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『リア王』(シェイクスピア)〜光文社古典新訳文庫を読もうシリーズ〜
一生をかけて光文社古典新訳文庫をじっくり読んでみる。そんなシリーズを始めてみようと思います。
『リア王』を読みました。
これが黒澤明『乱』のもとにもなってる『リア王』か!ようやく読みました。
『マクベス』、『ハムレット』は亡霊や預言といった呪術的なメッセージが登場人物を突き動かしていく。
本作は裏切りや愛憎、人間の欲望だとか、どろっとしたものが発端となって生まれる悲劇。
本作の悲劇のきっかけとなるのはもちろんリア王自身。冒頭の分割シーンから「リア王、どうかしてるぜ!」といった感想を持ちます。
というのも、リア王のこれまでの偉大さがまだ描写されていないため、狂ってもあまり感情移入しないのです。
分割シーンでめちゃめちゃ怒るリア王ですが、コーディーリアやケントの追放は、いまとなれば優しい仕打ち。そのあとに両眼えぐるなどエグいお話も出てきます。
もう一つ、リア王はなんで引退しちゃったのか。さらっと娘に譲ってしまいます。
裏切りが起きる手前を考えてみると、リア王は長女と次女の愛の告白が嘘であるのを見抜けなかったし、グロスターもエドマンドの嘘を見抜けなかった。
つまり、登場人物たちがことごとく人を見る目がないんだよなあ。奇しくもグロスターは「その目」を物理的に取られてしまいます。
種本の存在
そうだ、解説にあっておもしろかったところ。シェイクスピアの作品には種本と呼ばれる原作がだいたいあるわけですが、リア王にも種本が存在します。
で、種本ではフランス軍が勝つ。つまりハッピーエンド的要素があったのです。
いくつものアレンジがほどこされていますが、幸せ要素はバッサリ。悲劇の味付けをするシェイクスピア。コーディーリアはやはり殺してしまいますか。
光文社古典新訳文庫とマンガ版、それぞれ楽しめました。そろそろ舞台も見たいな。
というわけで以上です!
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