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『夏目漱石、現代を語る』を読んで

『夏目漱石、現代を語る 漱石社会評論集』を読みました。

あの夏目漱石が口語調で語ってる!まずその事実に驚きです。文明評論家としての漱石にフォーカスし、講演の内容をキュレーション(底本はいくつかあり)し、解説を付けたのが本書。

夏目漱石「らしさ」も随所に垣間見えます。かんたんなところだと講演の冒頭のジャブ。

そもそも講演なんてしないし一般の皆さんが全員興味を持てる話なぞできませぬ。だけど精一杯やってみるので聴いてください。暑いので短めに切り上げるので。みたいなかんじだとか。

当時の現代は明治維新から40年ほどたったなか、文明批評は資本主義の本質を突いているなど、やっぱりすごいなあと。たとえば西洋の開花の本質は「横着心の発達した便法」であると。

他にも文明開花のところは興味深かったです。西洋の開花は内発的であるが、ペリー来航以降の開国=日本の開花は、外発的であるという指摘。

外から無理押しに押されて否応なしにそのいうとおりにしなければ立ち行かないという有様になった 」日本は、「時々に押され刻々に押されて今日に至った 」。これが「御維新後外国と交渉を付けた以後の日本の開化 」の内実。つまり、外発的の開化であります。

ここから関連の箇所をクリップします。

かく積極消極両方面の競争が激しくなるのが開化の趨勢だとすれば、吾々は長い時日のうちに種々様々の工夫を凝し知恵を絞ってようやく今日まで発展してきたようなものの、生活の吾人の内生に与える心理的苦痛から論ずれば今も五十年前もまたは百年前も、苦しさ加減の程度は別に変りはないかもしれないと思うのです。
これほど労力を節減できる時代に生れてもその忝けなさが頭に応えなかったり、これほど娯楽の種類や範囲が拡大されてもまったくその有難味が分らなかったりする以上は苦痛のうえに非常という字を付加しても好いかもしれません。これが開化の産んだ一大パラドックスだと私は考えるのであります。

ケインズは「役に立つものを作るのが文明化。意味をつくったり、人に生きがいを与えたりするのが文化」といいました。いやまてよ、文明化は人々の生活を本当によくしているのか?

近代資本主義への批判が今日活発しているわけですが、夏目漱石はすでに指摘してたんですね。とてもおもしろく読みました。

というわけで以上です!

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