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ツミデミック -パンデミックで狂っていく人と世界-
本の概要
タイトル:ツミデミック
著者:一穂ミチ
発行日:2023.11.30
発行所:光文社
評価:★★★★☆
感想
パンデミック×犯罪をテーマに描いた全6話の短編集。直木賞受賞作。
「パンデミック」をテーマに、よくこんなにいろんな方向から物語が書けるよなぁ、すごいなぁ、と思った。
わたし的には『ロマンス☆』『祝福の歌』が特に面白かった。
『ロマンス☆』は、偶然道で見かけたフードデリバリーのイケメンに会うために、「ミーツデリ」を使いまくる主婦の話。課金してガチャをしまくるのと同じように、デリバリーをしまくって星5のイケメンを当てようとする。
気づいたんです。ゲームと違って、星5の出現確率を自分で上げることができるんだって。
パンデミックのときに、人が知らず知らずのうちに頭がおかしくなっていく感じがうまく表現されていてよかった。
一穂ミチさんの小説には、前のめりではなく、ごく自然にページをめくってしまう力があると思う。
先日読んだ『恋とか愛とかやさしさなら』も、次々とページをめくってしまう手が止まらなかった。
ユーモアある文章もあって、一穂ミチさんてこんな面白い人だったんだ!って新しい発見もあった。
俄然やる気が出てきた。特別縁故者に、俺はなる。
海賊王に、俺はなる!と同じように脳内再生されて爆笑した。
『祝福の歌』は、主人公の娘である高校生の菜花(なのか)が、妊娠して、日々産む産まない論争をしている。もちろん菜花は産もうとしている。
この、菜花がいいキャラをしてるのだ。明るくて適当なのにしっかりしてる。
ねえ、子育てはそんなに簡単じゃないって、パパにもママにもたくさん言われたよね。でも、ふたりはあたしをここまで育ててくれたじゃん。だったら、現実の厳しさより乗り越えるためのライフハックを授けてよ。あたしは産んだ世界線で考えてんのに、産むか産まないかの話ばっかされても噛み合うわけない」
もっともだ、と思った。
こんなセリフを言う菜花だから、しっかり育てられるとは思うが、物語はそこまでの結末に辿り着かないので、続きが読みたいなぁと思った。