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2024年10月のひとこと映画感想日記
傲慢と善良
ここのところ、相次いで著作が映像化されている辻村深月さん。来年には『この夏の星を見る』の実写映画化も控えている。
『傲慢と善良』は、映画化が発表されたとき、誰がキャスティングされるのだろうかと楽しみにしていた作品。
映画を鑑賞して、原作の大ファンだという藤ヶ谷太輔さんが演じた架と、読んでいたときのイメージにぴったりと重なった奈緒さんが演じた真実は、表に現れない内面の部分にまで、うんと手を伸ばしてくれていた。
本作品は「映画チャンネル」さまでもレビュー記事を書かせていただいたので、こちらもぜひ。
ドロステのはてで僕ら
以前、下北沢トリウッドで観た『リバー、流れないでよ』の雰囲気が好きだったので、同じヨーロッパ企画の『ドロステのはてで僕ら』も鑑賞することに。
今作もタイムループ作品かと思いきや、2階の自宅と1階のカフェを2分の時差でつなげるテレビの存在が騒動を巻き起こす、異色のSFコメディとなっている。
特に印象的だったのは、1階と2階を何度も行き来する登場人物たちを、とんでもない長回しで映し続けていたこと。撮影風景を想像すると、ストーリーも相まって頭がこんがらがりそうだなって。
ヨーロッパ企画のお馴染みのメンバーも多数出演しているので、『リバー、流れないでよ』の配役と比べながら観るのもおもしろかった。個人的に、石田豪太さんと諏訪雅さんのはた迷惑コンビが好き。
憐れみの3章
初めて観た、ヨルゴス・ランティモス監督作品。
3つの章でそれぞれキャストは変わらないのに、ストーリーと役柄が変わるという突飛な構成で、事前に情報を入れていなかったら、劇場で慌てふためくところだった。
個人的には2章目が好きだったけれど人によって違うだろうことも、好きな章が被ったとしても好きな理由が同じとは限らないことも、容易に想像できる作品。
鑑賞した人とあれやこれや感想を言い交わすのが、この作品の醍醐味なのかもしれない。
まる
アーティストとしては泣かず飛ばずの主人公・沢田。彼の描いたなんでもない「○」が、預かり知らぬ場所でうなぎのぼりに評価されていく。
映画を観ていると浮かんでくる、どんどん外堀だけが埋まっているような感覚。意図していないものにまで意味が名付けられ、思ってもいない深いところまでなされた解釈が美化されることへの違和感。
沢田だけは事態を訝しみながらも、特に生活の変化もなく過ごしていたのがさらに奇妙だった。
綾野剛さんが演じる売れない漫画家・横山は、そんな沢田と対極にいながらも、違和感を無きものにはせず、ただ世間の評価に流されていく大衆に抗う存在として描かれている。
特に居酒屋のワンカットが印象的。不安や憤りが濁ったまま宙に漂って、話せば話すほど言葉が散らばっていく。綾野剛さんの演技に感服。
八犬伝
滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』は、歴史の授業で覚えたきりの言葉だった。
しかし、山田風太郎の小説を原作とした『八犬伝』は、まさに『南総里見八犬伝』の心踊るファンタジー世界と、そんな壮大な物語を完成させるに至った馬琴の28年にわたる創作の苦悩が、絶妙なバランスで描かれている。
本作品も「映画チャンネル」さまでレビュー記事を書かせていただいたので、ぜひご覧いただければうれしいです。