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ぬいぐるみが語った本当の気持ち:話せないクライアントとの対話
はじめに
カウンセリングの現場では、クライアントがなかなか言葉を発せず、沈黙が続くことがあります。話すことが苦手、言葉にするのが怖い、気持ちをうまく整理できていない――その理由は人それぞれですが、「話せない」からといって、気持ちがないわけではありません。
ある日、私が担当したクライアントも、なかなか話し出せませんでした。
はじめは公式LINEのチャットでやり取りをしていましたが、お話を聴いてくださいと依頼をいただきZoomを使ってカウンセリングをおこなったのですが、目を伏せたまま、小さく頷くか、かすかに表情を変えるだけでした。
そんなとき、私は「手元にぬいぐるみはありますか?ぬいぐるみを使って話してみませんか?」 と提案しました。
最初は戸惑っていたクライアントでしたが、ぬいぐるみを手に取ると、ゆっくりとした言葉で、自分の気持ちを語り始めました。
「話せない」クライアントと向き合うときに、ぬいぐるみがどのように会話の橋渡しとなったのか、また言葉にできない気持ちをどう表現できるのかについてお伝えします。
「ぬいぐるみ」が会話のきっかけになった瞬間
1 言葉が出てこないクライアント
そのクライアントは、20代の男性でした。カウンセリングルームに入るなり、彼は目線を下げ、手をぎゅっと握りしめていました。
最初の数分、私はできるだけ柔らかい雰囲気を作りながら話しかけました。
「今日は来てくれてありがとうございます。」
「ここでは、何を話しても大丈夫ですよ。」
しかし、彼の返答はほとんどなく、ただ小さく頷くだけ。沈黙が続きました。
2 ぬいぐるみを差し出す
私は部屋に置いてある、小さなペンギンのぬいぐるみを手に取り、カメラに写し相手の画面に見えるようにしました。
「もし言葉にしにくかったら、この子に話してみませんか?」と聞いた時相手の方が驚いたことを今でも覚えています。
次第に、ぬいぐるみに向かってポツリポツリと話し始めました。
「……この子は、寂しいって思ってるみたいです。」
「最近、疲れたみたい。」
これは、彼自身の気持ちをぬいぐるみを通して表現したものでした。
なぜぬいぐるみが「話しやすさ」を生むのか?心理的な背景
1 投影法:自分の気持ちを別のものに乗せる
心理学では、「投影法(プロジェクティブ・メソッド)」 という手法があります。これは、言葉にしづらい気持ちを、別のものに映し出すことで表現しやすくする技法です。
クライアントがぬいぐるみに話しかけたとき、それは「自分の気持ちを、ぬいぐるみに投影している」状態でした。
「寂しい」「疲れた」などの言葉は、本当は彼女自身の心の声。でも、直接「私は寂しい」と言うのは難しい。だから、ぬいぐるみの気持ちとして語ることで、安心して自己表現できるのです。
2 安全な距離を作る
人と向かい合って話すと、どうしても緊張してしまいます。しかし、ぬいぐるみという“クッション”を間に置くことで、心理的な安全距離を確保することができます。
直接私と目を合わせる必要がなく、「ぬいぐるみ」に向かって話すことで、気持ちのハードルが下がったのです。
「話せない」クライアントと向き合うときの工夫
1 無理に話させない
沈黙が続いても、「何か話してください」と無理強いしないことが大切です。沈黙もまた、クライアントが自分と向き合う大事な時間。
沈黙があるとカウンセラー側が焦ってしまうこともありますが、安心して待つことで、クライアントが自然に話し出すきっかけが生まれることもあります。
2 言葉以外の表現方法を探る
言葉だけがコミュニケーションの手段ではありません。以下のような方法もあります。
「絵を描いてもらう」:言葉にならない気持ちを、色や形で表現する。
「書いてもらう」:ノートやメモに、自分の気持ちを書き出してもらう。
「ジェスチャーで表現」:言葉にするのが難しいとき、手や表情で伝えてもらう。
3 安心できるツールを活用する
ぬいぐるみのような、「親しみやすく、安心できるアイテム」を使うのも有効です。クライアントが少しでもリラックスできる方法を一緒に探ることが大切です。
ぬいぐるみが教えてくれたこと
このカウンセリングの後、クライアントはぬいぐるみを手にしながら少しずつ言葉を増やしていきました。
「この子は、前より少し元気になった気がします。」
そう語った彼の表情も、少し明るくなったように見えました。
言葉が出ないからといって、気持ちがないわけではない。
話せなくても、伝えられる方法はある。
ぬいぐるみは、そのことを改めて私に教えてくれました。
おわりに:話せなくても、気持ちは伝えられる
カウンセリングは、「話すこと」だけがすべてではありません。「自分の気持ちを表現する方法は、人それぞれでいい」 のです。
もし、「話せない自分はダメなんじゃないか」と感じている方がいたら、ぜひ安心してください。話せない時間も、ぬいぐるみや絵を通して伝える方法も、すべて大切な自己表現の一つです。
この体験は去年体験した事なのですが、なぜ今お話をしたのかと言うと、このクライアントさんがこの経験を活かして自分もカウンセラー活動をしたいと言って頂けたからこの体験をお伝えしたいと思い、本人の許可を得て書かせていただきました。
彼のように辛かった時期を乗り越えた経験を活かしてカウンセラー活動を始めたいと思われている方は一度ご相談ください!
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