【noteで学ぶ腸内細菌学69番外篇:最大致死率50%「カルバペネム耐性腸内細菌」】
こんにちは(o・ω・o)カエルです。
今回は腸内細菌番外編。
珍しいけど誰しも無関係ではない細菌の病気について。
■カルバペネム耐性腸内細菌
(Carbapenem-resistant enterobacteriaceae, CRE)
と呼ばれる細菌種がおりまして、万が一感染症を引き起こすと最大致死率50%というかなり危険な細菌です。
なぜそんなに致死率が高いのかというと、
抗生物質が効かない
という所がポイントとなっています。
最近では米国で70代女性が感染し亡くなっています。
女性は2021年9月にネバダ州の病院で死亡。
米疾病予防管理センター(CDC)が1月13日に報告。
細菌の感染経路は過去に女性が治療を受けたインドの病院ではないかと疑われているとのこと。
インドではこの細菌感染が広がりつつあることが数年前から指摘されているそう。
□カルバペネム耐性腸内細菌
実は私たちも既に保有している可能性が。
■カルバペネム耐性腸内細菌 (CRE)
カルバペネム系抗生物質やβ-ラクタム系抗生物質を分解する酵素のカルバペネマーゼを産生する腸内細菌科の細菌の総称。
大腸菌や肺炎桿菌など多くの菌が該当する
■通常は常在菌として存在している腸内細菌科の細菌であり健康な人の場合、CREを保有していても何の症状も無く問題を起こさない
■感染症発症ケース
・外科手術後の患者
・抗生物質を長期間使用している患者
・免疫力が低下している患者
上記患者が感染症を起こした時、抗生物質が効かず敗血症を起こし死亡する可能性が指摘されている
■細菌同士の接合等により他の細菌にも薬剤耐性機構が伝達される
Wikipediaより引用
人の常在菌として、誰しも保有している可能性はあります。
が、発症する可能性は非常に稀。
論文によると、
・米国では毎年9300人がCREに感染し、600人が死亡していると推定
・日本の国立感染症研究所の発表では、2015年のCRE感染の報告件数は1699件、そのうち59人の患者が死亡したと報告
国内でも死亡例が確認されており、全くの無関係とは言えないものではあります。
□危険性と発症(感染)リスク
・CREは米国で現在利用可能な抗生物質26種類すべてに耐性を持つ細菌
・CREが膀胱や血液などに到達した場合、感染症を引き起こす可能性がある。
血流感染が起きると最大で患者の50%が命を落とすといわれている
・米国では国内の医療機関(病院など)において感染が確認されている。
疾病予防管理センター (CDC) は院内感染防止策として「手洗いの励行」「カテーテルや人工呼吸器など医療器具の取扱いの注意」「感染患者の隔離」などを呼びかけている
現在病院で使用されている抗生物質に対して耐性を持っていることが大きな問題となっています。
さらに「抗生物質への耐性情報」は細菌から細菌へと伝播することも解っているため、感染症を引き起こした場合、症状が悪化するケースが多いことが致死率を上げる要因の1つです。
■CREの3つのグループ
・IMP型、VIM型、NDM型など、メタロ-β-ラクタマーゼ (MBL) グループ
⇒日本も含め世界中で発見。
日本国内分離株ではIMP型が多い
・KPC (Klebsiella pneumoniae Carbapenemase) 型
⇒主に米国や欧州。
1996年に米国でカルバペネムに耐性を示す肺炎桿菌 (Klebsiella pneumoniae) から発見されたβ-ラクタマーゼ (β-Lactamase)。カルバペネムを含むすべてのβラクタム系抗菌薬に耐性を示す
・OXA-48型などの新型カルバペネマーゼ
⇒主に欧州。
カルバペネマーゼはカルバペネム系抗菌薬、ペニシリン、セフェム系抗菌薬にも耐性を示すため、基本的にβ-ラクタム系抗生物質ほとんど全てに耐性を示す。
さらに、β-ラクタム系抗菌薬以外の抗菌薬に対する耐性遺伝子を同時に保有している割合が高く、ニューキノロン系抗菌薬やアミノグリコシド系抗菌薬などにも耐性を示す場合も多い。
専門的な用語や薬品面、成分のことは一旦置いておいて、現在使用されている抗生物質、薬品への耐性が増え続けている(進化している)という点が危険度を増している理由です。
□カルバペネム耐性腸内細菌への対策
・カルバペネム系抗菌薬であるメロペネムのMIC 8μg/mL 未満の菌株に対しては、カルバペネム系抗菌薬の高用量投与の有効性が示唆されている
・疾病予防管理センター (CDC)の報告によると、CREの分離株を使ったテストでホスホマイシンという抗生物質が細菌に対して有効だった可能性があることがわかった。
しかしホスホマイシンは膀胱炎の治療用に経口薬としてのみ認可されており、感染症に対する治療には許可されていない
致死率50%ですから、快復している人もいますし対処方法も存在しています。
しかし科学が日進月歩しているのと同様に細菌も進化しているため、いたちごっこの状況は変わらないのかもしれません。
てことで、今回はカルバペネム耐性腸内細菌 (CRE) について紹介しました。
初めて目にする人も多いと思います。
ほぼ使うことがない情報だとも思いますが、関心を持っていただけたら幸いです〜(o・ω・o)ノシ