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【日記】10月12日〜10月18日

10月12日
筒美京平氏が亡くなった。日本が誇る偉大な音楽家がまた一人この世を去った。作曲家としてだけでなく"プロデューサー"という視点で自らの音楽が広く聴かれるためにはどうするべきかを常に考えている方だった。我々は筒美さんが作ってくれた道を歩いている。
ピチカート・ファイヴ「恋のルール・新しいルール」を聴いて追悼する。

夜、吉祥寺NEPOに出演するto Clementineのライヴを配信で見る。paint a rainbowから改名し、メンバーチェンジを経た彼らのライヴを見るのは久しぶりのこと。
憧れのライヴハウスの一つだと言っていたNEPOでの堂々とした演奏は本当に素晴らしかった。配信だと音質があまり良くなかったけれど、たもつくんのギターサウンドはいよいよ息を呑むほどに美しい音色になっていることは分かった。彼は何もないところから新しい音の世界を作り出す、高い創造力を持っている。そして音楽を心から愛している。もしもNEPOで実際にライヴを見ていたら感無量で思わず泣いちゃったかも。

10月13日
いつも立ち寄るコンビニのセルフレジ横に手書きの貼り紙が貼られていた。セルフレジで精算すると見せかけて途中でキャンセル操作をし、そのまま代金を払わずに商品を持ち去ってしまう人が多々いるそうだ。悪いことを考える奴はどんな状況下でもいるのだな。

昼間流れてくるラジオは未だに面白く無いけれど、たまにハガキを読むコーナーのBGMが「ブルー・モンク」のアコギによるカヴァー版だと気づいた。そこだけは好き。

10月14日
to Clementine、解散。paint a rainbow名義だった頃から大好きなバンドだったのでとても残念。
けれど、たもつくんの音楽人生はまだ始まったばかり。世界中で最もジャズマスターを美しく奏でる彼がこれから新しい仲間とどんな音楽を鳴らすのか、今から楽しみだ。
この知らせを受けてdis-covered Vol.5のリベンジ公演は開催しないことに決めた。再開出来る時が来たらまた新しい形でイチから始める。その時には改めて、たもつくんの新しいバンドにも声をかけられたら良いなと考えている。先のことはまだ分からないけれど。

10月15日
四谷天窓グループが経営するライヴハウス3店舗が閉店することになったと知る。
天窓はある時期毎年のように行われていた河野智行さんのワンマンライヴの印象が強い。自分が最後に行ったのは2015年の10月。
ふと2016年秋に気持ちが戻っていく。
翌年のdis-covered Vol.2についての構想と同時に自分がすべきことはdis-coveredのホームとなるライヴハウスを見つけることだった。西山小雨さんとともにVol.2の草稿を作り始めた際、ホームとなるようなキャパのライヴハウスはないものかと二人でいくつか候補を出し合った。結果、候補に上がったのが「四谷天窓」「お茶の水KAKADO」「吉祥寺曼荼羅」の3つ。結果、しばらくの間吉祥寺曼荼羅で開催させていただくことになった。だから"もし天窓がdis-coveredのホームになっていたら…"と改めて考えてみる。

木曜日のお楽しみ、今週のカタカナ配信で一番印象的だったのはタイシンくんがトイレットペーパーを支える棒を失くしたという話だった。自分も以前住んでいた家のトイレが同じような着脱式のタイプだったのでなんとなく想像はついたけれど…あれを失くすか。でも何だか彼らしい話だなあと思う。あとセイヤさんの話を聞いていたら無性にカントリーマアムが食べたくなってしまった。
後半、4人による白熱のボブジテン大会を見ながら更けていく秋の夜。ボブジテンって面白いな。今回でカタカナ配信は今回で25回を迎えた。

10月16日
コンピュータシステムに振り回されながら過ぎていく慌ただしい金曜日。待ちぼうけの間に日は暮れてしまっていた。もうすぐ冬だ。
トーキング・ヘッズ「リメイン・イン・ライト」を聴く。

10月17日
冷たい雨が降る朝。
キャノンボール・アダレイ&ビル・エヴァンス「ノウ・ホワット・アイ・ミーン?」を聴く。まるでオアシスの曲名のようなタイトル。しかし中身は極上のモダンジャズが満載。
「ワルツ・フォー・デビィ」の再演に始まり、キャノンボール・アダレイとビル・エヴァンスの掛け合いと互いのソロが最高。さらに二人を支えるリズム隊の軽快で安定感たっぷりのグルーヴも聴きどころ。あまりにも有名な「サムシング・エルス」も名盤だけど、自分は断然こちらが好きだ。ただ「犬神家の一族」みたいなジャケが謎過ぎる。

温かい鴨だしつゆに三つ葉を浮かべただけの蕎麦を食べて、少し昼寝をする。昨夜は寝るタイミングを逃して明け方近くまで眠れなかった。
ハービー・ハンコック V.S.O.P.「ライヴ・アンダー・ザ・スカイ」を聴く。1979年7月、当時田園調布にあった"田園スタジアム"での野外ライヴ録音。
初日は豪雨の中でのライヴ。まず観客のリアクションがジャズコンサートとは思えないくらいに熱い。まるで夏フェスのよう。そして何より演奏が凄い。ハービー・ハンコック、ロン・カーター、ウェイン・ショーター、トニー・ウィリアムズというマイルス学校の卒業生たちとフレディ・ヒューバートが各々の出せる限りの演奏力をぶつけながらハイテンションでインタープレイの応酬を繰り広げる。
海老沢泰久「ただ栄光のために」を読む。

10月18日
もう7ヶ月もライヴハウスへ行っていない。
ひとまず年内いっぱいはライヴハウスへ行くのを自粛するので、コロナがなければ絶対行っていたイベントの告知をtwitterで見かけると少し寂しい気持ちになる。年末も見えかけているのに未だ不完全燃焼な日々になかなか慣れない。
"現実に慣れること"が今の自分に一番必要なものだなんて、ちょっと情けないけれど。まあ仕方ないか。

朝から暖かな日。「1984年」を読むつもりでいたけれど、なんとなくもう少し軽めの本が読みたくなり散歩がてらいつもとは別の古本屋へ行く。金木犀が終わり冬になる直前の季節、つまり今の時期が好きだ。
昼、何年振りかにマクドナルドのチーズバーガーを食べる。
ブルー・ミッチェル「ブルーズ・ムード」を聴く。当たり前だけど、トランペットひとつとっても演奏者によって音色は変わる。マイルスはどこか影のある音色、逆にブルー・ミッチェルは聴き手の心に鮮やかな景色を広げてみせる音色だなと自分は思う。誰かに恋をした時の微かな感情のざわめきをトランペットで見事に表現した「ホエン・アイ・フォーリン・ラヴ」が素晴らしい。ジャケットもカッコいい。

景山民夫「極楽TV」を読む。今だったら絶対に発売出来なかったであろう内容の本。但し、間違ったことは一切書かれていない。読み終わったあとの爽快感が心地良かった。
売れっ子放送作家としてこんなにもテレビのことを考えていたのに、後年は宗教の影響もあって仕事仲間ともテレビ自体とも距離を取るようになってしまったというのが何とも残念だ。

「テレビとは自分の日常には過去現在未来に於いてまずもって直接関係ないであろうことを、あたかも関係あることの如く誤解、あるいは疑似体験させてしまう可能性を秘めたメディアであるということです。ありえないことをありそうだと勘違いさせてしまう、そういう魔力がテレビには有るのだ」。

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