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なんでもない2人の一夜の冒険譚
それが、「少年アリス」だったと感じた。
少年2人と夜の学校、犬1匹。描写が丁寧で、水底に沈んだ綺麗な砂利を両手で掬い上げるような繊細なきれいさ。
アリスというから異世界に迷い込んで出てくる話、と理解をしておくと読み進めるのは早いだろう。そこにこの作品は2人のやわらかくてかたい友情が加わり、味わいを深めている。
わたしは、いわゆるボーイミーツガールもの、特に片方が特殊な力を持っているもの(天気の子、崖の上のポニョなど)が好きだが、今回のようなものもいいなと思った。
以下、心に残ったところ。
自分できめて、自分のかんがえでためしたことを、蜜蜂は後悔していなかった。アリスはそれを見習うことにした。おそくても、へたでも、かまわない。堂々としていれば、それでよいのだ。
蜜蜂はアリスの友達の名前だ。アリスが不思議な少年たちに混ざって空に星を縫い付けるとき。離れていても勇気をくれる友達の存在はいいな。
かたちのあるものは、そのままではいられない。ふるびたり、こわれたりする。生き物ならば成長する。どんなに注意ぶかくしまっておこうとも、そのうちがわからつきあげてくる力によって変化する。アケビの実のようにある日、思いがけず口をあけて、見るものをおどろかせるのだ。
別れというものは、すこしずつひっそりと知らぬまにしのびよって、人をおびやかすものなのだ。
あとは、夏の終わりの瞬間を書いた表現も見事だった。
好きなVtuberのススメで読んだ本だったが、とても良い読書体験になった。夏から秋になる短い、ある夜の物語。