う。『ノラボク』『ヴァーミンキラー』『悪性新生物』などの曲が好きだったから。朝四時に目覚めたときに聴いた『午前四時半』は感動した。それが失われた事実が耐えられずに離れてしまった。アルバムにも残されていない曲たち。でも今年は夏が呼び戻した。やっぱり、どの曲も最高に美しい。

旅行の話

 夏の旅行は初めて福井県に行った。福井に何があるのか正直知らなかったが、とてもよかった。一日目は、一乗谷の朝倉氏の遺跡とその資料館に赴いた。歴史専攻だが専門は西洋史なので私は朝倉氏なんて初めて聞いたし朝倉義景という名前に吉良吉影みたいだなとか思う阿呆だった。これは完全に日本史専攻の弟の行きたい場所だった。だが、当時の街並みを再現した施設などはキレイな写真を撮影できる映えスポットにもなっていた。資料館も22年開業のものだったのでキレイで面白かった。その次は永平寺に行った。思っていたより現代的な建物で驚いた。二日目は東尋坊と恐竜博物館に行った。恐竜博物館、想像以上にボリューミーで13時から観覧を始めたのだが、17時の閉館ギリギリまで見るのに時間がかかった。しかも常設展示だけでこれなのでびっくりだった。

成績の話

 成績の話も少し。春学期の私は成績に自信がなかった。なぜかというと、好きでとった科目がひとつもなかったからだ。私は教職課程を履修していて、免許取得のために修得しなければならない科目がいくつかある。私が取れるのは高校の社会科の科目。歴史は専攻だからいいものの、社会学とか政治学にはもっぱら興味がなかった。しかしどちらも成績は最高評価だった。ほかに履修したものも、最高かその一つ下の評価かだった。80点台と90点台の成績しかなかった。一番自信もなく、落とすことはないだろうがGPAは最悪になるかもと懸念していたのに。過去最高。去年は追い込まれるくらい勉強したが、今年はそこまで切羽詰まって勉強した自覚はない。普通にやっていれば良い成績が取れるのかと改めて感じた。私は学科で大学を選んだのだが、もっとレベルを上げて受験を頑張ればよかったかなと今更ながら感じた。だがゼミは最高に楽しいので、やっぱりここでよかったかなと考え直すのを何度か繰り返している。

 以上。嫌な人間と働くことで見えてくる自分もいるし、創作物から得られる価値観や、旅先で新しいものや場所に出会えて、いろんなことをしてとてもよかっと思う。お笑いは八月にはあまり配信ライブなどを視聴することはしなかったがM-1が始まってわくわくしている。初夏には20世紀さんの単独ライブを見に大阪に一人で行ってみたり、どんどん増えていく趣味だが、どの趣味も絶えることなくゆるく長く続けられていて、どんどん自分が広がっているような、人間として深みが出ていくような感覚がして楽しい。9月はゼルダの伝説の最新作も発売される。もちろん予約済。ブルーアーカイブのアニメ円盤の一巻が届いた。特典がとても豪華だ。

 夏。暑くてうんざりするけれど、毎年終わりにはなぜか切なくなる。来年の夏までに私はどんな人間になっていて、夏を経てどのような人間に変わろうとするのだろうか。思春期の頃、死にたいくらいつらかった人生だが、今は一つ一つが楽しく、生きていてよかったと思えている。そんな自分のために未来をつかみたい。死ぬまで楽しく生きてやる。

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