紅茶とあなたの匂いが好きだから
今日、夜走っていると、どこからか花火の音が聞こえてきた。
どこを見渡しても大輪の花は見えないけれど、何となく花火の音だけがこだまする夜もそれなりに風流で。
ただ、音が響くなかを走っていると、最初は花火の音だと思っていたのに雷の音にもどこか似ている気がした。えらい違いだ。
それに、姿が見えないだけで、まったく別のものに錯覚してしまうのは、何だかこの世のことわりを表しているようで、ちょっと複雑な気持ちになった。
真実はわからないままだけど、できれば遠い場所で打ち上げられた花火であってほしい。
夏の思い出は、どこか音楽と紐づいている。
大学生のころは軽音サークルに所属していたこともあって、夏は合宿やらライブやらで音楽のことばかり考えていた。
ちなみに、ちゃんとライブに出て演奏するようになったのが、2回生の夏のころ。
仲の良い先輩と同期がバンドに誘ってくれたとき、コピーするとなって初めて聴いたのが「SIX LOUNGE」だった。
ギターボーカルの人が同い年にもかかわらず、とにかく艶やかでカッコいい歌声でびっくりしたのを覚えている。音楽もスリーピースの正統派ロック。
やる気いっぱいでSIX LOUNGEの曲を聴きあさるも、耳コピするのも初めてだったので、一曲弾きとおすにも膨大な時間がかかった。
何回も曲を聴いて、ベースの音をとって、暗譜して、メトロノームに合わせて弾く。地道な作業をただただ繰り返す。
そうやって必死に練習して、仲のいい先輩・同期といっしょに入るスタジオはとても楽しかった。
初スタだからと言い訳しながら、とりあえず最初は一曲通せるようになったら御の字と言い張る。
何とか曲をカタチにして、ライブではまずまずの演奏ができたように思う。ライブを観たサークルメンバーが褒めてくれるのも嬉しかった。
そんなライブで演奏したうちの一曲が『メリールー』。
男女の視点が入れかわりながら、戻らない時を思って日常を振り返っている歌詞が、唯一無二の歌声にのせて歌われる。
あのときより歳を重ねてから聴くと、よりたくさんの想いが音楽に溢れてくる気がした。
ちなみにSpotifyの音源は2022年に再録されたもので、YouTubeには8年前のミュージックビデオも残されている。このとき20歳だなんて信じられない。
コピーのために、曲を覚えるために、そしてただ好きだからという理由で、何度観たか思い出せないくらいリピートした楽曲。
ちなみに、タイトルに引用させてもらった歌詞は『メリールー』でいちばん好きなフレーズだった。
嫌でも思い出は、日常に紐づいているんだなって。