此処では誰も気付かない 独りになれる夜がある
今日は一本道をひたすらに走っていた。
一本道を進んでいくのは一長一短で、ちょっとした良いこともあれば、どうにもならない悪いこともある。
たとえば、一本道を走っていると、見えている視界があまり変わらない分、軒を連なるお店や建物に自然と目がいく。
ちょっと良さげな居酒屋さんを見つけたり、外装が気になる建物に目を奪われたりと、その道を一心不乱に走ったからこそ見えてくる景色がある。
そんな好奇心が傾く場所に、いつか訪れる日を夢見る道中は、束の間の疲れを忘れさせてくれる目新しさに溢れている。
ただ、実際のところ、気になるご飯屋さんが5つ見つかったのならば、そのうち家に帰ってからも覚えているのは半分以下なので、だいたいの店の名前は走ることに夢中で忘れてしまう。
その道をもう一度、走れば思い出せるので、ある意味、効率が良いと言えば効率が良いのかもしれないけれど。
ちなみに、いちばんのデメリットは、一本道を夢中になって5km走ったのならば、そのまま同じ5kmの道を引き返せなければならないということ。
そんな馬鹿なことが起きるのが、夜のランニングの恐ろしいところ。
夜に聴きたい音楽とは、言うなれば、ひとりで聴きたい音楽のことを指すのかもしれない。
そう思ってしまうほど、夜は寂しさを色濃く映しだしては、まわりの景色を真っ黒に埋めて、自分だけの世界に没入させてくれる。
mabutaの「HIGHWAY」は、走っているときに、たまたま流れてきた曲だった。そのとき、その瞬間に流れてきてくれてから、好きになれた曲だった。
〈約束を果たし会おうじゃないか〉と歌う歌詞は、お互いを信頼しているようでいて、どこか一方的な押しつけがましさを感じる言葉でもある。
でも、そんな関係でいれることが、とても特別で、かけがえのない時間なのかもしれない。
ハイウェイという言葉には、行き交う人々のたくさんの思い出が詰まっている気がして、おのずと曲も好きになってしまう。