《シェフは魚の釣り方を知らない⁉️》【統制環境とキャリア17】
『でもさ、リスクなんて、どこにもでもあるから。外に出たら、いつ車が向かってくるかも、分からないし。
家の中だって、滑って転べば、怪我するし』
「まぁ、そうですが。
確率の問題です」
『でもさ、オレが倒れる確率なんて、分かんなくない?
そりゃ、いつかさ、年齢には勝てなくなるかも、だけど、それも科学の進歩で変わってきてるし』
「否定はしません。
しかし、、、あぁ、そうでした。思い出しました。
ずっと聞こうとしてたんです。
健康診断、お受けになってます?」
『、、、』
「何ですか?
社長、やっぱり受けてないんですか?
これだから、困るんですよ。
ちゃんと健康診断、受けて、把握してないと」
『、、、オレ、実は、
人間ドックが大好きなんだよ。言ってなかったっけ?
言ってないか。
いや、隠してたわけじゃないんだけど、年に2回は受けてるよ』
「年に二回?」
『そう、半日ドックてのがあって、最近は早いんだよ。胃カメラ飲んでも、2時間ぐらいで全部、終わるから、ちょっとしたアクティビティみたいな感じで』
「経費精算、してませんよね?」
『してないよ。自腹だよ』
「自腹?
聞いたコトないですけどね、健康診断、人間ドックでもイイですけど、経費精算しない社長がいるなんて」
『別に誰も困らないでしょ。経費で落とした方が、何かイイコトあるの?』
「税金は少なくなります。理論的には」
『税金はさ、ほら、ね。上手くやってくれてるじゃないですか、先生が』
「先生と呼ばれる筋合いは、ありません。それが私の仕事です」
『そうか、言ってなかったんだな。
まだまだ知らないオレがいるでしょ?』
「知らないコトばかりですよ。食事も殆ど一緒にしたコトないですからね」
『苦手なんだよ、誰かと食べるの』
「それは知ってます。会食も嫌なんでしょ」
『前はさ、、、
前って言っても随分と昔だけど、美味いもん食わせてくれるヒトに、ホイホイ付いて行ってたけど』
「佐久間様は、そんな社長が可愛かったんでしょうね。今じゃ、電話にも出ない」
『そうだねぇ〜。
あの親父のくだらないダジャレを聞き流しながら、肉とか魚とか、色んなもん、食わせてもらったよ』
「その頃に、戻りたくはない、と?」
『まぁね。これでも感謝はしてるんだよ、佐久間さんには。
ほんとうだよ。でもさ、何だろ、あの頃とは、やっぱり関係性も、立場も違ってきたし』
「そうですね。
私がココに来てからも、ドンドン変わってきましたしね」
『そりゃ、先生が色々、上手くやってくれてるから』
「私は数字の人間ですから。特に税のコトだけです。それしか、分かりません。勘違いされるコトは沢山、ありましたし、世間的にはやはり、経営のコトとか、税理士に相談するヒトもいまだに多いですね」
『経営のコトを税理士に聞くなんて、シェフに魚の釣り方を聞くようなモノだからね、って俺が偉そうに言えないけど』
「そうですよ。最初にお会いした時、税理士の私に経営を教えてくれ、って押しかけてきたのは、社長ですからね」