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「認知症世界の歩き方」を読んで
この春頃から、2世帯住宅で暮らしているお姑さんの認知症が出始めたのですが、夏に一気に進みました。
昼夜逆転は当たり前で、夜中に、我が家のリビングの電気を点け、「観劇に行くから、待ち合わせ場所まで送って」
もちろんそんな予定はありません。観劇はコロナで中止!ということにして、また寝させた30分後に「観劇に行くんだよ。起きて!」
寝てしまって誰も起きないと、ひとりで外に出てしまい、近所の方に転倒しているところを救出されたこともありました。一晩に何度も起こされ、家族全員が寝不足。中学生の息子は、学校でもトイレに籠って寝ており、中間テストは散々な結果に。。。。。
家なのに「トイレどこ?初めて来たからわからないわ」
「亡くなったおばあちゃんがやってきた」「私のお葬式にこどもたちが集まっている」「今、ピンポンが鳴ったよ」などなど、幻覚幻聴まで現れました。今日は何日かわからないどころか、曜日も予定もわからない。市の薬剤師会の副会長を務め、会計をやらせたら、ピカイチと言われたくらい、頭のキレる人なので、この変化には面喰いました。
そして、事態はさらに悪化。
前日の夕方から何度も何度も教えている今日の予定を、5分前に教えたはずなのに「聞いていない」「あなたが教えないのが悪い」
朝晩、家にいるときはなるべく面倒をみてあげてるはずなのに、「仕事を言い訳にして、私の面倒をみない」「親の面倒をみるのはあたりまえだ」「結婚式まで挙げておいて、私の面倒をみないなんて何様だ」「子供の世話より私の世話だろ」
毎日毎日、怒鳴られ罵られ、私のストレスは極限にまで達していました。仕事はずっと一緒にやってきましたが、実の母ではありません。介護義務はないはずなのに。単身赴任の旦那さんのかわりにお姑さんの介護をしていたお嫁さんが、お姑さんを刺し殺した事件。他人事とは思えませんでした。
そんなときに、noteの読書感想文で知ったのがこの本でした。
認知症の世界をおもしろおかしく例えており、とてもわかりやすい。時間がわからなくなり、夜中に観劇に行くと言ったり、日時やその日の予定がわからないのは、彼女は、現代版竜宮城、トキシラズ宮殿を彷徨っているからだし、見えないもの、聞こえないものを見聞きしているのは、パレイドリアの森に踏み込んでしまったとき。
脳のある部分の働きが損なわれるだけで、私たちとは違う世界が出来上がってしまう。なんで、こんな変な行動をとるんだろうと思うけれど、認知症のひとたちには、その世界が現実なんだと。
現在、私は、大学院で心身健康科学を専攻している関係で、脳についても学んでいますが、改めて、脳の働きの複雑さを、この本からも学ぶことができました。
この本を読むまでは、過去の彼女だと思って接していたように思います。
私は薬局薬剤師なので、薬局には、認知症の患者様もお見えになるし、施設にお薬を届けたりもしています。職業柄、詳しいつもりでいました。しかし、実態はそんな甘いものではありません。薬局では、患者さんは、よそ行きの姿を見せるため、本来の姿ではありません。本人の困り感、ご家族の心労なども考えて、服薬指導をしなければと思いました。
お父さんに認知症の症状が出始めた同僚にも、この本を貸しました。
おそらく、この本は、認知症の初期の方にインタビューし、当事者向けに書かれた本ですが、介護で悩まれている方にも、認知症世界を知ることで、接し方を考える良い機会になると思います。親の介護は、誰もが避けては通れない道です。ぜひ、一度、読まれてみるとよいのではないでしょうか。