蕗谷虹児 官能のバランス
蕗谷虹児(ふきや こうじ)1898~1979
モダンなロマンティシズム。
洗練された抒情の世界。
蕗谷虹児は大正から昭和にかけて活躍した画家です。
新潟に生まれ、上京して日本画を学んでいた彼は、竹久夢二に認められたことから少女雑誌の挿絵画家としてデビュー。
その詩的で繊細な世界は当時の乙女たちに美しい夢を与えました。
童話や絵本などのジャンルで活躍した虹児ですが、ただ愛らしいだけでなく妖艶な空気も感じられるのが彼の作風。
時にはビアズリーのような白黒の耽美な絵やエロティックな作品も多く描いています。
また、詩人やアニメーション監督としての顔も持ち、彼の芸術性の深さを感じられます。
私も東京の弥生美術館などで蕗谷虹児の作品に何度も触れ、その独特な芸術に感銘を受けました。
竹久夢二の柔らかで自然的な女性たちや高畠華宵の艶麗で優雅な女性たちとも違う美しさ。
その間の世界に住む女性たちのロマンスと秘めたエロティシズムを描いているようにも感じます。
官能は美しさには不可欠のものと考えます。
ただその表現のバランスは難しい。
物足りなくても魅力に乏しく、やりすぎては下品になってしまう。
その絶妙なバランスは蕗谷虹児の芸術から得るものがあると思います。