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『現代語訳 文明論之概略』(福澤諭吉)を読んで
福沢諭吉著『文明論之概略』を読みました。斎藤孝さんによる現代語訳版です。
明治8年。1875年に書かれた福沢諭吉の代表作の一つ。『学問のすすめ』が有名ですが、出版年はじつは同時期らしいです。
現代語訳とはいえ時間はかかりますが、読んだかいがありました。明治維新という革命からわずか十年ほど、風俗的な価値もあるし、何より一級の日本思想論、文明論。すごいの一言。
後半にある「独立について」の章を読んでいて、福沢諭吉らしさが見えた気が勝手にいたしまして、クリップします。文脈としてはたしか、外国人の脅威にふれたあとのくだり。
「だったら鎖国状態を保てばいいのでは?」という考えに対しての反対意見。
独立とは、独立すべき力があることを指していうのであり、偶然に独立している状態をいうのではない。(中略)たとえていうならば、いまだ風雨に逢っていない家屋のようなものだ。
(中略)私が考える自国の独立とは、わが国民をして外国と交際しても、百戦錬磨、その勢いを落とすことのない、大風大雨に耐える家屋のようにしたいということなのだ。
論旨が明瞭ということ。伝わるためにちょくちょくたとえを使用していて、それもわかりやすい。お人柄なのでしょうが、ポジティブで明るく、でも思考は深い。
フラットな目線も見受けられます。よくないと思えば嘆くし、バッサリいきます。たとえば、「孔子や「孟子」いったような古くから教えのみをよしとすると、思考は停止してしまうと述べてます。だから新しい聖人は見事にその後、生まれてこなかったと。効用はあるけれど、それでストップしてしまうのは、やめようよと。
たしか「日本の文明」の章では、こんなようなことを言います。日本は権利偏重が過ぎませぬか。権力にすがって誇示すべく、お上から与えられて改名するなど卑しい行為であると。歴史をみれば、それがイヤな人はちゃーんと断ってるよと。
時勢、気風の話もおもしろかったなあ。歴史上の人物がその人の目線で、歴史を語るのもおもしろい。それでいえば秀吉の評価論も。とにかくおすすめです。
というわけで以上です!
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