『愛とためらいの哲学』(岸見一郎)を読んで
岸見一郎『愛とためらいの哲学』を読みました。
岸見一郎といえば、アドラー心理学の第一人者であり、あの『嫌われる勇気』の人。三木清『人生論ノート』の存在を教えてくれた方でもある岸見先生には感謝です。
そんな岸見先生が書かれたのが本書。表紙のイラストには「あなたの愛は、なぜ幸福をもたらさないのか」というキャッチが。内容はちょっと想像がつかなかったのですが、読み応えのあるものでした。
随所に哲学関連の引用もありまして、そのあたりふくめてかんたんに言葉をクリップします。
「プライベート(private)という英語はラテン語のprivareが語源で、その意味は「奪う」です。奪い取らなければ自分のプライベートな時間を確保することはできないのです。」
そうそう、休みを取りにくい雰囲気とか言うけれど、それをつくっているのはじつは自分自身でもあって、自己保存の性質から現状維持を無意識に求めてしまう。
こと恋愛において「どんなに忙しくても、好きな相手には返事する」なんて言いますが、本質として時間は能動的につくっていくもの。岸見さんの言葉を借りれば奪い取るくらいの気持ちで、自分の時間を確保せねばなりません。
「「自分に価値があると思える時にだけ勇気を持てる」(Adler Speaks)」
アドラーの言葉の引用。「自己肯定感が下がってきたら危険サイン」と、マーケターの森岡毅さんが著書でおっしゃっていました。
また、バリュミューダの寺尾さんがかつて講演かなにかで「勇気とは使った分だけ増える」とおっしゃっていたことを思い出しました。勇気を持ったら、使ってみる。
「「愛すること、喜び、真理を把握することの経験は時間の中で起こるのではなく、今ここで起こる。今ここは永遠である。即ち、無時間性である」(Fromm, Haben oder Sein)」
たとえば永遠の愛を誓ったとしてその永遠とは何か?無限に引き延ばされた漠然とした時間制にかえって不安を感じることさえあるかもしれません。
時間はつくることはできても、フロム的には時間を「持つ」ことはできない。
時間とは「今ここ」の経験のみであるという真理に到達します。つまり行き着く先は“「今ここ」に集中して生きましょう”。
古今東西、いろんな人が「今ここ」の大切をいろんな角度から説いているのが、おもしろいなあと。
「「愛に生きるひとは、相手に感謝されようとされまいと、相手の生のために自分が必要とされていると感じるときに、生きているはりあいを強く感じる」(『生きがいについて』)」
神谷美恵子の言葉です。アドラーにも通じますが、相手への貢献感を持てることが生きがいであり、自己肯定につながっていきます。いつもこういう言葉をみますと、シティボーイズの大竹真まことさんを思い出すんです。
「お笑いをするかとどのつまり、一周まわって、人のためなんだと。それがないとやってられない」
肯定と貢献。
というわけで以上です!