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【地震火災】2次出火に注意しましょう

地震の強い揺れに伴い火災が発生するだけでなく、揺れが収まった後も2次的な出火危険があるので注意しましょう。
過去に発生した地震火災の事例から注意ポイントをご紹介します。

2次的出火危険がある箇所

①通電火災

停電が復旧したときに出火危険があります。
代表的な出火するパターンは次の通りです。

  • 落下物などで傷ついたコードが通電と同時にショートして出火

  • スイッチが入ったままの電気ストーブに可燃物が落下していて、通電により加熱され出火

  • 水がこぼれヒーターが露出した熱帯魚の水槽が、通電により空焚き状態となり出火

通電火災を防ぐためには、停電復旧前にブレーカーを落とすとともに、電気器具をコンセントからすべて抜いてしておくのがよいでしょう。
停電が解消されてもすぐにブレーカーを戻すのではなく、室内や外周を点検しましょう。建物の配線系統に異常がないか確認するためです。
津波で浸水した形跡があったり、雨漏りで天井や壁が濡れている場合は、ブレーカーを戻しては危険です。出火危険だけでなく漏電による感電危険もあるからです。
さらに、照明器具やエアコンなどの本来固定されているべき電気器具をチェックしましょう。もし、脱落や位置のずれがあったら電線の引き込み部分が損傷している可能性があるので、専門の業者に点検・修理してもらうまでは、ブレーカーを戻さないようにします。

ブレーカーを戻す際の注意事項

配線系統に異常が認められなくても、損傷している電気器具は、使用はもちろんのことコンセントに接続するのもやめましょう。内部の回路が損傷しているとスイッチのオンオフに関わらず出火してしまう可能性があるからです。

損傷した電気器具はコンセントに差し込まない

焦げたような臭いや異常な音を感じたら直ちにブレーカーを落とし、専門業者に点検を依頼しましょう。

②ロウソクなどの裸火

照明の代わりにロウソクを使用する方がいますが、余震で転倒したり、可燃物が落下したりして出火する危険がありますので、やめましょう。
地震の後は室内が散乱していることが多く、余震が起こらなくてもちょっとしたはずみで可燃物が接触してしまうこともあります。

また、カセットコンロなどで煮炊きをすることもあるでしょう。
使用は短時間にとどめ、周囲に可燃物を置かないことやその場を離れないようにすることが重要です。

カセットコンロ使用時の注意事項

③損傷した煙突

風呂釜やボイラーなどの煙突に異常があると、正常な燃焼が行われず、釜が過熱して出火することがあります。

また、煙突が屋根を貫通する部分は、本来断熱性のある部材が取り付けられ、木材が接触しないようになっていますが、地震の揺れによって断熱部材が脱落して木材が接触してしまうことがあります。
この状態で使用すると煙突の熱で木材が加熱され出火する危険があります。

煙突貫通部からの出火危険

④津波で浸水した車両

海水は導電性があるため、津波で浸水した車両のバッテリーが原因となり出火することがあります。
水が引いた後でも電極部分などに付着した海水がトラッキング現象を誘発し発熱発火してしまうのです。

一度出火すると搭載燃料に引火したり、内装材などに燃え移ったりして相当な火力となるので危険です。

津波による浸水後出火した車両(東日本大震災)

バッテリーを外すなどして電気が流れないようにしておきましょう。

➄太陽光発電システム

住宅用の太陽光発電システムは、次のように構成されています。

代表的な住宅用太陽光発電システム

停電時でも自立運転に切り替えると住宅内に電力を供給できるので、災害時には役立つと言われていますが、地震によりシステムが一部でも損傷すると注意が必要です。太陽光が当たれば勝手に発電してしまうからです。状況によっては漏電やショートを起こし発火する危険性があるでしょう。
発電を停止させるには、太陽電池パネルをシートなどで遮光しなければならないのですが、専門の技術者が行わないと大変危険です。

以下は一般社団法人 太陽光発電協会が発信している留意点です。

●ご自宅に太陽光発電システムを設置されている所有者(ユーザー)の方へ 【1】太陽電池パネルは、破壊されていても日光があたると発電し感電の恐れがあります。 一般の方は危険ですので、絶対に触らないで下さい。 【2】被害への対処の実施にあたっては、ご購入の販売・施工業者に連絡し適切な処置を依頼して下さい。
1.「震災で倒壊の危険のある家屋に設置された太陽光発電システム」取り扱い上の留意点
太陽光発電システムは、商用電力系統が停電すれば自動的にシステムの運転を停止しますが、停電が復旧し日射があれば自動的に運転を再開します。倒壊の危険のある家屋の所有者の方は、機器や配線の損傷から漏電の危険性がありますので、必ず分電盤の遮断器を切りパワーコンディショナの運転ボタンを停止にした上で避難して下さい。その後、ご購入の販売・施工業者に連絡し、適切な処置を依頼して下さい。
2.「家屋と共に倒壊した太陽光発電システム」取り扱い上の留意点
住宅等の屋根に設置されていた太陽電池パネルや、屋内外に設置されていたパワーコンディショナ、接続箱が震災で破壊され、家屋などのがれきと共に堆積している様な場合、太陽電池パネルに太陽の光が当たれば発電する可能性があり、素手などで触れると感電する恐れがあります。又、太陽電池パネルに配線でつながっている接続箱やパワーコンディショナなどからの漏電により、感電や火災の危険もあります。太陽電池パネルが震災で破壊された家屋に残っている場合や、破壊によって屋根から外れ、がれきとなって堆積している場合は、以下の事項に注意して作業を行って下さい。
~作業を行う上での注意事項~
【1】救助及び復旧作業等で壊れた太陽電池パネル、接続箱、パワーコンディショナに触れる必要がある場合は、絶対に素手で触らず、電気用ゴム手袋などの絶縁性のある手袋を使用して下さい。
【2】作業にあたっては、ブルーシートや段ボール等で覆いをするか、裏返しにする等、出来るだけ太陽電池パネルに光が当たって発電しない様にして下さい。
【3】複数の太陽電池パネルが配線でつながっている場合は、パネル間の配線コネクタを全て抜いて下さい。
【4】太陽電池パネルと接続箱、パワーコンディショナなどが配線でつながっている場合は、全ての太陽電池パネル間の配線コネクタが抜かれていることを確認した後に配線を切断し、配線の切断面から銅線がむき出 しにならない様、絶縁テープなどを巻いて絶縁して下さい。尚、配線の切断及び絶縁作業は、必ず電気工事士が行って下さい。
【5】夜間や日没後で日射等の光が当たらない時に作業を行う場合でも、日射のある時の作業と同様に上記の注意事項に従って対処して下さい。

一般社団法人 太陽光発電協会
「震災によって被害を受けた場合の太陽光発電システム取り扱い上の留意点」より

⑥廃棄物

復旧に伴い多くの「災害ゴミ」が集められるようになります。普段なら分別されているので問題が生じることはないのでしょうが、災害時は十分に分別することが困難なので、発火性の物品が混入するなどによって廃棄物集積場が発火してしまう事例が絶えません。

災害廃棄物集積場での出火(2022年8月集中豪雨における新潟県村上市内集積場)

廃棄物から出火する原因としては次のようなものが考えられます。

  1. 電気的な発熱現象により出火

  2. 科学的な発熱現象により出火

  3. 引火性物質の混入により出火

1は、リチウムイオンバッテリーに代表されるような電池類の混入により発火します。
リチウムイオンバッテリーの場合、外力が加わると内部でシュートし、激しく燃え上がることがあります。平時でも多数の事故事例が報道されているのでご存じの方も多いでしょう。これが集積された廃棄物の中で起きると、可燃ゴミなどに次々と着火し、短時間で燃え広がってしまう可能性があります。

リチウムイオンバッテリーが混入したゴミの出火(東京消防庁)

アルカリ乾電池やマンガン乾電池でも、リチウムイオンバッテリーと比べれば弱いものの発火に十分なエネルギーを秘めているので注意が必要です。

2は、木くずや油脂類などが、空気による酸化、雨水や空気中の水分との反応、生物発酵などにより化学反応を起こし徐々に発熱して起こります。
ゴミの量が少ないと発熱よりも放熱の方が大きくなり発火は起こりませんが、山のように多量になってくると、放熱が少なくなり蓄熱していきます。
したがって、こうした化学反応を起こす可能性のあるゴミは、多量に積み上げないようにするべきです。そうすれば、万が一出火しても消火がしやすくなります。

3は、ガスボンベやガソリンが入った携行缶などが原因となります。それ自体が自然発火することは起こりにくいのですが、ゴミ投棄などの際に生じる火花や摩擦熱で引火することがあります。
平時でもゴミ収集車から出火する事例が絶えないので、ご存じの方も多いでしょう。

ゴミ収集車からの出火実験(NITEによる再現実験)

災害時には人命救助や復旧・復興が優先されますので、普段のような注意力が及びにくくなります。
その結果、思わぬところから出火し、大きな2次災害につながってしまうことも珍しくありません。
平時と比べて消防力が低下しており、出火しても迅速な対応ができないことも危惧されますので、出火防止は重要でしょう。
困難な状況下であることは十分承知していますが、一人ひとりが少しずつ注意力を高めていただければ、出火防止につながるはずです。
また、公的機関やボランティア等により、危険性の広報やパトロール等を実施するしくみをつくっていくのも重要ではないかと思います。


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減災研究室LaboFB・永山政広
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