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『しょぼい生活革命』を読んで

本屋の哲学・思想の棚で「あ!」と思いました。内田樹×えらいてんちょうの対談!世代ギャップのある対談はだいたいおもしろい説(川村元気さんの対談本とかはそうか)?と、ひとまず買い。

経済、思想、共同体(これからの生き方)にフォーカスを当てるかなと思いきや、教育・福祉・宗教・歴史・政治・文化と、とっても幅広いです。

トータルでは内田樹さんの発言量が多いのですが、えらいてんちょうの生い立ち話や考え方が極めて実践的(奨学金を渡すお話などなど)でインパクトもあり、バランスとしての印象は同じくらい。

司会・中田考さんや構成の妙もあるでしょうし、何よりお互いが信頼・尊重し合っているのが伝わってきます。必ずしも年長・年下の関係でなく、対等でフラット。

どのテーマもおもしろく拝読してますが、ポスト資本主義的なお話にアンテナ張っていることもあり、そのあたりクリップします。(結果として内田樹さんの発言のみ)

株・株式会社の考え方

*株式会社に出資する人間は、その会社が提供しているサービスや商品をこれからも安定的、継続的に享受できるという事実そのものを「配当」とみなすべきだ、と。僕もこれには賛成なんです。
*株を貨幣に換算してはいけないんです。株というのは擬似貨幣ではなくて、企業が提供する商品やサービスを安定的に享受したいという人が企業を支えるために差し出すものですから。

経済学者の水野和夫さんのお話を引き合いに出してますが、一つの考え方としてあるなあと。ファンベースぽい。サイボウズやほぼ日が頭に浮かびました。

社会の公器としての色がグッと出る。『会社はだれのものか』にも近いことが書いてあったかな。

貨幣とはサッカーボール

*貨幣は使用価値ゼロの商品なんです。何かと交換する以外に何の使い道もない。退蔵していてもしょうがない。サッカーのボールと同じなんです。
*サッカーボールはそもそもが敵陣に贈与するためのものなんです。自陣のゴールに放り込むわけじゃない。敵陣に贈るんです。それを敵チームが妨害するのは、「贈与者の資格」を得ることがプレイヤーの栄光だからです。
*「あいつにパスを回すと、どこにボールが行くかわからない」というプレイヤーのところにボールが集まってくる。貨幣もそれとまったく同じなんです。

貨幣とはサッカーボールと同じである。それ自体に価値はなく、贈与(ゴール)の資格を得ることが栄光なんだ。おもしろい。

イスラム教でいえばムハンマドは、「使ったお金だけが財産だ」と言っているのだとか。「使った分だけまわりまわって戻るからお金を使え」って話ありますけれど、これは使ったお金=財産という考え方。GIVERにも通じますなあ。

あと最後に合意形成についての話をクリップして終えます。

合意形成というのは「みんなが納得する」というものじゃないんです。むしろ、「全員が同程度に不満」なところが落としどころになる。落語の「三方一両損」というのが日本的な合意形成なんです。でも、「みんなが同程度に不満な解」というのは、なかなか出すのが難しいんです。

大岡越前はかっこいいなあ、というわけで以上です!


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