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資本主義の本質をわかりやすく!『なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?』(松村嘉浩)

トーマス・トウェイツは先行きの不安から「ヤギ」になったけれど、著者はそんな疑問や心配、不安に対して小説仕立ての経済本をしたためた。

成長を前提とした現代社会の持続が困難であることに気付き、行動を改めるべき

主張をこのように解釈しました。

資本の増殖への無茶な期待が「格差、金融危機、テロや戦争、国の信用低下」といった現象を引き起こしている。

ちなみに日本のマイナス金利施策、マネタイゼーションへ進むことの危険性について相当の紙面を割いて解説しています。

本書は小説仕立てというものの、基本としては女子大生と教授のマンツーマンによる講義形式。対話・口語調なので読みやすい。

さらに『進撃の巨人』『鋼の錬金術師』「RADWIMPSの歌詞」といった、一見つながりにくい「いま」のエンターテインメントと現象を重ねながら話が進んでいきます。

ヒントは江戸時代。

さて、どうやって目先のつじつま合わせから脱却すべきか。ここで「江戸時代」と「定常経済」といったキーワードが挙がります。

これから来る成長しない新しい時代に適合する手本を示すのは、支配層がモラルを持って腐敗せず、成長しなくても分配を比較的公平に行い、豊かな文化を育んでみんなが幸せに暮らせた江戸時代のような定常社会や経済の実践経験を持つ日本人以外にはない
そもそも、経済成長をしない世界システムや産業革命以前においては、経済学は存在しませんでした。経済の最大の関心は、成長しないパイをどのように分配すれば、みんなから文句を言われないかだったので、道徳哲学の一分野だったのです。

マインドを変えるべきは私たち

そんな社会をこれからつくっていくためには、私たちのマインドを一変させなければならない事実も同時に見えてきます。

たとえばアメリカのサブプライムローン。

「金融機関が大儲けしていた」など供給側寄りの議論になりがちだけど、じつは毒性のある金融商品を買う「需要」がなぜ生まれたを考えるべき。

それは、世界中で高齢化が進んで、年金をはじめとする利回りを要求するお金が増えてきたから。

「利回り」とは高成長を前提としており、その要求が運用を圧迫することで証券商品の膨大な需要を生んだ。

著者はこの証券化商品を、庶民がなんとかうまさを味わうための「ネギトロ」にたとえます。切り刻まれ、混ぜられて、ちょっと得体の知れないかんじ。

日本においても将来不安だからこそ投資が推奨されている。政府はお金が市場へ流れることを促進し、利回りを求めている私たちもたしかに存在する。

まわり続けるメリーゴーランドは、もはや誰も止められないのでしょうか。

それとも民主資本主義社会の本質である「欲」をアップデートできるのか。

というわけで以上です!


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