音楽の記録 Vol.5
3月1日に、とうとう卒業式が迫ってきた。あまりの実感の無さに、少し困惑している。またものほほんと1週間が過ぎた。多分毎日散歩していた。悲しいくらい暇だった。
25日は出校日で、通知表が返ってきた。私の学校では五段階評価で、十科目のうち、5が4つ、4が5つ、2がひとつ(数学)。内申点は4.2と、人生最高の成績となっていた。バンザイ!さらに、私は3年間皆勤なようで、賞状を二枚も貰うことが出来るらしい。バンザイ!
先週はちょっと愚痴を零してしまったので、今回の記録は2週間分の音楽だ。100曲までは行かなかったが、今回も80曲近く聴いた。今回もその中から10、ハマったアーティストや音楽を紹介する。少しボーカロイドが多くなってしまったが、オススメなので、一度だけでいいので聴いてみて欲しい。
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1.ت
この方の楽曲、「アルマ」が初投稿だと気づいた時にとんでもない衝撃を受けた。初のクオリティではないのだ。既に40万回再生を記録し、多くの歌い手さんが歌ってみたを投稿している。今月になって新しく、「エゴノミー」が投稿されたが、こちらも既に多くの再生回数を誇っている。
颯爽と走るようなメロディと複雑な音が混ざり合い、そこに可不の高い声が入り、不協和音を生まずに流れていく。楽曲がすぐに頭に擦り込まれるような感覚になる楽曲を作られる方だ。
笑顔にみえるアラビア文字と、説明の少ないチャンネルには、好奇心を掻き立てるものがある。蓋を開けてみたらとんでもない中毒性のある楽曲が流れ出す。それにかなり多くの人が魅了されている。今後もどんな楽曲を作られるか楽しみな方だ。
2.Utopia/おいしくるメロンパン
全体的に透明感のある透き通った曲だ。ボーカルの方の声がとても澄んでいて、曲に青さがはいる。水に青い絵の具が溶けていくような感じ、というのが一番適格な例えな気がする。
ドラムもギターもベースも、ガンガン打ち付けるような音でなく、優しい音を奏でている。青空の下、白いスカートの少女が野原をかけているようなイメージ。MVは高層ビルの下、高原の下で音を産むバンドメンバーの演奏姿と、おとぎ話に出てくるようなキレイな女性が現れる。
オシャレで、少しうつろだが、サビにかけて勢いが澄んでいて綺麗な楽曲だ。
3.ぎぶみー/カンザキイオリ
2月14日のバレンタインデーに投稿された、カンザキイオリさんの楽曲だ。
この曲は、驚いたことに、「ぎぶみー」「ちょこれーと」のふたつの単語のみしか歌詞にない。たったふたつの単語しか無いのに、音にしっかり盛り上がりが見られ、終盤には転調もし、3分間全く飽きない。たった二語に魅せられる。チョコレートへの執着と、音楽の型破りな姿を眼前に叩き出されたような感覚がする。
何より、カンザキイオリさんは、とんでもない語彙力で我々人間の胸を射抜くような歌詞を紡ぎ、「命に嫌われている」などの名曲を生み出した方だ。そんな方の、立った二語しか使われていない楽曲。ぜひ聴いてみて欲しい。
4.SPECIAL/SUPER BEAVER
「東京」で初めて出会ったバンドだが、すっかり好きになってしまったようだ。
掻き鳴らす音の勢いがとてもかっこいいのに、ギラギラとしていない、優しい背中を押されるような歌詞にやはり衝撃を受ける。すぐに頭に響くSUPER BEAVERの音と歌詞は、一発で心を掴まれる。
MVはたくさんのカメラが、メンバーを訳分からなくなるくらい多くの視点から写している。一人一人の髪の揺れや、演奏する楽器を触る手、グルグル動くライトが、楽曲の勢いに臨場感をプラスする素敵なものになっている。かなりこだわっているのだろう。とても惹き付けられた。
5.ミルクパズル/wotaku
ボーカロイドのKAITOを使う楽曲は、あまり見かけない気がするのだが、この曲はとても素敵なものになっている。
KAITOの声だけでなく、音楽を作るひとつひとつの音がオシャレで、まさにサムネイルのイラストの雰囲気がイメージできるものになっている。
後ろで鳴っている音のひとつひとつがすごい好きだ。楽器の音ではないものもあると思うのだが、すごい素敵で綺麗だ。
寂しい暗い雪の夜。今年は夏が死ぬほど暑いこの街も、たくさんの雪が積もった。雪が降らない年もあるので、レアケースなのだが、大人になってしまったようで、もう雪には感動しなくなった。むしろ嫌いになってしまった。すごく悲しいことだ。そんな寂しい気持ちに寄り添ってくれるような楽曲だ。
6.Mona Lisa/mxmtoon
毎度の事ながら、英語分からないくせに洋楽を聴いて紹介している。和訳も見つからなかったので、深いところまで触れられなくて申し訳ない。
私が聞き取れたのは「シェイクスピア」と「モナ・リザ」の二単語だけだが、全体的にこの曲は流れるように、でもしっかりリズムがあり、ボーカルの方の声も澄んでいて、聴いていてゆったりできる、カフェやお店で流れていそうな雰囲気を感じた。
コメント欄では「マイリストに入れちゃったよ」「道端で踊りそうになったよ」みたいなことが英語で書いてあった。それくらいノリノリになれるし、何度聴いても心地よい楽曲だ。
7.しらんけど/ジャニーズWEST
どう表現して紹介したらいいのだろう。笑
かっこいいのにめちゃめちゃに面白い歌詞と、かっこいいのにめちゃめちゃに面白いMVに惹かれた。ジャニーズの楽曲は、いつもテレビでサビが流れるものという感覚で、こうもしっかり聴くのは人生はじめてなのだが、すごく良いはじめてな気がする。
「大阪は今日も雨...しらんけど」「しらんのかい」と、ツッコミの入る歌詞と、MV中にツッコミをするメンバー(主に中間さん)の顔が凄く面白い。これでショートバージョンなのだから、アルバムに収録されたフルバージョンはもっと面白い楽曲であるに違いない。他のグループを推しているという方も、この曲には魅了されているようだ。
8.カノン/柊マグネタイト
数日前に公開されたばかりなのにも関わらず、とんでもない勢いで再生回数を伸ばしている。
2分43秒という短さなのに、満足感がすごいというコメントが見られた。まさにその通りで、この1曲だけでかなり耳に、身体に喜びが走る感覚がする。ボーカロイドの曲なのだが、可不はかなり人間のように歌えるので、機械的な音楽のかっこよさと人間の歌う曲の良さのどちらもが一気に味わえる感覚がする。
何より、この楽曲はリズムと歌詞が心をつかむのだと思う。サビの少し早口に流れるところや、「天秤」を「バランス」と歌わせているところにかなり惹かれた。
9.さよならプリンセス/kai
可愛らしく、しっかりリズムがあるのに、足早に流れるようなサビの疾走感と、それまでの地の部分の少しゆったりとするギャップが綺麗に調和が取れている。
バブルの弾けるような音や、おもちゃの機械の警告音のような音、ゼンマイを巻くような音、時計の秒針のような音などが後ろで重なって鳴っているのだが、その細かいひとつひとつの音が可愛さを強調しているように思う。
かなり調教された初音ミクの声は独特で、でも甲高くなく耳に不快感は誰にも与えることはないだろう。こんなに可愛い曲なのだから、もっと注目されても良いのではないだろうか。
10.ショウコ隠滅、少女純潔/みつあくま
一瞬で持ってかれた。
はじめて聴いたその日に20回くらい聴き返したのではないか。そのくらい一発で虜になった。言葉で表せない。2分ないくらいですっごい短いのに、すっごい満足する。とりあえず聴いてみて欲しい。
以上。
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我々人類は、様々な文化を紡ぎ、この青い地球にもっと多くの彩りを生み出した。文明も、古代の遺跡も、様々な発明も、今に続く伝統芸術や芸能も、音楽も、歴史も、そのうちの一色である。
昔は、遠い東南アジアの島での出来事なんて届かなかった。今は、遠い西洋の国の出来事が、秒単位で情報として届けられる。白黒でしか見るはずのない映像が、カラーになって眼前に現れた。「明日は我が身」という言葉をたくさん見た。
世界を壊す銃が、今青空に銃口を向けている。
その事実を知りながら、教科書に載っている言葉しか知らない私は、酷く無知で酷く非力である。画面の向こうで苦しむ人々の顔を見て、何も出来ないのだ。2019年に広島に行きたいと言って、連れて行って貰った。あの土地を踏んだ。もう繰り返しませんと書かれた石碑を見た。
教科書でしか目にしなかったはずの言葉が、日常的に使っている携帯に現れた。「総力戦」。私と同い年の男性が、悲しい武器を持つ。明日は我が身。テレビの中の大好きなあの人が、同じ教室でふざけ合ったあの人が、隣の席だったあの人が、父が、弟が。そんなの、耐えられない。
火の中では、どんな優れた芸術も、どんな素敵な音楽も、見えない、聞こえない。耳にはきっと、悲しい声しか入らない。
そんな愚かなこと、やめて欲しいと思うのに、何も出来ないのだろうか。私はこのままただ侵略者を傍観することしか出来ないのだろうか。分からない。分からない。そんな無知で非力な自分が憎い。
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どうしても考えずにはいられなかった。でもこれも小さな高校生の独り言にすぎない。届きはしない。大きなことなんて何も出来ない。
ただ、音楽を、芸術を楽しめる世界が、壊れてしまうのが、酷く怖いのだ。
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