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小説やエッセイの感想を書くのが苦手な人に伝えたい。自分らしい読書感想文の書き方

割引あり

読書感想文が苦手な人が、自分らしい文章を書けるように。
そんな想いで、この記事を書くことにしました。

初めまして。
ライターのばやしと言います。

子どものころから小説が好きで、コツコツと読み終わった本の感想を書きためていたら、いつの間にか200冊以上の読書感想文を書いていました。

また、自身のnoteでも「自分の好きな本が多くの人に届くきっかけになれば」という思いから、さまざまな切り口で本の「オススメ記事」を書いています。

ただ、最近は「読書離れ」が世の中でささやかれるようになり、本を読んだ感想を書くのが苦手という人の声もよく耳にするようになりました。

理由はさまざまで……

・読んだ本の内容をすぐに忘れてしまう
・本を読み終わったときの感情をうまく言語化できない
・周りの人と比べてしまって読書感想文を書くのをやめてしまった

などなど。

本を読むのは好きだけど、読書感想文は書かないという人もいます。

特に小説やエッセイは、ビジネス書や自己啓発本と比べると「どのように感想をまとめればいいのか?」「どこまで内容に触れていいのか?」と悩んでしまう人が多いようです。

ただ、小説やエッセイの読書感想文を書くことには、ただ作品の感想を残しておくこと以外にも、さまざまなメリットがあると思っています。

たとえば、自分自身で文章を書くとき。

noteを利用しているほとんどの人は、頭のなかで描いていた文章を何とかカタチにしようと、言葉の置き場所を考えながら、何度も試行錯誤を繰りかえした経験があるはずです。

もちろん、小説やエッセイを読まなくても、日常生活に差しさわりはないし、ちゃんと文章を書くことはできます。

それでも小説には、SNSや日常会話では決して出会うことのない表現や言葉があふれていて、「忘れられない一文」に出会える場所だと思っています。

そして、印象に残った言葉や心に響いた一文は、気づかないうちに自分の書く文章のスキマに入り込んで、少しづつ「自分の言葉」に変わっていくことがあります。

「あのとき良いな」と思った言葉や表現が、頭のどこかしらの引き出しにしまわれて、思いもしないタイミングで顔を出して。

それは辞書で索引した単語でも、検索エンジンに入力して表示された言葉でもなく、物語の情景描写や、登場人物の言動に紐づいている「生きた言葉」に他なりません。

本に登場した言葉たちが、自然と書く文章に紛れ込んでいく感覚を味わえることも、自分が読書感想文を書き留めている理由のひとつです。

他にも、読書感想文は作品の世界を読者に届けると同時に、自身の文章を見つけてもらうきっかけになることがあります。

そもそも自分のnoteが多くの人に読んでもらえるようになったのは、最初に挙げた「小説の一行目で好きになれる」という記事を書いてからでした。

最初は自分の好きな小説の一行目を、ただただ紹介したくて書いたものなので、こんなに多くの人に届くとは思ってもいません。

でも、読書感想文を書いたことで、その本を好きな人や興味を持った人が自分のnoteを見つけてくれて、他の記事を読むきっかけを作ってくれました。

読書感想文は、素直に感情を吐きだして、やり場のない想いを言葉にできる場所であり、ありのままに綴った文章をいろんな人と共有できる場所でもあるのです。


このnote記事では、自分が読書感想文を書くときに自然と意識しているポイントを、できるだけ解像度を高めて言葉にしてみました。

正直なところ、ここまで読んでくれた人が「何となく読書感想文を書いてみようかな…」と思ってくれるだけで、とっても嬉しいです。

そして、そんなふうに思いたった人に向けて、おせっかいにも一つだけアドバイスを送らせてください。

最初は上手い文章じゃなくていいし
良い感想文だと思えなくてもいいです。

Xの140文字に収まる文量でもいいし
たったひとことだけでもいいです。

ただ、本を読みおわったそのとき、ぐちゃぐちゃにあふれそうな感情を、そのまま言葉にしてみてください。

それはきっと「そのときの自分にしか書けない感想文」になっています。

文章が上手い人だろうと、著しい進化を遂げた生成AIだろうと書けないし、過去の自分や、未来の自分にだってきっと書けません。

だから、気軽な気持ちで、読後感を言葉にしてみてほしい。
今、この世でたった1人にしか書けない読書感想文を書いてみてほしい。

このnoteに書いた文章で、その手助けができたなら。
それは、何よりも嬉しいことだなと思います。


まずは、記事を購入していただき本当にありがとうございました。

この文章が「自分らしい読書感想文を書いてみたい…!」と思ってくれた、あなたのお役に立てることを願っています。

以下の文章では、自分が読書感想文を書くときに自然と意識していたポイントを、いくつかの項目に分けて解説しています。

一応、上から順番に読んでもらえるように書いてますが、気になるタイトルから読んでもらっても構いません。好きなように使ってください!


◇複雑な感情ほど「自分らしい」文章につながる

個人的に、読書感想文を書くときに大切だと思っているのは、その本を読みおわって「どんな感情があふれているのか」を自分の心の中から探すことです。

もちろん、感情はしっかり固まらないままでも大丈夫。ぐらぐらに揺れて不安定なままでも、素直に言葉にしてみてください。

実際、この世界には嬉しいようで悲しかったり、悲しみのなかに怒りがあったり、怒っているのにホッとしてる部分があったり、喜びのなかに痛みがあったりと、一筋縄ではいかない感情がたくさん存在しています。

そして、むしろ、そんな「ぐちゃぐちゃな感情」ほど、その人らしさが出るんじゃないかとも思います。

ただ、それでもやっぱり複雑なものは複雑で、どこから紐解ひもといていけばいいのかわからない人もいるでしょう。(ぼくにも心当たりしかありません)

そんなときは、たくさん浮かんできた感情や、物語を読んで感じた想いを、いったん、一文に閉じこめてみてください。

文法的に間違っていても大丈夫です。
矛盾していても構いません。

なぜかというと、意味が通っていなくても一文にしてみると、「どの感情」と「どの感情」が複雑に絡まっているかが、一目でわかるようになるからです。

(例)ストーリーは二転三転して楽しかったけれど、結末にはいきどおりを感じたし、でも、あの登場人物の心情を思うと胸が痛んで悲しかったな……。

文章のなかに生まれた矛盾は、まだ心のなかで折り合いのついていない感情であり、うまく言葉にできない要因になっている「ねじれ」の部分です。

でも、その「ねじれ」はきっと、言葉にさえできれば、自分らしい読書感想文を書くにあたって欠かせないパーツになります。

だからこそ、複雑な感情は全てをほどいてしまうより、どっちつかずのまま一文に閉じ込めて、文章に生まれた「ねじれ」を見つけてみてください。

その「ねじれ」がいちばん自分にとって大事な感情で、何よりも譲れない一文を書くヒントになるはずです。

◇「刺さった一行」から文章を広げていく

読書感想文を書くときに、ストーリーや感情がまとまらず、何を主題にして書けばいいのかわからなくなってしまうときがあると思います。

そんなときは、一冊の本のなかで「最も心に刺さった一行」を抜き出してみてください。

何百文字とある言葉の連なりから見つけた一行。それぞれが印象に残った登場人物やシーンが同じでも、一行まで被ることはそうそうないと思います。

印象に残ったセリフでも、見たら忘れられない美しい文章でも、さりげない情景描写でも良いです。

他の人から見たら、なんてことのない一行の文章。

それでも、たった一行だけにフォーカスしてみると、読んでるときには気づかなかった感情を見つけることができるかもしれません。

さらに、年齢や立場、本を手にとった経緯、生まれ育った背景も違う読者によって選ばれた一行には、きっとそれぞれ、異なる想いを抱いているはずです。

「なぜ、この一行を選んだんだろう…」
「どの言葉の連なりに惹かれたんだろう…」
「なんでこのセリフが胸に響いたんだろう…」

何の気なしに選んだ一行に、今まで本を読むなかで積み重なっていた想いをぶつけてみると、思いもよらない響きが生まれるときがあります。

そして、各々の個性が詰まった一行を、誰でもない、たった一人の読者(あなた)が深く掘りさげていくことで、きっと他の誰にも書けない、自分なりの感想文を書くことができるはずです。

◇あらすじよりも「瞬間の感情」を優先する

読書感想文を書くときは、作品のストーリーや要点をわかりやすく解説しようとして、事細かくあらすじを文章にしてしまいがちです。

ただ、個人的にあらすじはそこまで綿密に考える必要はなくて、大事なのは本を読みすすめるなかで出会った「瞬間の感情」を忘れずにいることだと思っています。

実際のところ、あらすじは作品に一つしかありませんが「瞬間の感情」は読んだ人の数だけ存在します。

「この登場人物の言葉は、なぜだか嫌な気持ちになるな…」
「この一文を読んだとき、一瞬、心がざわっとしたな…」
「この場面の情景描写を読んだとき、ふと懐かしい気持ちになったな…」

そんな「瞬間の感情」は、きっとそれぞれの思い出や経験とリンクして湧き出てくる想いです。

どこかで誰かと交わした会話が、あの場所で過ごした思い出が、物語をかすめていくほど「瞬間の感情」には強い想いが宿ります。

ふとしたときに感じた儚い感情だとしても、もしかしたら心の底に漂ったまま、いつまでもモヤモヤと残っていることもあるかもしれません。

だからこそ、そんな「瞬間の感情」はメモに書きとめておくと、あとで自分らしい読書感想文を書くにあたって、一際、個性を光らせるアイテムになるはずです。

ちなみに、読書感想文で「あらすじをどこまで書いていいのか?」についても、自分なりに思うところを書いてみます。

人によって線引きは違うかと思いますが、自分は「文庫本の裏に記載されているあらすじ」「出版社のPR文章」「帯コメントに書かれている情報」などは文章に盛りこんでもいいと考えています。

よく「どんでん返し」や「衝撃の結末」といった言葉自体がネタバレなんじゃないかと言われたりますが、そもそも帯コメントに堂々と書かれてたりもするので……。それくらいは、許容範囲じゃないかなと思っています。

それでも、読み手が「本を読んで、結末を知りたい」興味を削がれないような、配慮のある文章を意識することは忘れないでいたいですね。

【例】「刺さった一文」と「瞬間の感情」を探してみた

昔、自分が書いた読書感想文で扱った作品のなかに、桜庭一樹さん『少女七竈と七人の可哀想な大人』という小説があります。

この作品は、旭川の街で生まれ育った少女・川村七竈ななかまどが、美しく生まれてしまったがゆえに大人たちに振り回される人生の中で、自らの生きる道を見つけようとするお話です。

この物語を読んでいるとき、自分はずっと主人公の少女が抱えている不安の正体とリンクした、なんとも言えない想いを抱えていました。

ずっとうまく言葉にできずに読みすすめていると、彼女の心を描写する文章のなかで印象深い一文を目にします。

それが「柔らかい行き止まり」という言葉でした。

その言葉を見たとき、ずっと物語を読んでいる最中に感じていたモヤモヤとした想いに、ふと名前がついた気がしました。

「柔らかい行き止まり」は、抗う気力が抜け落ちていくような、言いようのない無力感を抱かせるような「何か」を、芯から射抜いた言葉だと感じたのです。

そして、自分はそんな「何か」が、時とともに擦り減っていく気がするのが怖かったんだと気づきました。

まさに「柔らかい行き止まり」を前にした時に思い浮かぶ、諦めや悲しみに抵抗する心と似ている「何か」は、しだいに登場人物の心情や、物語を読みおえたときに感じた想いに波及していきます。

それでも、しんしんと雪が降る街で、一際赤く、健気に揺れる七竈の実のように、何者にもなびかず、凛として現実と向き合う少女は、対比される大人たちよりずっと強く生きていた。

小説のなかで「柔らかい行き止まり」という言葉があったけれど、抗う気力が抜け落ちていくような、言いようのない無力感を抱かせるような例えで、とても印象的な表現だった。
 
この物語を読んでいると、時とともに無くなっていく「何か」が怖くなる。もし「柔らかい行き止まり」が目の前に現れたなら、人は何を思うんだろうか。

『少女七竈と七人の可愛そうな大人/桜庭一樹』感想ブログ 引用

思いがけずに「刺さった一文」「瞬間の感情」に名前をつけてくれたようで、自分が書いてきた読書感想文のなかでも、特に記憶に残る大好きな文章になりました。

◇その本を「読んでみたい」と思う、道標のような文章を目指して

読書感想文は、自身の感想を残すものであると同時に、文章を読んだ人が、その本に興味を持ってくれる「道標みちしるべ」のような存在だと思っています。

だからこそ、読書感想文では、ストーリーをなぞるのではなく、その本を読んでみたくなるような「興味を惹くポイント」をつくることが大切です。

ただ、人によってはその興味を惹くポイントがストーリーのネタバレであったり、オチを匂わせることだったりすることがあります。残念なことですが。

個人的には、物語から得た「真実」や「衝撃」は、あくまで作品を読んでもたらされるものであってほしいと思っています。

理由はシンプルで、原作者へのリスペクトを忘れたくないからです。

自由な感想とは言うものの、感想文を読んだことで、その本を読んだときに初めて出会える「感情」を奪ってしまう場面を想像すると、とてもやるせない気持ちになります。

だから、どれだけ自分が書いた読書感想文がすばらしい文章だとしても、それを読んで「もう原作は読まなくていいや」と読者が満足してしまっては、元も子もありません。

読書感想文を誰かに読んでもらうと想定して書くとき、「その本を読んでみたい」と実物を手にとってもらえるかどうかは、ずっと大事にしたいことだと胸に刻んでいます。

ただ、読書感想文を書くにいたった理由に関しては、自由で正直なもので構いません。

おもしろかった。感動した。衝撃的なラストだった。理解が難しかった。ほっこりした気持ちになった。ワクワクした。涙が出るほど笑った。この歳で読めてよかった。高校生のときに読みたかった。読み終わったあといろんな感情が渦巻いた。このキャラは憎めなかった。賛否両論ありそうだけど、自分には刺さった。最初は意味がわからなかったけど、読みすすめると楽しめるようになった。

だから、読んでみてほしい。

そんなふうに矢印を持っていくと、書く文章には自然と作品に対する想いが溢れて、読者の「興味を惹くポイント」が生まれるはずです。

イメージとしては「書店の手書きPOP」が近いかもしれません。

書店はオープンな場所なので、いろんな人が出入りします。読書家の人から、久しぶりに書店を訪れた人、たまたま立ち寄っただけの人。

だからこそ、書店の手書きPOPではあらすじをなぞりながらも、決して内容には踏みこみすぎません。あいまいな部分を残しながら、興味を持ってもらえるように印象的な言葉をちりばめています。

そして何よりも書店の手書きPOPには、書店員さんの想いが詰まっています。

なぜ、この本を推すのか。
なぜ、この本を読んでほしいのか。

作品への愛が手書きの文字から存分に伝わってくるからこそ、顔も知らない書店員さんがオススメする、書店に並んでいるその本を読んでみたいと思うのです。

読書感想文も同じで、まだ読んだことのない人、最近、読みおわったから共感を求めて感想を読みにきた人、昔に読んで懐かしいと思って記事をクリックした人、いろんな人がいろんな理由を携えて文章に触れます。

だからこそ、いろんな想いを抱えた人が気兼ねなく読めて、なおかつ「その本、読んでみたい!」「あの本、もう一度読んでみようかな…」と思える文章こそ、本への「道標」となる読書感想文だと思っています。

最後に

最後まで読んでいただきありがとうございました。

今の時代、生成AIによって、それなりの文章は誰でも書くことができるようになりました。

自分の知らない知識や文章表現を駆使して、何千字、何万字以上も言葉を連ねていくことが可能になったのです。

でも、だからこそ、読書感想文は「あなた」にしか書けない文章であってほしいと思っています。

要点をまとめたものでも、見栄えよく飾られた文章でもない。長くても短くても、文法的に間違っていようと構いません。

それでも、読んだときに湧きあがってきた想いを、必死に言語化して文章にすることは、きっとあなただけにしかできないことだから。

この文章が、見知らぬ誰かの文章と比べることのない、自分らしい読書感想文を書くヒントになることを願っています。

では、自由で楽しい読書ライフを!

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