BtoB企業向け『強いブランドのつくり方』⑨〜ブランド・プロモーションを始める3つのポイント
■デザインは経営の武器になる。
社内に「自信」を与え、社外に「共感」を生む、デザイン経営。
あらゆる業界で技術の標準化が進み、機能面での差別化が難しくなる中、BtoB企業においても「ブランド」が重要ファクターとなりました。
当シリーズでは、どのようにして「強いブランド」を作り上げていくか、主に視覚的デザイン、クリエイティブの側面から解説していきます。経営者やマネージャーの方にとって「デザイン」の視点が広がり、ビジネスの成長に向けて気づきをご提供できれば幸いです。
■ターゲットを明確に理解し、的確なメッセージングを行う
さて、これまでBtoBブランディングにおいて欠かせないブランド戦略の立て方とブランドを表現していく上で必要になる戦術について見てきました。
今回は、実際にターゲットに向けて自社ブランドの強みや特徴、他社との優位性を伝えていく上で重要になる3つのポイントを見ていきたいと思います。
接点としては、広告、ウェブサイト、メールマーケティング、セミナー開催、商談会への出展など様々ありますが、どのシーンにおいても共有するプロセスとなります。
■1.目標設定
プロモーションを行う際は、どのような施策においても目標設定が重要になります。一般的には「KGI」「KSF」「KPI」といった指標が用いられます。
・KGI(Key Goal Indicator)
最終的に達成したいビジネス目標
・KSF(Key Success Factor)
目標を達成する上で最も重要となる要因
・KPI(Key Performance Indicator)
目標の達成度を図るための定量的な指標
例えばKGIでは「ブランド認知の向上」や「市場シェアの拡大」など、比較的中長期的な目標が考えられます。
次に、KGIを「ブランド認知の向上」とした場合、様々な手法が考えられますが、リアル接点での活動や広告などの露出はすでにやりつくした、という状況であれば「デジタルマーケティングの効果的な活用」といったKSFはいかがでしょう。
そうしてKGI、KSFが設定されると、デジタルマーケティングを通じて獲得した「リードの数」、ソーシャルメディアでの情報発信による「エンゲージメント率」など、より具体的な目標を設定することができ、具体的な施策も決めやすくなります。
こうして目標設定を明確にし、組織のベクトルを合わせ、中長期的目標と、そこに向かうための短期的目標を共有することで、ブランディングの推進力を高めることが出来ます。
ちなみに、KSFに近い概念で、ネットサービスやプロダクトを成長させる指標としてNSM(North Star Metric)という指標もあります。サービスブランドの場合は、ターゲット市場のNSMの例を参考にするのも良いでしょう。
■2.顧客調査
KPIで設定した目標の達成を実現する上で、顧客理解は欠かせません。
顧客調査を通して、ターゲット市場や顧客の特徴を理解し、プロモーションの対象を明確にすることができます。顧客がどのようなニーズや期待を持っているのかを把握することで、次のプロセスである「メッセージ開発」「チャンネル選定」の精度がより高まります。
定量調査では、顧客の情報収集の傾向やトレンド、実際の競合との差別化ポイントなどを客観的な数値で把握することができ、課題の重要度や訴求すべき内容の優先度を決める手がかりになります。
一方、定性調査では、より深く顧客について理解を得ることができます。仮説として設定していた自社の強みや、競合他社との差別化優位性を確認する。新サービスであればその需要度を図ることも出来ます。
顧客の自由意見やインタビューを通して、新たな発見、プロモーションのアイデアに繋がることも少なくありません。
■3.メッセージ開発
さて、目標が定まり、顧客イメージが固まれば、プロモーションにおけるキーコンセプト、メッセージ開発を行います。ブランド・プロモーションにおいては最も重要なプロセスになります。
ここでは、そのメッセージングにおいてのいくつかの切り口を挙げたいと思います。
・顧客の立場に理解を示す
どのような事業も、顧客に何かしらの便益を与えることを目的にしています。しかしメッセージングにおいて、つい自社の特徴を述べたり、他社との差別性を訴えたり、“プロダクトアウト”なメッセージになりがちです。
まず、そのブランドがどういった顧客の課題を解決できるのか、ターゲット市場の課題や顧客の置かれている状況に理解を示すことでコミュニケーション力を高めることができます。
・顧客からの共感を得る
BtoB事業の場合、顧客の先にもまた顧客がいます。つまり、顧客には主張したいポリシーや、最近では事業のパーパスや社会的意義があり、それにシンクロすることで、より“届きやすい”メッセージングを行うことができます。
・情緒的に表現し、感情に訴える
無味乾燥のメッセージは顧客の心に引っかからず素通りされてしまいます。特に技術的な特徴や説明をする際、どうしても機能的なアプローチになってしまいます。その機能の先のベネフィットや思い、意義など、できるだけ情緒的に表現しましょう。
・説得力と信頼性を持たせる
一方で、数字により説得力を増す、実績により信頼性を高めるメッセージングも有効です。ただし注意したいのが、そこに顧客にとって意味があるかということです。ターゲット市場においてインパクトのある数字・実績でなければ、顧客にとっても意味を持たないでしょう。
数字や実績をメインにメッセージングする場合は、驚きやインパクトがなければ、逆に無味乾燥なスペックの提示で終わってしまうので注意しましょう。
■実行とモニタリング
1〜3のプロセスをしっかり行うことでブランド・プロモーションの効果を最大化を図ることができます。実行に当たっては顧客調査で明らかになった有効な顧客接点を中心にメディアプラン、コミュニケーション設計を行います。
また、先にご説明した定量調査を実施後改めて行うことで、プロモーション効果を図ることが出来ます。
その結果とKPIの達成率を元に、プロモーション課題を明確にし、より効果的なメディアプラン、メッセージのブラッシュアップを行っていきます。
ぜひ、こうしたプロセスを参考に、ブランド・プロモーションにお役立てていただければ幸いです。
BtoB企業向け『強いブランドのつくり方』⑨
〜ブランド・プロモーションを始める3つのポイント
(TCD Corporationサイト)