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『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』が教えてくれた本当の英国の姿
先日、ワクチン接種に行くために乗った地下鉄車内で読みだしたら、あまりに面白かったがために、降りる駅を乗り越してしまった・・・といういわくつきの本。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 ブレイディみかこ
英国・ブライトン在住の筆者は、アイルランド人の配偶者と、中学生の息子の3人暮らし。この息子が、市でトップレベルのカトリック小学校を卒業後、「元底辺中学校」と呼ばれ、殺伐とした英国社会を反映するリアル学校に入学。人種差別が当たり前の移民の子、アフリカから来た少女や貧困に苦しむ友など、人種・貧富の差・ジェンダーなど、なんでもござれのクラス。その中で、様々な葛藤や疑問を抱きながら、個性的な学校生活を送る息子と、その母である筆者のリアルストーリー。
とりわけ筆者と息子の会話が、とてもユニークで、真剣で、心惹かれる。息子の意見、考え、疑問などに、一つ一つ丁寧に、わかりやすく、愛情をもって答える筆者。適当に返事したり、ごまかしなんてゼロ!この2人の会話の中に、今の英国の社会問題が浮き彫りになってくるのを感じずにはいられない。
私自身、その昔、ほんの数か月英国にいたことがある。ホームステイ先の家族に恵まれ、英語学校のクラスメイトとも楽しい交流ができた。もちろん、そのときは、英国の陰の部分なんか全く気にもしなかった。目先の楽しさだけにしか気づかず、当時、この国で起こっている社会問題にも無関心。(本当にお気楽な身分・・・)
だからこの本を読むことによって、英国という国の中で、現在、渦巻いている社会問題を、今、やっと自分なりに把握することができたのだ。中でも、
「自分で誰かの靴を履いてみること」
これは、11歳の息子がシチズンシップ・エデュケーションの試験で、「エンパシー(empathy・他人の感情や経験などを理解する能力)とは何か」と問われ、書いた答えだ。
他人の立場になってみるという意味だそうだが、この言葉にハッとさせられた。自分と違う理念や、信念を持つ人が何を考えているのだろうと想像すること。このことは、まさに私たちが絶対に忘れてはいけないことだと思う。自分は今まで、どれだけ誰かの靴を履いたのだろう・・・と考えても、情けないことに答えは出ない。
貧富の差や、階級の上下、移民と英国人など多くの対立が深い英国で、11歳でエンパシーを学ぶというのは、目先にとらわれず、大局的に見た教育の未来を考えていると強く思う。
この本は、私が全く知らなかった英国の深い影の部分をわかりやすく示してくれた。そして、息子にとって「母ちゃん」である筆者は、「母ちゃん」の想いを息子に伝え、一読者の私にもしっかり寄り添い、教えてくれた。
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