見出し画像

『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』(小林昌平)を読んで

『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』を読みました。

素敵な本です。いくつかのクリップと、その理由を思い出しながら。

サルトルのアンガージュマン

サルトルは人間を「『被投(無力に投げ込まれた)』的存在ではあるが、『投企(自分をこうなろうと企画できる)』的な存在でもある」といっています)。

サルトルの「嘔吐」は学生時代に断念してます。ところで「諦観」が最近、気になるワード。悲観を引き受けた上でポジティブに生きること。

幸福の考え方

「人間にとっての幸福」とは「本来その存在者に課せられた機能(優秀性(アレテー))を十全に果たすとき」

「幸福とは魂がその優秀性に即して活動すること」とするアリストテレス、「人間の能力は使用されることを求めてやまず、人間は使用の成果を何らかのかたちで見たがるものである」とするショーペンハウアーなど。

自らの使命を強固なロジックで設定できた人の充足感は、きっと強いものだし、幸福感もあるのだろうなあ。

とはいえ、その設定のボタンのかけ違い=まちがった正義もあるわけですか。使命をいいかんじにカチッとはめたいところ。

ラッセルの幸福論

ラッセル『幸福論』の解説によれば、アランが文学的な幸福論を、ヒルティが宗教的な幸福論を説いたとすれば、ラッセルは「人は皆、周到な努力によって幸福になれる」と、現実的で誰にでも到達可能な幸福論を説いたといえます。

幸福論の題材。アラン=文学。ヒルティ=宗教。ラッセル=努力。

いつになってもアラン、ヒルティ、ラッセルそれぞれの『幸福論』のちがいは覚えられなさそう。

“幸福”という言葉をみると、テレビに出始め時期のカンニング竹山さんを思い出す。「幸せって、何なんですか」。

伊藤若冲の自信

絵師・伊藤若冲は、同時代には正当に評価されなかった孤高の画風でした。しかしそれをものともせず、圧倒的な努力を要する画業に打ちこみます。

代表作「動植綵絵」を相国寺に奉納した際には、「具眼の士を千年俟つ(自分の絵の価値が分かる人を1000年待とう)」といった

伊藤若冲がここまで評価されたのは、ほんとここ数十年間のお話らしいですね。NHKが取りあげてから、なんてことを聞きます。

誰かが埋もれている画家にスポットを当てることで、世の中の価値観がガラッと変わることがあるとして。夢があるし、おもしろいなあ。

岡本太郎のプライド

岡本太郎もまた「友人から下に見られている」への喝となる言葉を語っています。「大切なのは、他に対してプライドをもつことでなく、自分自身に対してプライドをもつことなんだ。他に対して、プライドを見せるということは、他人に基準を置いて自分を考えていることだ。

たとえ、他人にバカにされようが、けなされようが、笑われようが、自分がほんとうに生きている手ごたえをもつことが、プライドなんだ。相対的なプライドではなくて、絶対感をもつこと。それが、ほんとうのプライドだ」(『自分の中に毒を持て』)

価値基準は相対ではなく、絶対感でありたいもの。では自分の内の世界で何でもかんでも完結させてよいのかというと、ちがう。自信は外界との交わりがつくる実績があってこそ。バランスが大事ですなあ。

死の過程について

キューブラー=ロスは臨床医として、真正面から死をとらえようという運動をおこない、その後アメリカでは末期がん患者への告知率が上昇するなどしました。

死が近づいた本人の「死の過程の5段階(否認─怒り─取引─無気力─受容)」説を提唱した彼女は一方で、他者の死を受け入れなければならない人々にも同じように、「死の受容」と「喪の仕事」を説きます。

大切なものを失った悲しみを明るくごまかしたり(躁的防衛)、他の対象で埋め合わせたりしようとすると、「悲しみの否認」といって、のちに重い抑鬱状態に襲われ、かえって悲しみに苦しむことになると、彼女はフロイトの理論を受け継ぎつつ、注意を呼びかけています。

死の過程の五段階というのが興味深くてクリップ。昔、爆笑問題にこんなネタがあった。

「いったいなぜ人の最期は“死”なのか、べつに“笑い”とか“怒り”でもいいじゃないか」っていうナンセンスなのだけど、なんかハッとさせられるというか。

なぜかそのネタを思い出した。

カーネマンの理論

カーネマンはこうした実験をおこなった結果、ある関数(バリュー関数)を発見し、人間は「利益についてはより確実な選択肢を選ぶ傾向があり、損失についてはリスクをとってギャンブル的な選択肢を選ぶ傾向がある」という結論をみちびいています。

「期待値」が合理的な選択基準だとして、人はなぜそれとは異なる選択肢を選んでしまうのでしょうか。 カーネマンは「人間は『損失の苦しみ』をより気にしてしまう」という指摘をしています。利益と損失が同額であった場合、(先ほどの関数から)同じ額の利益を得る喜びよりも損失は2・25倍苦しみを強く感じるというデータが得られます

プロスペクト理論、人間の性なのでしょう。サンクコストが与える心理的な影響など、無自覚になりがち。クリップ。

以上でございます。







いいなと思ったら応援しよう!

一介の読書好き
最後までお読みいただきありがとうございます...!本に関することを発信しております。

この記事が参加している募集