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『怪談―小泉八雲怪奇短編集』(小泉八雲)を読んで

ひさびさに古典を紹介します。

小泉八雲ってだれ?

ラフカディオ・ハーン(以下、小泉八雲)は1850年生まれ。モーパッサン、オスカー・ワイルド、コナン・ドイルと同い年

ギリシャ西岸の小島生まれ。13歳で片目を失明するなど紆余曲折がありまして、アメリカでいくつか職を経験した後、新聞記者に。

小泉八雲は39歳のとき、ルポタージュを書くために二ヶ月間の滞在予定で日本を訪れます。

それが日本との運命的な出会い。彼は日本の魅力にとりつかれ、小泉節子と結婚。日本に帰化し、やがて小泉八雲と名乗るようになります。

明治の視点から日本の思い出を綴っていった八雲。『日本の面影』を手にする前にまずは本書!と、ようやく入手。

八雲の怪談ですと一般的に「雪女」「耳なし芳一」あたりが有名でしょうか。いずれも本書に収録されています。驚くのは本書の刊行が1904年ということ。日露戦争の年ですね。

本書の怪談話は本人が否定している通り、まったくのオリジナルではありません。

もともと怪談話に関心を持っていた八雲。彼は熱心に日本研究を行い、そこで見聞きしたもので話を再構成しています。

結果として余情あふれる文学作品となりました。本書は二十弱のお話を集めた短編集。時代背景はさまざま。

たとえば「果心居士」であれば舞台は安土桃山時代。信長や明智光秀が登場します。

「ろくろ首」なら室町時代の菊池氏の滅亡が作品の時代背景となっています(自分の名字が菊地だけに、ちょっとドキッとしました)。

落語的、SF的な何か。

とくにおもしろく読んだのは「安芸之助の夢」

安芸之介はある日、郷士仲間の2人と庭の木陰でおしゃべりをしている最中に眠気におそわれ、うたた寝をしてしまった。目を覚ますと国王の使者が近づいてきて…。

かんたんにいうと夢を見ている間にもうひとりの人生を経験してしまった男のお話です。

我に返っておどろく安芸之助。

うたた寝していた近くの木の下にはアリの巣穴があった。すると地面の下には都市のミニチュアのような巨大なアリの巣が広がっていた。中心には王宮のような巨大な空間が…!

オチはこういうベクトルです。どこか落語的でもあるし、人間の人生を疑似体験するアリ。それは輪廻転生という意味で仏教要素もあります。

巣穴(小さなコスモス)を見つけたときのアングルはどこか漫画『五佰年BOX』を彷彿させますし、不思議に余韻を感じさせる作品。

本書は、子供でも読みやすい配慮・工夫が随所にほどこされています。

そうだ、最後に「青柳ものがたり」の話を。

この作品は途中、小泉八雲のつなぎが登場します。なぜなら原作では間がプツッと切れてしまってるから。

どうやら作者が飽きてしまったようで、急に物語が進んだ状態で後半に突入します。あえてそのまま収録するのもおもしろい。

総じて歴史的な価値があるのはもちろん、文学作品としていまも十分におもしろく読めます。

というわけで以上です!


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