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連載|第三章 「失敗を恐れず」行動する



18 石橋を叩いて渡っていないか?

完璧主義の人は、石橋を叩いて渡る。
上手に力を抜く人は、見切り発車する。

「週末、起業を始めたい」と、二人の方が私の「副業コンサルタント」友人(またも弓道仲間💦)のところに相談に訪れました。

一人目のAさんは、メーカーの経理部に務める慎重な性格の持ち主の方でした。

始めたい事業を決めた後、全てのことに対して、「まず情報を集めてから」「良いやり方を勉強してから」と慎重です。

ホームページ作成、ブログ・メルマガ発信、セミナー開催と、事業を軌道に乗せるにはやることが目白押しなのですが、一向に進みません。

一方、Bさんは自動車関連メーカーの事務の方で、思ったらすぐに行動する人です。

未経験のことでも試行錯誤しながら進んでいきます。

ホームページは、モデルとなるサイトを1日で絞り込み、業者に発注しました。ブログはとりあえずタイトルを決めて、雑な記事ではありますが、毎日の習慣としてスタートを切りました。セミナー開催は、とりあえず日程と会場を押さえてしまうという行動の速さです。

さて、1年後、どうなったでしょうか?

Aさんは、ようやくホームページを完成させましたが、ブログは始まって2ヶ月足らずでページビュー30ぐらいです。メルマガに至っては、良いタイトルが考え付かないと言って、まだスタートしていません。セミナーは、「話すのが苦手」という理由で開催をずっと躊躇しています。

Bさんには、すでに収益が生まれていました。

この1年でセミナーは5回開催、毎回の参加者数は5名前後と少数ですが、その後のコンサルティングサービスの契約に繋がっています。

また、メルマガもブログも習慣化しているおかげで、メルマガの登録者は500を超えていました。最近では1件、雑誌社(ニューメディア)から取材の依頼も来て、メディア実績も生まれたそうです。


完璧主義は挑戦に弱い

この例の通り、完璧主義思考の人は、リスクや失敗に敏感な傾向があります。

定型業務をミスなく終わらせるには、プロセスに忠実な完璧主義思考は有効なのですが、自分の能力を超える未知な仕事の時は、時に見切り発車することが必要です。

見切り発車で動き、トライアンドエラーを繰り返すことで道はどんどん拓けていくかもしれません。



19 いきなり完璧を目指していないか?

完璧主義の人は、いきなり完璧を目指す。
上手に力を抜く人は、まず叩き台を作る。

とあるビジネス書で拝読した話ですが。

元・タカラトミー(TOMY Company, Ltd.)勤務で、入社1年目に貯金箱「人生銀行」を企画し大ヒットさせた、現在はフリーのプランナーとして活動中の遠藤千咲さん。彼女は雑誌『日経ウーマン』が主催する「ウーマンオブザイヤー2008」に輝きました。

あるインタビューで大ヒットの企画を作るコツを遠藤さんに聞きました。その時に教えてくれたのが、企画は、まず「ふわっと作る」ということです。

「ふわっと企画を作る」とは、企画の大枠を作ったらあえて詳細は作りすぎずに、大枠を基に上司やメンパーと話をするということです。

遠藤さんは「頑張り屋の後輩で、細かい部分まで一生懸命作ってくる子がいますが、変更したり、アドバイスをするのが忍びなくなる。それよりは緩く出してくれれば、アイデアを提案する余地があってアドバイスしやすい」とおっしゃっていました。

叩き台は完璧に作りすぎないほうがいいということですね。時間もかかりますし、修正や詳細を作る時間も削られます。また、大枠だけ緩く作っておけば、相談相手もアイデアを出しやすくなります。


プロトタイプ思考でいこう

同じことが、他の仕事でも言えますね。

例えば、上司に報告書を依頼されたとします。完璧主義の人は、細かい部分まで作らないと伝わらないのではないかと不安になり、つい時間をかけて作ってしまします。そして、期限直前に上司に提出したものの、「こうじゃないんだよね」と言われたら、徹夜で一気に修正ということになります。

上手に力を抜く人は、先ほどの遠藤さんの例と同様、簡単に叩き台を作って調整します。

必要なのは、叩き台を作るときに、大枠と詳細を明確に区別して、詳細は省く勇気です。同時ても細かい部分に目がいきがちですが、概略が伝わればいいのです。

こうして、叩き台をブラッシュアップしながら、進める考え方を、「プロトタイプ(Prototype;試作品)思考」と言います。

メーカーでは、本製品にする前に試作品を作り、事前に方向性をすり合わせます。

そうすれば、相手の希望を確認でき、力の入れどころと抜きどころがわかるからです。



20 一発勝負で考えていないか?

完璧主義の人は、一発勝負で考える。
上手に力を抜く人は、確率論で考える。

勝間和代さんは、著書『「有名人になる」ということ』(ディスカヴァー)で、次のように「じゃんけんの法則」について提議しています。

様々なチャレンジは全て確率論です。すなわち、確率が低い勝負出会ってもそれを繰り返し行っていけば、いつかは負ける確率が下がってどこかで勝てるのです。

ただ、多くの人はそのような努力を50回、あるいは100回は続けません。しかし、もしチャレンジしても特に失うものがなければ、勝負をし続けることです。

そうすれば必ず勝てます。私は多くの有名タレントや有名経営者にインタビューする機会を得ましたが、本当に、全ての人に共通するのが、

この「じゃんけん、じゃんけん、またじゃんけん」の精神です。

私は、最初のブログを書き出す際に、サーバー選びや文章の下書きなど、十何名の友達に意見を聞いてみました。その結果、何名の友達から意見をいただき、最初のブログ内容、方向性やサーバーなどを決めました。

もともと臨床心理士、飲食系経営企画や人材コンサルティングなどをしてきた私は、確率100%のアプローチはないと考えていたので、確率論で考え、じゃんけんをたくさんしたのです。


打ち手を複数持つようにする

完璧主義の人は、一つの打ち手で失敗しないように頑張ります。失敗を恐れるあまり、数を試すことを忘れてしまいがちなのです。

上手に力を抜く人は、一つのことに100%を求めず、失敗も受け入れながら、いくつかの施策を試し、全体でうまくいけばいいと考えます。

ベンチャー企業に投資して、その投資収益で稼ぐことを生業としている、ベンチャーキャピタル(venture capital)があります。彼らは、絶対に一つの企業への投資でうまくいくと考えません。

十社があれば、全くダメな会社が中に二社があっても、将来化ける会社が二社あればいいと、複数同時に投資をします。これが、ポートフォリオ思考(portfolio thinking)です。

ビジネスで新しい事業やサービスがうまくいくかどうかは、所詮やってみないとわかりません。新しい仕事のやり方、工夫も同じです。

トライ・アンド・エラー(試行錯誤)なので、やはり確率論なのですね。


21 心が折れやすくないか?

完璧主義の人は、心が折れやすい。
上手に力を抜く人は、徐々に精度を上げる。

孫泰蔵さん(孫正義さんの実弟)は、ガンホーの創業者で「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)をヒットさせました。

パズドラをヒットさせるまでには、長い年月がかかっているのですが、そのことはあまり知られていません。

実は、同社は、ケータイゲームの会社がどんどん撤退していった中、開発を根気強く続けたことで成功を収めたのです。

孫泰蔵さんは、これをがっかりタイムを乗り切ると表現しています。がっかりタイムとは、次のようなものです。

努力と成果はすぐに直結すると考えがちですが、実際は努力し、粘り強く続けた結果、一気に成果がで始めるタイミング(ぶっちぎりポイント)がやってくるという発想です。

新しいことにチャレンジしようとする時は、試行錯誤の繰り返しの過程で徐々にうまくいくようになるものです。

だからこそ、その試行錯誤をどれくらい長く続けられるかで、仕事の上達も変わってきます。


少しずつブラッシュアップしていけばいい

仕事では「うまくいかない・・・」という事態とたくさん向き合う必要があります。

完璧主義の人は、今日一日の結果について、「できた」「できなかった」と評価しがちですが、グレーゾーンがないと常に、「できなかった」という自己否定の連続で疲弊してしまいがちです。そして、途中で投げ出してしまいがちでしょう。

特に、自分のマインドやスキルを大きく変えたり、仕事のやり方を変える場合、成果が出るまでに時間がかかる場合があります。今、一つ一つがうまくいかなくても、学び続けば、必ず少しずつ前進していきます。

一ヶ月、三ヶ月、半年、一年、三年、五年と継続したらどうなっていくか、想像してみましょう。

小さな一歩でも、続けていけば、掛け算効果でどんどん成果は拡大していくのです。だからこそ、少しずつ磨き上げていくことが重要です。小さく生んで、徐々に磨き上げていく、長期戦の発想を取り入れてみてください。

上手に結果を出す人は、1ミリでも進んでいることを喜び、成果が出るまでにはがっかりタイムがあることを踏まえ、ただ淡々と努力を続けます。

そういう人が、ぶっちぎりポイントを迎え、周りと圧倒的な差をつけるのです。



22 どうしようもないことに悩まれていないか?

完璧主義の人は、どうしようもないことに悩む。
上手に力を抜く人は、自分のできることに集中する

私は以前、NYにあるレストランに所属する店員20名のコンサルティングをしていました。この店舗は、商品ラインナップが少なく、市場で少し不利な状況に置かれていました。さらに、店員に課せられる目標は前年比で30%以上アップしていて、不満が蔓延する状況だったのです。

一人一人のと対談していくと、消極的な人と積極的な人に二極化していました。(そこには文化や国事情の相違がありますが、とりあえず見逃しましょう!)

消極的なグループは、頑張る気持ちはあるものの、不平不満でモチベーションが圧倒的に低下していました。彼らは、「商品自体が悪い」「オーナーの目標がめちゃくちゃだ」という部分に目がいっていたのです。

一方、積極的なグループは、置かれた状況の中で自分たちが何をするか、何ができるかを徹底して考えていました。そのうちの一人に不満はないのかと聞くと、次のように答えました。「それは確かにあるけれども、他店舗も同じような悩みを抱えているからね。そんなことより、この環境で相手にどれくらい圧力をかけるか、他店舗との違いをどのようにアピールするかを考えた方が生産的ですよね」

これが思考習慣の違いです。オーナーの方針や商品戦略などは、一人の店員がすぐにどうこうできることではありません。だからこそ、ここに思考の焦点がいくと、不平不満ばかりでやる気が起こらないのでしょう。

当然、成果も、精力的に行動した積極的なグループの人たちのほうが上げていました。


ストレスをコントロールする

まずは、自分の思考が、コントロールできることとできないことのいずれに向かっているかをチェックしましょう。上手に力を抜いている人たちは自分にできることに集中し、どうしようもないことは考えません。

完璧主義の人は、不測の事態や、他人がどのように動くかなどの不確定要素にやきもきさせられます。しかし、他人や外部環境は自分ではコントロールできませんから、本当にどうしようもないのです。だからといって、放置していいわけでもありません。大切なことは、「自分ができることをやる」ということです。

例えば、不確定要素をあらかじめ加味しておいて、代替案や商品を考えておきましょう。そのように情勢やオーナーの方針などのコントロールできない部分に柔軟に適応していってこそ、上手に力を抜く人になれるのでしょう。



23 すべてのリスクに備えようとしていないか?

完璧主義の人は、すべてのリスクに備える。
上手に力を抜く人は、大きなリスクに徹底して備える。

下記のすべてはフィクションですが、よくある話です。

システムエンジニア(SE)のAさんは、完璧主義でとても心配性です。リスクに敏感で、トラブルが起きないように小さなリスクにも備えます。プロジェクトメンバーの仕事もミスがないかどうか、念入りにチェックします。

しかし、深夜残業を繰り返した挙句、疲れ果てた目でチェックしたため、とても重要な項目を見逃してしまい、新システム稼働時に初日からトラブルが頻発しました。

Aさんは、自分を責めて挽回しようと頑張りましたが、精神的に限界を迎えて休職することになりました。

一方、上手に力を抜くBさんは、大きなプロジェクトをいくつも抱えながらも、構築したシステムはほとんどトラブルが起きないことで有名です。いつもオフィスを散歩するように歩いている姿には余裕すら感じます。

彼の仕事の仕方を見ていると、大きなトラブルの原因になりうる箇所を念入りにチェックして、多くの社内のアドバイザーに意見をもらっています。いざ、構築するときには、メンバーが作業を間違わないようにチェックリストを作って配布することで、人為的ミスを防いでいました。

このように、大きなリスクがある箇所を集中的に対処することで、トラブルを防ぐことができるのです。


「モグラ叩き思考」は疲弊するのみ

小さなリスクにばかり目がいってしまうと、大きなリスクへの備えができなくなり、盲点が生まれることがあります。

このように小さなリスクや心配の種を徹底して潰すことを「モグラ叩き思考」と呼びたいと思います。

モグラ叩き思考でリスクに取り組むと、視野が狭くなり、すべてのリスクに対して同じ労力で対処に当たるため、疲弊します。

たとえば、資料作成で、誤字脱字チェックに頭がいきすぎて、重要な内容が漏れていることに気づかないといった具合です。誰でも経験したことがあるでしょう。

完璧主義の人は、失敗するリスクへの恐怖からどうしてもモグラ叩き思考で小さな備えをすることに敏感です。

上手に力を抜く人は、重要度の高いリスクから優先して対処し、全体の大きなトラブルや問題を未然に防ぎます。

最終的にリスクに対する備えが十分できれば、恐怖心を最小限に収め、新しいことにも挑戦できるようになるでしょう。



特集 – 成長の曲線

当章の21節にて取り上げた孫泰蔵さんの「ぶっちぎりタイム」「がっかりタイム」節があるように、今章の特集もそれについて、さらに心理学の学習理論を軽く踏まえたうえで、少し掘っていきましょう。

成長を想定するとき、努力をすればすぐに現れるものだと考えがちなので、通常、下図のAのような直線的な上昇をイメージするでしょう。しかし、効果の高い仕事は一定の成果が出るまでに、下図のBのような二次曲線的な動きをします。

この想定の成果と実際の成果の差がある期間が「がっかりタイム」です。これは成長のために耐え忍ばなければならない、一見報われない期間です。しかし、この期間を耐え忍んでこそ、「ぶっちぎりタイム」が訪れます。

つまり、中長期的な視野でプラッシュアップをしていくという思考があるかどうかで、現れる成果は変わってくるのです。


つづき

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