お金の本質が見えてくる!『金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った』(安部芳裕)を読んで
昨年の父の日に「シャンパーニュ・バロン・ド・ロスチャイルド」を買ったのだけど手頃な価格ながら高級感もあってそして美味しい。
自分のような一般の感覚からすれば「ロスチャイルド」という言葉から連想するのは歴史であり、ブランドに近いものかもしれない。
そんなロスチャイルド家を通してみた世界史であり金融史を描いたのが本書。
ハローバイバイ関さん的な「信じるか信じないかはあなた次第です」という陰謀論のラベル付けで終わらないのは著書の筆力はもちろんだけど、その構成にあると感じました。
冒頭の章では金融の仕組み・構造として、銀行の信用経済・利子に光を当ててお金の問題点に言及し、終章では地域通貨にもチャレンジしている著者が未来の提言をしています。
内容は読者に判断してもらえればと思いますが、この構成・バランスがフラットな思想の読者にも手に取りやすい内容となっているとみています。
「価値の前借り」の問題点
さて、著者がまず信用創造のカラクリを明かすわけですが、お金の性質の一つである「価値の前借り」について考えてみたい。
ヤマザキOKコンピュータさんの著書の一節を挙げると、資本主義社会では「価値の前借り」だからこそ実現できることもある。もちろん意思と運と才能が必要だけど。
たとえば与作のAさんがいるとして、借金でチェーンソーなど購入して作業効率を上げてゆき、事業を大きくできる可能性がある。社会に対して創造する価値も増えるわけで、そう考えると借金も必ずしも悪ではない。
しかし、著者は利子とはバーチャルで実体はないといいます。一般の人々がお金をつくることはできず、利子の分のお金は椅子取りゲームのように、誰かから奪わなければ支払えない。
実際、ドイツでおこなわれた調査によれば、商品やサービス価格の25〜35%は、利子ないしは資本部分ということ。間接的に消費者は見えない利子を支払い、事業者は(場合によっては)借金を完済しようとすれば、新たに借金をしないといけない。
これらを「価値の前借り」が持つ両面性ととらえることもできるけれど、一ついえるのは利子の返済によって経済成長が強制されていること。
お金を持っている人がお金を増やすことのできる構造的には銀行家に富が集中するのは自明で、一方でそうやって社会全体が豊かになってきている事実。
ただし需要の冷え込みや、格差拡大による行き詰まりが起きるのも目に見えているわけで、ここで鎌倉投信の新井和宏『持続可能な資本主義』の一節を思い出しました。
壊れることを見越して儲ける、というフロー重視の利益を追求すると、究極的には戦争ビジネスに行き着いてしまいます。もちろん、すべての戦争が経済成長のために行われたなどというつもりはありません。しかし、歴史をみれば、戦争が短期的に経済を活性化させた例は少なくないこともまた事実です。
企業がフローを高めることを目的化してしまうと、結局成長するために破壊する、つまりフローを高める(=資本を形成する)ためにストックを削る(=社会を毀損する)という本末転倒の事態をもたらしてしまいます。
奇しくも新井さんは共感コミュニティ通貨eumoをつくっている。「利子」「地域通貨の可能性」「通貨発行権」このあたりを考えた一冊でした。
というわけで以上です!