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『2030年の世界地図帳』(落合陽一)を読んで

『2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望』を読みました。

「なぜGAFAMのような企業が欧州から生まれないのか」といったような議論の際、「そんな企業が生まれたら伝統が壊れてしまうじゃないか」といったような発言が出たと。何か読んだ本か記事で、記憶しています。

じつはその文脈にSDGsが多分に関わっていたんですね、本書を読んでクリアになりました。最近よく聞くSDGsを最低限把握しようと思って読んだ一冊です。クリップしながら自分の整理をしてまいります。

まずはSDGsと持続可能性について定義から確認です。

SDGsって?

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、持続可能な世界の実現のために定められた世界共通の目標のことです。

持続可能な世界って?

「持続可能な世界」とは、今現在生活している私たちの要求を満たし、かつ、将来の世代が必要とする資産を損なうことのない社会のことです。

なるほど。その実現のために、貧困から環境、労働問題まで17のゴールを掲げたSDGsは、2010年の国連サミットにおいて全会一致で採択され、2030年の達成を目標としています。

で、SDGsとヨーロッパの関係についです。西欧はその長い歴史のなかで、近代社会の基礎となる概念をいくつも生み出し、それらを世界に輸出し、19世紀以降の世界覇権を握りました。

法と倫理をうまく使う方法論で、21世紀になって再びヨーロッパは影響力を見せ始めています。責任投資原則のPRIや、個人情報の流通を規制するG D P R、ESG投資、そしてSDGsなんですね。

『グーグルが消える日』なんて本も出ていますが、世界の経済がヨーロッパ中心に動き始めそうなのはたしか。時代を整理すると、このようなかたちになるそうです。

2 0 0 0年代は G A F A Mに象徴されるアメリカン ・デジタルの時代

2 0 1 0年代後半は B A T Hに駆動されるチャイニ ーズ ・デジタルの時代

2 0 2 0年代はS D G sがもたらす新たなパラダイム、第三極としてのヨ ーロピアン ・デジタルの時代

なんとなく流れはつかみました。ここからSDGsについてもう少しふれようと思いますが、ESG投資についてかんたんに。

ESG投資って?

環境 ( E n v i r o n m e n t ) 、社会 ( S o c i a l ) 、ガバナンス ( G o v e r n a n c e )の頭文字で 、これらの 3要素を考慮した投資のことです 。

S D G sに対して 、E S G投資は 比較的うまく回っているようです。それはなぜか。

企業に対するプレッシャ ーとして機能するので 、持続可能性を顧みない企業が市場競争に敗れて消えていくからです 。その消え方には 2通りあります。1つはその企業のサ ービスや商品が売れない 、つまり消費者に嫌われるパタ ーンですね 。もう 1つは事業を続けようとしても出資が集まらない 、投資家に嫌われるパタ ーンです 。

ESG投資はイメージしやすいです。

で、S D G sですが、17の目標に対して実践するというか、自分ゴトにするのはむずかしいでしょう。ただ、目先の利益・生活・自分・損得を気にしすぎているのが現代の日本だとしたら、方法として有効なツールだと思いました。

日本には歴史と伝統があります。歴史が価値を創造するヨーロッパ的文化と日本は相性が良いのではないでしょうか。

落合さんはそれを認めつつ、明治維新と敗戦という二度の巨大な文化的断絶が少なからず日本の低迷に影響していると言及し、その打ち手の一つとして「デジタル発酵」を提言しています。

発酵、おもしろいです。なかでも博報堂の市來さんの発酵の思想の核心「アニミスティックかつ非連続」という言葉に注目しました。意外性、非連続、混ざり合う、このあたりがキーだと感じます。

それでは最後にS D G sに関連した「貧困」の章からハッとした箇所をクリップして終えます。

経済学者、アマルティア・センは、「ケイパビリティ(潜在性)・アプローチ」を提唱しました。(中略)このアプローチにおいて貧困とは、単に金銭を多く持たないことではありません。未来に開かれた可能性(潜在性)を持たないことが、ここで定義する「貧困」となります。

逆説的にいえば、未来への可能性を感じることがいかに大切であるか。大事な言葉だなと思いました。

ビジュアル化されたテーマごとの世界地図等のデータや、池上彰さんはじめとした対談パートの肉付けなど、適切なボリューム感で素敵な本です!

というわけで以上です!

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