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小説 -小説を読む意味とは?読むだけじゃ駄目なのか?-
本の概要
タイトル:小説
著者:野﨑まど
発行日:2024.11.18
発行所:講談社
評価:★★★★★
感想
5歳で小説の虜になった内海集司(うつみしゅうじ)は、12歳のとき外崎真(とのさきまこと)と出会い、友だちになる。
2人は小説を読み、小説家の髭先生と出会い、小説を読む。
この本を読んで、わたしは泣いた。感動して泣いた。
本好きな人なら、たぶん一度は思ったことがあると思う。
読むだけじゃ駄目なのか?と。小説を読む意味とは?と。
本を読む。小説を読む。読んでいる間は物語の中にいる。読んでいない時は泥の中のような気分でいる。大好きだった本を読めば読むほど自分が人として駄目になっているように思えた。小説を読むことが頭の中で逃避や慰めという言葉と繋がってしまうのが辛かった。
人は生産的なことを良しとするから、消費するだけの日々や人間は、なぜか罪悪感を感じるようになってる。
だけど、小説を読む意味はある。
人間は自我を持ってる。自分の存在を認めて、自我を持って、他人と自分を区別してる。その “自分ていう境界” の内側に沢山の情報を集めてるんだ。生きて見て感じて知って、自分の心を豊かにするんだ。
物質はエネルギーの量以上に増えられない。生物は食べる量以上に増えられない。人の精神は得られる情報の量以上に増えられない。上限があるんだ。頭打ちになるんだ。宇宙の材料を全部内側に使っちゃったら後はもう滅びるのを待つだけなんだ。
(中略)
でも、大丈夫、実は大丈夫になってた。
(中略)
嘘つけばいい。
感動して鳥肌が立った。
小説を読む全ての人に読んでもらいたい小説。
この本の紙が厚くて、なんか、昔の本、昔からずっと読まれてきた本、を読んでいるような気分で読み進めた。
1番最初のページに書いてある「この物語はフィクションです。」という文章。最初に読み始めたとき、なんとなく引っ掛かりを感じた。
この文章を、全て読み終わったあとに見返してみると …… なんて素敵な!!!
書いてある文章以上の意味と、愛を感じた。
芸術作品のような、抱きしめたくなるような愛を感じる本だった。
野﨑まどさんは、名前からして女性作家さんだと思っていたけど、読み始めてすぐにこれはきっと男性作家さんだと思って調べた。そしたらやっぱり男性作家さんだった。